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山林の相続に必要な手続きは?発生しがちな問題点や相続したくない場合の対処法も解説

ゆら総合法律事務所
阿部 由羅
監修記事
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山林を相続する際には、相続登記の手続きに加えて、市町村長への届出を要することがあります。

また、山林の相続についてはさまざまな問題が生じることがあるので注意が必要です。

スムーズにトラブルなく山林を相続するためには、弁護士のサポートを受けましょう。

本記事では山林の相続について、必要な手続き・発生しがちな問題点・相談先などを解説します。

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山林を相続する際に必要な2つの手続き

山林を相続した場合には、相続登記の手続きをおこなう必要があります。

また、地域森林計画の対象民有林である場合には、森林法に基づく市町村長への届出も必要です。

山林の相続登記手続き|山林を相続した人全員が必要

相続または遺贈(=遺言による贈与)によって不動産を取得した人は、相続の開始および所有権の取得を知った時から3年以内に相続登記の手続きをしなければなりません(不動産登記法76条の2)。

山林も不動産なので、相続した際には相続登記の手続きが義務付けられます。

相続登記の手続きは、以下のいずれかの方法によっておこないます。

いずれも申請先は、山林の所在地を管轄する法務局または地方法務局です。

所有権移転登記の申請

被相続人から自分へ、山林の所有権登記を移転します。

相続人申告登記の申請

自分が相続人である旨を申し出て、その旨を山林の登記簿に付記してもらいます。

相続人申告登記は手続きが簡単で必要書類も少ないので、手間をかけずに相続登記の義務を果たしたいときは便利です。

ただし山林の所有権を第三者に対抗するためには、相続人申告登記では足りず、所有権移転登記を経る必要があります(民法177条)。

将来的に山林を売却などによって処分する際には、所有権移転登記を得ている必要がありますので、早めに登記申請をおこないましょう

市町村長への届出|地域森林計画の対象民有林である場合に必要

相続した山林が地域森林計画の対象となっている民有林である場合は、原則として当該山林の所在地の市町村長に対して、その旨を届け出なければなりません森林法10条の7の2第1項)。

市町村長への届出の期限は、対象民有林の所有者となった日から90日以内です。

対象民有林を相続した場合は、遺産分割が完了しているか否かにかかわらず、相続開始の日から90日以内に市町村長へ届け出る必要があります。

市町村長への届出に当たっては、以下の書類を提出します(森林法施行規則7条1項・2項)。届出書の様式は、林野庁のウェブサイトからダウンロード可能です。

  • 届出書
  • 対象民有林の位置を示す地図
  • 対象民有林の登記事項証明書その他の届出の原因を証明する書面

山林の相続について発生しがちな問題点

山林の相続については、以下のような問題点が発生しがちです。

これらのトラブルによる不利益を最小限に抑えるためには、相続手続きの進め方などについて弁護士のアドバイスを受けましょう

  1. 過去の相続登記がおこなわれていない
  2. 隣地との境界や位置が不明確である
  3. 山林の評価額を算定するのが難しい
  4. 買い手が見つからない
  5. 土砂崩れなどの責任を問われる
  6. 相続しても活用方法が難しい

