事業承継に関する弁護士相談をご検討中の方へ
事業承継は経営者にとって大きな節目であり、後継者の選定や株式の移転、親族間の調整など想像以上に多くの課題が伴います。
準備不足のまま進めると、経営権の分散や金融機関との交渉難航など会社の存続に関わるリスクに直面しかねません。
安心して次世代に事業を引き継ぐには、弁護士のサポートが必要不可欠です。
当記事では、事業承継における弁護士の必要性と役割、具体的なサポート内容を解説。
依頼するメリットや費用相場もお伝えするので、参考にしてください。
事業承継には株式譲渡、事業譲渡、相続・贈与など複雑な法的手続が絡み合うため、専門知識をもつ弁護士のサポートが不可欠。
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、専門家の活用が推奨されています。
自分たちだけで事業承継を進めると、株式譲渡契約書の不備により後継者が経営権を掌握できなかったり、遺留分をめぐって相続争いに発展したりといった事態を招きかねません。
弁護士は、これらのリスクを事前に察知して適切な対策を講じることで、安心して事業を次世代に引き継ぐためのサポートを提供します。

事業承継には大きく分けて3つのパターンがあり、それぞれに異なる法的課題が存在します。
各パターンの特性を理解して最適なサポートを提供するのも、弁護士の腕の見せ所です。
親族内事業承継とは、経営者の子どもや兄弟姉妹など親族を後継者として事業を引き継ぐこと。
親族内事業承継では、遺留分や相続税対策、経営権の集中など経営権の分散や相続トラブルが起こりやすいのが特徴です。
弁護士は中立的な立場で、相続・贈与に関する法的課題と家族間の感情的対立を調整しながら、円滑な経営権移転を実現します。
親族外事業承継は従業員や役員へ承継すること。
後継者候補者に株式を買い取る資金力がなかったり、経営者の個人保証の引き継ぎを嫌がったりするケースが多く、承継のハードルになります。
後継者となる従業員の個人保証を解除または軽減するための金融機関との交渉や、後継者が株式を取得するための資金調達計画(役員報酬の引き上げなど)の法的サポートが必要不可欠です。
M&Aは第三者の企業へ事業を承継すること。
企業価値評価、多数の契約書の締結、複雑な法的手続を伴うため、高度な専門知識が不可欠です。
弁護士は、法務デューデリジェンス(企業調査)を実施して法務リスクを洗い出し、売り手である経営者に不利益がないよう株式譲渡契約書などのレビューや作成、交渉の代理をおこないます。
またM&Aでは交渉を有利に進めるスキルも必要なため、事業承継の経験が豊富かどうかも弁護士選びのポイントです。

弁護士は事業承継のあらゆる場面で、法的な観点から経営者をサポートする存在。
具体的な業務内容を7つ紹介します。
弁護士は経営者の意向、会社の状況、関係者の利害を総合的に判断し、最適な承継方法と具体的なスケジュールを提案します。
例えば「子どもに継がせたいが、経営能力に不安がある」という場合、「従業員として経験を積ませている間に経営者が株を少しずつ生前贈与していく。
同時に経営を監督する機関として種類株式を発行する」といったプランが考えられるでしょう。
最適な承継方法は、会社の業績や後継者の有無、経営者の年齢など複数の要素によって異なるもの。
各承継方法のメリット・デメリットを法的な観点から比較検討するのが、弁護士の役割です。
弁護士は会社の契約関係、許認可、労務問題、紛争の有無などを調査し、潜在的な法的リスクを事前に洗い出します。
簿外債務や係争リスク、コンプライアンス違反など、表面化していない法的問題が承継後に顕在化するケースが多いためです。
見過ごされた法的リスクは、承継後に大きな損害やトラブルに発展する可能性があります。
例えば、必要な許認可が更新されていなかったり、未払いの残業代があったりすることは珍しくありません。
事前の調査によりリスクを発見できれば、対策を講じることができます。
株式や資産を後継者に移転するための手続きをサポートするのも、弁護士の重要な業務のひとつ。
法的に有効な書類(株式譲渡契約書、贈与契約書、遺言書など)を作成し、株主総会の開催支援や議事録作成をおこないます。
株式譲渡を含む事業継承は、後継者とほかの相続人をめぐって相続トラブルの原因となるため、弁護士が間に入り公平性を担保するのが欠かせません。
利害関係者の意向を整理し、将来的に紛争が起きないよう調整をおこなうのも重要な役割です。
