自身が他界した場合に備え、相続財産清算人(相続財産管理人)を立てるべきかもしれないと考えているものの、権限がどの程度なのかわからない方も多いのではないでしょうか。
相続財産清算人(相続財産管理人)とは、相続人不存在の場合や全員が相続放棄した場合に、亡くなった方の残された財産(不動産、預金、株式など)を適切に管理・処分する方のことです。
相続財産の内容によっては、相続人同士で話し合いをしたり、法的手続きを進めたりする必要があるなど、簡単に解決できないこともあります。
相続トラブルを確実に解決するためにも、できる限り早い段階で信頼できる弁護士に相談するのがおすすめです。
本記事では、相続財産清算人(相続財産管理人)に与えられる権限、相続財産清算人(相続財産管理人)の役割、相続財産清算人(相続財産管理人)が必要となるケースについて解説します。
なお、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任方法や選任されたあとの流れについては、以下の記事を参考にしてください。
ここでは、相続財産清算人(相続財産管理人)に与えられる権限についてそれぞれ解説していきます。
保存行為とは、相続財産の価値を維持するために必要な一切の行為を指します。
不動産の相続登記や建物の修繕工事、預金の払い戻し・管理などが該当し、これらの保存行為・管理行為については、家庭裁判所の許可は不要で、相続財産清算人が単独で判断して実施できます。
「処分行為」とは相続財産の形を変える行為を指し、不動産や株式の売却、預金の解約、家具家電の処分などが含まれます。
家庭裁判所に権限外行為許可の申し立てをすると、処分行為が可能となります。
許可なく処分行為をすると権利のない代理行為となり、損害が生じる可能性や、相続財産清算人(相続財産管理人)自身が法的責任を問われるリスクがあるでしょう。
亡くなった方のための墓地購入や永代供養費の支出なども同様に、家庭裁判所の許可が必要です。
亡くなった方の相続財産を受け継ぐ相続人がいない場合、民法では相続財産を法人とすることが定められています。
(相続財産法人の成立)
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
その場合、相続財産を管理する「相続財産清算人(相続財産管理人)」が選任しなければなりません。
(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
相続財産清算人(相続財産管理人)は、相続財産の状況を調査し、債権者への支払いや受遺者への財産の分与、余剰財産の国への納付などをおこない、最終的に財産を清算する役割を担います。
また、必要に応じて財産の競売もおこなわれます。
2023年4月に施行された民法改正により、従来の相続財産管理人が相続財産清算人と名称変更されました。
そのため、別途新たに相続財産管理人の制度が設けられたのです。
相続財産清算人(旧相続財産管理人)と新しい相続財産管理人とでは役割や権限が異なります。
なお、本記事では、相続財産清算人(旧相続財産管理人)を「相続財産清算人(相続財産管理人)」と記載しています。
相続財産管理人は、一定の場合を除いていつでも選任の申し立てができますが、相続財産清算人は相続人の存在が明らかでない場合に限定されます。
相続人はいるものの遺産分割協議などがおこなわれておらず、相続財産を管理する方がいない場合は、相続財産管理人が選任されるでしょう。
相続財産管理人の職務は相続財産の保存行為に限られ、処分行為はできません。
ここでは、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立が必要なケースについてそれぞれ解説していきます。
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立がおこなわれる場合、被相続人の債権者が申し立てをおこなうケースが多いです。
被相続人に対して債権を持っている債権者に相続人がおらず、債権の回収ができない場合に、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任を申し立てます。
選任された相続財産清算人(相続財産管理人)は遺産の管理処分などができ、債権者はその相続財産清算人(相続財産管理人)に対して債権の請求できます。
したがって、被相続人に対する債権を持っていた債権者で、相続人がいない場合は、迅速に相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立をおこなうのがおすすめです。
相続放棄をした方でも、相続財産を占有している場合は、その管理責任を負わなければなりません。
しかし、そうした財産の管理が負担になる場合は、相続財産清算人(相続財産管理人)を申し立てて財産の管理や処分を任せられます。
相続財産清算人(相続財産管理人)は、相続人に代わって残された財産の管理・処分をおこなう立場にあります。
特別縁故者が財産分与を受けたい場合にも相続財産清算人(相続財産管理人)の選任が求められます。
特別縁故者とは、法定相続人ではないものの、被相続人と生計を共にしていたり、療養介護をしていたりと、特別な関係にあった方のことです。
特別縁故者は家庭裁判所に財産分与を申し立てられますが、その手続きには被相続人の財産を管理してくれる相続財産清算人(相続財産管理人)が必要となります。
この申し立てが認められれば、相続人でなくても被相続人の財産を受け取れます。
(特別縁故者に対する相続財産の分与)
第九百五十八条の二 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立を控えている場合、早い段階で弁護士に相談しなければ思わぬ事態に発展する可能性があります。
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立が発生したら、法的手続きや資料集めなどさまざまな準備をおこなわなければなりません。
ただ、相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立に関する全ての手続きをご自身でおこなうのは難しいものです。
そのため、法的手続きの必要が出てきた段階で、迅速に弁護士に相談する必要があるでしょう。
弁護士に依頼と面倒な手続きを一任でき、当事者同士のトラブルにも迅速に対応してもらえます。
しかし、弁護士をどのようにして探せばよいかわからない方がいるかもしれません。
そのような方には、弁護士などの法律の専門家を探すひとつの方法として「ベンナビ」をおすすめします。
ベンナビは、さまざまな法律問題を解決するために、分野ごとに深い知識と経験をもつ弁護士を紹介するポータルサイトです。
全国の各法律分野を得意とする弁護士が登録されており、自宅や職場から近い弁護士を簡単に検索できます。
さらに、平日の昼間に相談できない方のため、夜間・休日の相談や電話・オンラインでの相談も可能な法律事務所もあります。
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任申立が発生した場合には、なるべく早めに弁護士へ相談してみることをおすすめします。
遺族年金とは、国民年金や厚生年金などの加入者が亡くなった際に支給される年金です。遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類あり、それぞれ受給内容が異な...
