不動産の相続について、このような悩みを抱えている方は多いはずです。
不動産を所有していた方が亡くなり相続が発生すると、固定資産税の支払いは誰がおこなうべきなのでしょうか。
誰に支払い義務があり、誰が負担するのか、未払い分があったらどうすればよいのか、本記事では相続における固定資産税についてわかりやすく解説します。
固定資産税については、相続財産のなかに不動産があるなら必ず対処しなければなりません。
固定資産税の扱いを把握し、適切に手続きができるようぜひ参考にしてください。
相続発生直後の固定資産税は、誰が払うべきなのでしょうか。
まずは支払義務者について知っておきましょう。
固定資産税の納税義務者は、その年の1月1日時点の所有者です。
そのため、相続が発生したとしても自宅や事務所の固定資産税を納税する義務は、被相続人にあります。
しかし、被相続人の支払い義務は、相続人に受け継がれるため注意が必要です。
たとえば、自宅を所有する父親が1月2日に亡くなったとしても、所有者は父親であり、納税義務者も父親です。
固定資産税の納付書は、1月1日時点の所有者に送付されます。
固定資産税を納税する義務が被相続人にあったとしても、亡くなっているため支払いは不可能です。
では、固定資産税の支払いは、誰がどのようにおこなうべきなのでしょうか。
以下で詳しく解説します。
所有者が亡くなった場合、被相続人の支払い義務は、相続人に受け継がれることになります。
しかし、遺産分割協議などで誰が相続するかが決まるまでは、遺産は相続人全員の共有財産となります。
つまり、固定資産税の支払いについても相続人全員に支払い義務が生じるのです。
このような状態を共同相続といい、共同相続をした複数の相続人を共同相続人といいます。
ただし、相続人が一人であれば共有財産とはならず、該当の相続人が支払い義務を負います。
相続することになった相続人が代表して支払うことも可能ですが、不公平が生じる場合は、法定相続分や遺産分割協議によって支払う割合を決めます。
法定相続分とは、相続人が二人以上いる場合の各人の相続割合のことで、民法によって定められています。
また、法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続する人です。
法定相続人以外も財産を受け継ぐことはできますが、遺言の定めが必要です。
法定相続人は、次のとおりです。
なお、法定相続人ごとの法定相続分については、以下の図表を参考にしてください。
代表相続人を決めたら、代表相続人が固定資産税納税通知書を受け取るために、市区町村の役所に申し出ます。
手続きが終われば、次年度からは納税通知書が代表相続人に届きます。
あくまでも代表相続人は、納税通知書を受け取るだけです。
固定資産税の支払いを全額負担しなければならないわけではありません。
支払いは、法定相続分や遺産分割協議で決まった割合を、ほかの相続人も含めて負担します。
ただし、実際に固定資産税の支払い手続きをおこなうのは代表相続人です。
なお、代表相続人は、多くの場合で複数の相続人を代表して納税や預貯金の払い戻し手続きを一任されますが、手続きごとに代表相続人を決めて役割を分担しても構いません。
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者が納税の義務を負っています。
そのため、代表相続人以外に所有者が決まったら、手続き後の1月1日以降は新たな所有者がおこなうことになり、代表相続人は支払いをおこなう必要はありません。
固定資産税は、一括で支払うこともできますが、分割払いで年4回の支払いとする方も多いです。
被相続人が固定資産税を未払いのまま亡くなってしまった場合、相続人が代わりに負担しなければなりません。
固定資産税の分割払いをしている場合、支払い月は市町村によって異なるため確認が必要です。
たとえば、6月・9月・12月・2月で分割払いを設定していた被相続人が10月に亡くなったら、12月・2月に支払うはずだった固定資産税が未納となります。
被相続人の未払い固定資産税は、法定相続人に支払い義務があり、原則として法定相続分で負担割合を決めます。
たとえば、固定資産の所有者である父親が亡くなったとしましょう。
未払い固定資産税が16万円だとして、法定相続人が妻・長男・長女の3名だとします。
このときのそれぞれの支払うべき固定資産税の額は、法定相続分に従い次のとおりとなります。
また、闘病生活によって6月分も未払いのままだったとすると、その分も未払い固定資産税となり延滞金を加えて支払わなければなりません。
延滞金の割合は年度ごとに定められるほか、自治体によっても異なる場合があるので、気をつけましょう。
2024年1月1日から2024年12月31日の東京都の場合、固定資産税の延滞税率は納期限の翌日から1ヵ月までの期間は2.4%、それ以後は8.7%としています。
ただし、未払いの固定資産税については、控除が適用される場合もあります。