弁護士は経営者の個人保証の解除・引き継ぎや、事業承継に必要な資金の融資について、金融機関と交渉します。
後継者が株式を買い取るための資金について、金融機関から融資を断られることは珍しくありません。
その場合弁護士が、事業承継計画の妥当性や将来の収益性を詳細に説明した事業計画書を提出し、交渉を重ねることで、融資の承認を得られる可能性が高まります。
金融機関との交渉には、会社の財務状況や事業計画を論理的に説明し、法的な根拠に基づいて主張する能力が求められるでしょう。
弁護士は、事業承継を機に、主要な取引先との基本契約書や不動産の賃貸借契約書などを見直し、必要に応じて後継者にとって不利な条項の改定交渉をおこないます。
長年の取引で契約書が更新されていなかったり、口約束で取引が続いていたりする場合、承継を機にトラブルが発生しかねません。
契約内容を明確化して法的に整備しておくと、後継者が安心して事業を引き継げます。
事業承継による経営体制の変更に伴い、就業規則や雇用契約書を見直すのも弁護士の役割。
M&Aなどで親会社が変わると、労働条件の統一が必要になる場合があります。
また法改正に対応していない古い就業規則は、従業員とのトラブルの原因になります。
後継者や買い手企業は、事業内容や収益性だけをみて事業承継を決意するわけではありません。
在籍する人材の質や数も踏まえて、承継の可否や今後の経営方針を検討します。
しかし事業承継を機に従業員が離職してしまうと、当初の計画に大きな支障が生じかねないため、弁護士に依頼して労務トラブルの発生を防ぐのが重要です。
弁護士は事業承継後も顧問として、経営上のさまざまな法的問題について後継者にアドバイスをおこない、安定した経営を支えます。
事業を引き継いだ直後は、後継者が経営判断に迷ったり、予期せぬトラブルに直面したりすることが少なくありません。
気軽に相談できる法務の専門家がいることは、経営の安定化に繋がるでしょう。
継続的なサポートにより、後継者は自信を持って経営に取り組めます。
弁護士費用は主に「相談料」「着手金」「報酬金」で構成され、案件の規模や複雑さによって金額が変動します。
依頼前に必ず見積もりを確認することが重要です。
| 料金の種類 | 相場 |
| 相談料 | 1時間あたり1万円〜3万円程度 |
| 着手金 | 30万円以上 |
| 報酬金 | 法律事務所によって異なる |
相談料は1時間あたり1万円~3万円程度が相場ですが、初回相談を無料としている事務所も多くあります。
着手金は弁護士が業務を開始する際に支払う費用。
会社の規模や資産によりますが、一般的には30万円以上が相場です。
報酬金は事業承継が成功した際に支払う費用です。
「事業承継によって得られた利益」もしくは「会社の総資産」のいずれかをもとに算出されます。
弁護士費用について詳しくは別記事で解説しているので、参考にしてください。

弁護士に依頼することで得られる具体的なメリットを理解すると、専門家への依頼の重要性がより明確になります。
弁護士に複雑な法的手続や書類作成、関係者との交渉を任せることで、経営者は事業承継の準備期間中も会社の価値を維持・向上させるための本業に集中できます。
事業承継の手続きは煩雑で、多くの時間を要すもの。
経営者が手続きに時間を取られすぎると、業績が悪化し、承継の条件(M&Aの売却価格など)に悪影響を及ぼす可能性があるでしょう。
弁護士なら契約上の不備や潜在的な訴訟リスク、労務問題などを事前に発見し、適切な対策を講じることが可能です。
例えば、知的財産権の管理不備や過去の法令違反など専門家でなければ見落としがちな法的リスクは数多く存在します。
法務リスクを放置したまま事業承継を進めると、深刻なトラブルにつながる恐れがあります。
さまざまなリスクを事前に把握し、専門家のもと、有効な対策を講じることが重要です。
M&Aの売却価格や個人保証の解除など、事業承継をおこなううえで交渉が必要な場面は少なくありません。
弁護士が代理人となることで、専門知識が要求される場面でも対等な立場で交渉し、より有利な条件を引き出すことが期待できます。
特にM&Aの買い手企業や金融機関は、交渉のプロフェッショナル。
知識や経験で劣る経営者が個人で交渉に臨むと、不利な条件を飲まざるを得ない状況に陥りがちです。
法律と交渉の専門家である弁護士の交渉力により、より良い条件での承継が可能でしょう。
弁護士に煩雑な手続きや厳しい交渉を任せることで、経営者の心理的な負担が大幅に軽くなります。