除籍謄本とは、結婚や死亡などで誰もいなくなった状態の戸籍の写しのことです。除籍謄本の取得方法はいくつかあり、場合によっては除籍謄本が不要なケースもあります。この...
遺産相続とは、被相続人が残した財産・権利・義務を、相続人が引き継ぐことです。相続の具体的な仕組みは民法などで規定されていますが、相続人同士で揉め事になることも少...
遺留分とは相続人が最低限の遺産を確保するための制度です。侵害された場合には遺留分侵害額請求により財産を取り戻すこともできます。ただし、この権利は被相続人の兄弟姉...
本記事では、相続手続きの流れや手順を解説します。また、各相続手続きの期限や手続きの仕方もあわせて紹介します。
株式の相続が発生すると、株式の調査や遺産分割、評価や名義の変更などさまざまな手続きが必要になります。この記事では、株式を相続するときの手順について詳しく解説しま...
税理士費用とは、税理士に仕事を依頼する際に支払う料金のことで、税理士報酬や顧問料などが含まれます。この記事では、税理士費用の相場や内訳について解説します。
相続時に被相続人の残高を確認できる残高証明書の取得方法を解説します。「ゆうちょ銀行」「三菱UFJ銀行」など、必要書類や手続きは銀行によってそれぞれ異なりますので...
所有物件・賃貸物件に関わらず、離婚・相続等により家の名義人が変わった場合には、名義変更をする必要が出てくるため、所有物件・賃貸物件それぞれの名義変更手続きを押さ...
記事では、2018年に成立した相続法の変更点を中心に、それぞれの制度を利用する際のポイントを解説します。また、自筆証書遺言の保管制度、相続時精算課税制度の見直し...
相続放棄をする方は一定数いますが、相続税の問題や保険金の受け取り方について、知識が乏しい方も少なくありません。本記事では、相続放棄をした場合に生命保険金は受け取...
相続分の譲渡とは、民法で定められた相続分をほかの人に譲り渡すことです。本記事では遺産相続における相続分の譲渡について解説します。譲渡をおこなう方法や注意点につい...
本記事では、会社を配偶者に相続させたいと考えている経営者の方に向けて、相続人に関する基礎知識、妻に自分の会社を相続させるための方法やポイントなどを説明しています...
本記事では、兄弟姉妹に会社を相続させようと考えている方に向けて、被相続人の兄弟姉妹は会社を相続できるかどうか、実の兄弟姉妹に会社を相続(承継)させる方法、遺言書...
相続放棄については、市役所の法律相談会で無料相談可能です。しかし、申述は裁判所でおこなう必要があるなど注意点もあります。そのため、できる限り早い段階で相談にいく...
亡くなった人の遺産は子どもが相続するケースが多いですが、子どもがいない場合は親や兄弟姉妹が遺産を相続することもあります。本記事では、子なし夫婦の相続における注意...
被相続人が亡くなり、遺産分割協議をおこなう必要があるにもかかわらず、相続人のなかに連絡が取れない人がいるときは、どうすればよいのでしょうか。特定の相続人と連絡が...
家庭裁判所の調停委員が、相続人全員が遺産分割方法など合意を形成できるようなアドバイス・和解案を提示。遺産分割調停を控えている方や、遺産分割協議が思うように進まず...
「自分が亡くなったあとスムーズに遺産相続をさせたい」「夫が亡くなったのに遺言書がなくて困っている」など、配偶者に先立たれたときや自分が亡くなった後のことを考える...
相続の手続きは、何かとストレスがかかりそうだと不安に思われている方も多いのではないでしょうか。 あるいは、すでに相続手続きを始めていて、困っている方もいるかも...