詳しくは、本記事内「被相続人の未払い分の固定資産税は債務控除の対象になる」を参照してください。
固定資産税を支払うべき不動産の相続人が決まれば、その方が新しい所有者となり、納税義務者になります。
ただし、固定資産税は1月1日に確定するため、その時点での所有者が支払う必要があります。
新しい所有者の決定時期が1月1日よりもあとであれば、確定した年の納税義務は相続人全員にあります。
しかし、その場合でも、納税について別の合意をしていない限り、実際に支払うべきなのは、新しい所有者だといえるでしょう。
そのため、新しい所有者との話し合いなどによって、相続人から新しい所有者へ請求するようにしてください。
固定資産税の納付を年4回の分割払いにしていた場合、不動産の所有者であった被相続人が亡くなった時期によって相続人が負担する固定資産税の額は変わります。
6月・9月・12月・2月の分納であった場合について、以下で考えてみましょう。
被相続人が6月に亡くなったとすると、該当年の9月・12月・2月が未納になるはずです。
1月1日時点で新しい所有者が決まらなければ、次の年の6月・9月・12月・2月分についても、共有財産として相続人たちに受け継がれます。
1月1日までに新しい所有者が決まったとしても、該当年の6月・9月・12月・2月の未納分は共有財産として相続人たちに受け継がれ、翌年の6月から新しい所有者に納税義務が生じます。
ただし、今後不動産を引き継ぐことが確定していることを考慮すると、納税について別の合意をしていない限り、実際に支払うべきなのは新しい所有者だといえるでしょう。
その場合は、新しい所有者との話し合いや弁護士への依頼によって、相続人から新しい所有者へ請求できるようにしてください。
被相続人が1月に亡くなった場合、前年度分の2月分と該当年度の6月・9月・12月・2月が未納になるはずです。
それら全てが共有財産として相続人たちに受け継がれます。
新しい所有者が決まったら、新しい所有者には翌年の6月分から納税義務が発生します。
この場合も、新しい所有者との話し合いや弁護士への依頼によって、相続人から新しい所有者へ請求できるようにすることもできるでしょう。
相続と固定資産税については、申告や登記をしなければならないなど、気をつけるべきことがあります。
以下では、注意点を見ておきましょう。
固定資産税が発生する不動産は、所有者が亡くなると相続発生から3ヵ月以内に現所有者が申告をしなければなりません。
これは、2020年10月1日の地方税法の改正によって義務化されました。
現所有者とは、相続人全員または代表相続人が決まった場合は代表相続人を指します。
これは、相続人が決まって不動産登記簿の名義が変更されるまでの間の届出です。
そのため、相続人が登記をすれば現所有者の申告は必要ありません。
不動産の所有者が亡くなったあと、相続人が登記していないにも関わらず申告をしなければ、正当な理由がない限り10万円以下の過料を支払わなければなりません。
申告は、相続人代表者指定届兼固定資産現所有者申告書を市区町村の役所に提出することでおこなえます。
書式は各役所のホームページでダウンロードまたは窓口でもらいましょう。
不動産を相続する方が決まったら、相続登記をしましょう。
2024年4月からは相続登記が義務化されています。
以前は相続登記をしないこと自体にペナルティはなかったものの、現在では相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に手続きをおこなわないと、10万円以下の過料を支払うリスクがあります。
また、2024年4月より前の不動産相続については2027年3月31日までに手続きをおこなう必要があるので注意しましょう。
相続が発生する前に固定資産税が未払いのままであった場合、法定相続人に支払い義務があり、原則として法定相続分で負担割合を決めなければなりません。
相続発生後に相続人が支払った未払い分の固定資産税があると、相続税の債務控除の対象となり、相続税を減額することができます。
債務控除とは、相続財産の価額から被相続人が残した借金や葬儀費用を差し引いて課税価格を計算できる仕組みです。
未払い分の固定資産税は、被相続人の債務として控除することができるのです。
不動産の所有者が亡くなると、固定資産税の支払い義務は被相続人から相続人に引き継がれます。
固定資産税は、遺産分割が完了するまでは相続人全員が支払い義務を負い、未払い分も法定相続分に応じて負担するのが原則です。
また、相続後は相続登記が必要な点にも注意しましょう。
相続はやるべきことが多く、自分たちだけで全てを終えるのは、なかなか難しいものです。
固定資産税に関する対応をはじめ、不動産相続で迷ったら、早めに弁護士に相談しましょう。
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