事業承継は経営者にとって重大な決断で、「従業員の雇用を守れるのか」「会社を売るのは裏切りではないか」と大きな精神的ストレスがかかるものです。
さらに将来への不安、従業員や家族への責任、交渉のプレッシャーなどさまざまなストレス要因が存在します。
専門家のサポートにより、経営者の精神的ストレスが軽減でき、冷静な判断ができるようになるでしょう。
事業承継が引き金となって起こりうる相続争いを未然に防げるのも、大きなメリットです。
弁護士が第三者の専門家として法律に基づいた公平な解決策を提示することで、親族間の感情的なしがらみを排除できます。
相続トラブルは感情的な対立が原因で発生するケースが多く、特に事業承継が絡むと、財産だけでなく経営への想いも交錯し、複雑化しがちです。
当事者同士で話し合いを進めるのではなく、弁護士の中立的な立場からの助言を取り入れると、円満な解決へ進みやすいでしょう。

事業承継の成功は、適切な弁護士選びから始まります。
3つのポイントを押さえて、信頼できる専門家を見つけましょう。
弁護士を選ぶ際は、「事業承継」「M&A」を得意分野として掲げている弁護士を選びましょう。
弁護士にはそれぞれ得意分野があります。
離婚や交通事故に特化した弁護士に事業承継を依頼しても、最適なサポートは期待できません。
事業承継特有の法務・税務の知識と経験が不可欠です。
Webサイトで具体的な解決事例や実績が掲載されているかを確認するだけでなく、初回の相談時に類似案件の取り扱い経験について直接質問するのも、見極めるのに役立ちます。
複雑な法律問題について、経営者が納得できるまでわかりやすく説明してくれる弁護士を選ぶと、後悔なく事業承継できる可能性が高まります。
事業承継の最終的な意思決定者は経営者自身。
弁護士の説明が理解できなければ、リスクを正しく認識できず、誤った判断を下してしまう可能性があります。
経営者といえど、事業継承に関する専門用語を全て理解できているとは限りません。
「デューデリジェンス」や「表明保証」といった専門用語が出てきた際に、「会社の健康診断のようなもので、隠れた問題がないか調べることです」「会社の内容について『間違いありません』と保証する約束のことです」といったように、平易な言葉に置き換えて説明してくれる弁護士は信頼できるでしょう。
依頼する前に、「どのような業務にいくらかかるのか」「総額でどの程度の費用が見込まれるのか」がわかる明確な見積書を提示してくれる弁護士を選びましょう。
弁護士費用は高額になることがあるため、料金体系の透明性は信頼関係の基礎となります。
「費用はあとで」といった曖昧な説明をする事務所は避け、追加費用が発生するケースについても事前に確認し納得することが重要です。
また、複数の法律事務所で話を聞いて比べるのも有効な手段。
費用が相場や他事務所と比べて妥当かを判断できます。
事業承継のパターンによって、必要な期間と手続きの流れが異なります。
それぞれの特徴を理解し、計画的に進めることが重要です。
親族内・外承継の場合、後継者の育成期間も含め5年~10年程度の時間をかけて事業承継を完了させます。
自社と後継者の現状把握から始まり、後継者教育と並行して株式などを計画的に移転するといった5ステップで進めるのが一般的です。
事業承継は一朝一夕にはいきません。
特に後継者の育成には数年かかるため、早期からの計画的な準備が成功の鍵です。
M&Aにかかる期間は、引き継ぎまで含めて1年~3年程度。
後継者の育成期間を必要としないため、期間を短縮できます。
自社の価値算定から始まり、M&A仲介会社などを通じて相手探しをおこない、条件交渉を経て基本合意を結びます。
そのあと、買い手による企業調査(デューデリジェンス)を受けて最終契約を締結し、決済や株式の引き渡しで完了するのが一般的な流れです。
M&Aのプロセスは多くの専門家が関与し、法的な手続きも複雑。
各ステップで弁護士の助言を受けながら慎重に進める必要があります。
事業承継は経営者や後継者だけで完結できるものではなく、株式移転や契約書作成、金融機関との交渉など専門的な対応が求められる場面が多くあります。
事業承継において、弁護士は法律のプロとして法的な面からサポートをしてくれる強い存在。
具体的には主に次の7つの業務や役割があります。
安心して次世代に会社を託すためには、早期から弁護士に相談し、計画的に準備を進めるのが成功の鍵となるでしょう。
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