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相続分の譲渡はいつまでにおこなう?譲渡に関する注意点も解説

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相続分の譲渡とは、民法で定められた相続分をほかの人に譲り渡すことです。

相続分の譲渡は相続トラブルに巻き込まれたくないときや、自分以外の誰かに遺産相続をさせてあげたい場合などにおこなわれます。

ただ、いつまでに手続きをしなくてはいけないのか、どのような手続きが必要かなど、よくわからないという人もいるのではないでしょうか。

本記事では遺産相続における相続分の譲渡について解説します。

譲渡をおこなう方法や注意点について解説するのでぜひ参考にしてください。

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相続分の譲渡についての基本解説

遺産相続においては、自身の相続分をほかの誰かに譲り渡すことが可能です。

以下では相続分の譲渡について解説します。

相続分の譲渡とは|自分の相続分をほかの誰かへ譲り渡すこと

相続分の譲渡とは、自身の法定相続分をほかの誰かに譲り渡すことです。

法定相続分を譲る相手に制限はなく、ほかの相続人はもちろんのこと、それ以外の第三者でも問題はありません。

また、譲渡を有償でおこなうことも可能です。

相続分の譲渡をおこなうと遺産の相続権を失います

そのため、遺産相続の際におこなわれる遺産分割協議には参加できなくなります。

相続分の譲渡と相続放棄の違い

相続分の譲渡と混同しやすいものに相続放棄の手続きがあります。

相続放棄とは遺産の相続権を放棄する手続きです。

相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人がもともと相続人でなかったとみなされるため、本来相続するはずの相続分はほかの相続人に割り振られることになります

相続分の譲渡と相続放棄の主な違いとしてあげられるのが、相続遺産に借金などマイナスの財産があった場合の対処です。

相続放棄をした場合はマイナスの財産も含め、一切の遺産を相続する権利が失われます

一方相続分の譲渡では、そのような効果はありません。

借金などのマイナス財産も、譲受人に引き継がれることになります。

ただ、この点で注意しなければならないのは、債権者の意向によっては譲受人ではなく、譲渡人が相続分の範囲において債務を弁済しなければならない可能性があることです大きな負債が含まれている遺産について相続分の譲渡を検討する際には負債の処理についても検討する必要があります。

そのほか、相続分の譲渡と相続放棄では以下のような違いもあげられます。

方法
  • 相続分の譲渡は譲渡先と契約することで成立する
  • 相続放棄は家庭裁判所で申述手続きが必要
期限
  • 相続分の譲渡は、遺産分割が成立するまでであればいつでも可能
  • 相続放棄の期限は相続開始から3ヵ月
他相続人の相続分に対する影響
  • 相続分の譲渡では影響がない
  • 相続放棄では、ほかの相続人に放棄された分が割り振られる
一部のみ対象にできるか
  • 相続分の譲渡では相続分の一部のみ譲渡とすることが可能
  • 相続放棄は一部のみ放棄できない

相続分の譲渡がおこなわれるケース

相続分の譲渡がおこなわれるケースとしては以下のような状況があげられます。

  • 遺産相続に関心がない
  • 遺産相続の手続きにわずらわしさを感じる
  • 相続トラブルに関わりたくない
  • 自分以外に相続させたい
  • 遺産を相続する人を絞りたい
  • 有償で譲渡することで相続を待たずに現金化したい

相続分の譲渡はいつまでにおこなう必要があるか

相続分の譲渡は、遺産分割が完了するまでにおこなう必要があります。

遺産分割後に相続した財産を個別に譲渡することは可能ですが、相続分の譲渡自体はできなくなるため注意しましょう。

相続分の譲渡をおこなう方法

相続分の譲渡をおこなう場合は以下の手順で手続きを進めます。

①相続分譲渡の合意を取る

まずはじめに、相続分の譲渡についての合意を得ます。

合意は譲渡人と譲受人にておこなう必要があり、有償か無償かや譲渡の範囲といった譲渡の条件についても確認をおこないます。

②相続分譲渡証明書を作成する

譲渡の条件がまとまり合意に至ったら、相続分譲渡証明書を作成します。

相続分譲渡証明書は相続分の譲渡があったことの証明になり、たとえば相続登記の際に提示を求められます。

相続分譲渡証明書を作成する際は、実印による押印および印鑑登録証明書の添付が必要です。

ほかの相続人に譲渡の事実を伝える

相続分譲渡証明書を作成したら、相続分の譲渡をおこなった事実をほかの相続人に通知します。

譲渡人が遺産分割から離脱したことをほかの相続人が把握したら手続きは完了です。

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相続分の譲渡ができる範囲

相続分の譲渡は、ケースによってはおこなえない場合があります。

以下では相続分の譲渡ができる範囲について解説します。

法定相続分|遺言書がない場合は譲渡可能

遺言書がない場合、法定相続分の譲渡は基本的に問題なくおこなえます。

遺言書に記載のない遺産については譲渡可能

遺言書がある場合は、遺産について分割方法が定められているかどうかによって異なります。

遺言書で分割方法が定められていない遺産についてはその範囲で、相続分の譲渡がおこなえます。

遺産分割方法が指定されている遺産は譲渡できない

遺言書があり、遺産の分割方法が定められている遺産は、相続分の譲渡はおこなえません

遺産を相続後、財産ごとに譲渡を検討する必要があります。

包括遺贈の場合は譲渡可能

被相続人が相続人以外に遺産を分け与えることを遺贈といい、その中でも遺産から割合を指定して遺贈することを包括遺贈といいます。

たとえば「○○に遺産の1/3を与える」と遺言書に指定されていれば、それが包括遺贈となるのです。

包括遺贈の場合、遺贈を受ける権利を譲渡することが可能です。

特定遺贈の場合は譲渡できない

一方で、遺贈の中でも特定の財産を指定して遺贈する特定遺贈の場合は、財産の分割方法が定められているケースと同じ扱いになるため、相続分を譲渡する形をとることはできません。

相続分の譲渡に関する注意点

最後に相続分の譲渡に関する注意点を紹介します。

相続分の譲渡は「取戻し」に注意が必要

相続分の取り戻しとは、相続分の譲渡を受けた第三者から相続人が譲渡された遺産を文字どおり取り戻せる手続きです。

相続分の譲渡は、相続人以外の第三者へおこなうこともできます。

ただ第三者が遺産分割手続きに加わると、遺産分割に関連した争いが複雑化してしまう可能性があります。

そこで、ほかの相続人に相続分の取り戻しができる権利が認められているのです。

相続人から相続分の取り戻しが請求された場合、相続分の譲渡を受けた第三者はそれを拒むことができません。

そのため、譲受直後の財産の扱いについては注意が必要といえます。

なお相続分の取り戻しをおこなう際は、取り戻す相続分の価格や譲渡費用を譲受人に支払わなくてはなりません。

仮に無償で相続分が譲渡されていたとしても、支払いが必要です。

(相続分の取戻権)

第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

引用:民法 | e-Gov法令検索

相続分の譲渡をしても債務はそのまま残る

相続財産にマイナスの財産が含まれる場合、相続分の譲渡では相続放棄と異なり債務が免除されるわけではありません

譲渡人も譲受人も相続債務を支払わなければならない可能性があります。

債務を負いたくない場合や、譲受人に負わせたくない場合は、相続放棄を検討するとよいでしょう。

税金がかかる場合がある

相続分の譲渡をおこなう場合、税金がかかるケースがあります。

相続人への相続分の譲渡は相続税の課税関係以外は生じません。

つまり、通常の遺産分割と課税関係と同様に処理されます。

これに対して相続人以外の第三者に相続分の譲渡をした場合、一旦譲渡人に相続税が発生します。

これに加え、無償贈与の場合には譲渡を受けた者に対して贈与税もかかります。

相続税と贈与税が共に課税される可能性がありますので注意しましょう。

さいごに|相続分の譲渡を検討中なら弁護士に相談しよう

相続分の譲渡は、自身の法定相続分をほかの人に分け与えることを指します。

ただし、遺言書の内容によっては譲渡がおこなえないことがあるほか、ケースによっては税金がかかるなど、注意しなければいけない点が複数あります。

相続分の譲渡を検討しているなら、相続問題に関する専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで状況にあわせた最適な選択肢を提案してもらえるでしょう。

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この記事の監修者
山村忠夫法律事務所
山村 真登 (京都弁護士会)
上質かつ満足度の高いリーガルサービスを幅広いお客様に提供する目的のもと設立。税理士や司法書士、公認会計士、不動産業者などの専門士業と連携し、いかなる相続問題に対しても迅速、柔軟かつ、専門的に対応可能。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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