過去の相続登記がおこなわれていない

山林については、過去の相続において相続登記の手続きがおこなわれておらず、現在の所有者が誰だか分からない状態になっているケースがよくあります。

この場合は過去の相続に遡って相続人を調べ、遺産分割の結果を確認したり、分割未了の場合は存命中の相続人の意思を確認したりしなければなりません。

特に、何代にもわたって相続登記がおこなわれずに放置された山林については、権利者の確認作業が非常に煩雑となるため、自力で対応するのは事実上不可能に近いでしょう。

隣地との境界や位置が不明確である

山林と隣地の境界は、不正確な測量や土砂崩れなどの地形移動によって、不明確となっているケースがよくあります。

また、登記所に備えられている公図が不正確であるために、山林の正確な位置が分からないケースもあります。

山林を売却などによって処分する際には、山林と隣地の境界を明確化しなければなりません。

さまざまな手がかりから地道に境界線を特定する必要がある上に、再測量をすることになれば費用もかかります。

山林の評価額を算定するのが難しい

遺産に山林が含まれている場合は、遺産分割や相続税の申告などをおこなう際に、山林の価値の評価が必要となるケースがあります。

都市部で買い手の需要が多く、路線価が設定されているような地域の土地であれば、相続時の価値の評価は比較的容易です。

これに対して、買い手が付きにくく路線価も参照できない山林は価値評価の方法が複雑で、人によって見解が分かれてしまうことがよくあります。

遺産分割に当たって、山林の価値に関する評価が相続人ごとに分かれると、揉め事に発展してしまうかもしれません。

また、相続税の申告に当たって山林の価値評価を誤ると、後に追徴課税を受けてしまうおそれがあります。

買い手が見つからない

都市部にある不動産とは異なり、山林は活用方法が限定されていて管理も難しいため、なかなか買い手が見つからないケースがよくあります。

特に、相続人が誰も山林を相続したくない場合は、その山林を売却して代金を分けることが望ましいです

しかし、需要の少ない山林にはなかなか買い手が付かず、結局山林の遺産分割を保留せざるを得ないケースも散見されます。

山林を相続した後も、買い手が見つかりにくく、売却処分に難儀してしまう例が少なくありません。

土砂崩れなどの責任を問われる

山林の管理が行き届いていないと、地震や台風などが発生した際に土砂崩れが発生して、近隣に被害を及ぼすおそれがあります

相続財産である山林の土砂崩れによって発生した損害は、相続人全員が連帯して賠償しなければなりません。

遺産分割後に発生した土砂崩れについては、山林を相続した人が損害賠償責任を負います

土砂崩れによる近隣被害の程度が深刻である場合は、予期せず多額の損害賠償責任を負うことになりかねません。

そうは言っても、きちんと管理しようとすると手間も費用もかかるので、どうしていいか分からず困ってしまう方がたくさんいるようです。

相続しても活用方法が難しい

山林を相続して、自分の土地として活用しようとしても、どのように活用すべきかはかなり難しい問題です。

観光施設や別荘地などとして開発しようとしても、客を呼び込めなければ大赤字となってしまいます

誰かに貸して賃料を得ようとしても、借りてくれる人はそう簡単に見つからないでしょう。

活用を諦めて売却しようとしても、買い手が見つからず長い間放置されてしまうケースが良く見られます。

山林を相続したくない場合や手放したい場合の対処法

山林は管理や売却が難しいため、遺産に含まれていても相続したくない方や、相続してもすぐに手放したいと考える方がたくさんいます。

このように考えている方は、以下の対処法を検討しましょう。

  1. 相続放棄をする
  2. ほかの相続人に山林を相続してもらう
  3. 相続後に相続土地国庫帰属制度を利用する

相続放棄をする

「相続放棄」は、被相続人の資産と債務を一切相続しない旨の意思表示です。

相続放棄をすると、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。

その結果、山林を相続せずに済み、管理の負担などから解放されます

また、借金などの債務も相続せずに済むので、亡くなった被相続人が多額の債務を負っていた場合には相続放棄が有力な選択肢です。

その一方で、相続放棄をすると、山林以外の資産も一切相続できなくなります

価値のある不動産など、めぼしい遺産がある場合には、相続放棄以外の選択肢を検討した方がよいでしょう。

いずれにしても、山林の相続を避けるために相続放棄をすべきかどうかは、上記のようなメリットとデメリットを比較検討した上で判断すべきです。

相続放棄をする際には、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して、申述書と戸籍謄本などの添付書類を提出します。

相続放棄の手続きの流れや注意点などについては、以下の記事を併せてご参照ください。

ほかの相続人に山林を相続してもらう

山林を相続してもよいと言ってくれるほかの相続人がいるなら、遺産分割協議を通じて、その相続人に山林を相続してもらうのがよいでしょう。

そうすれば、山林以外の遺産を相続しつつ、山林の相続を回避することができます

ただし、管理が難しい山林を相続してもよいと言ってくれる相続人がいるケースは、比較的少数です。

相続人が誰も山林を相続したがらない場合は、遺産分割協議がまとまらなくなってしまうおそれがあります。

相続後に相続土地国庫帰属制度を利用する

ほかの遺産を相続しつつ、山林だけをピンポイントで手放すには、山林を相続した上で「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法も考えられます。

相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって取得した土地を手放して、国庫に帰属させることができる制度です。

利用する予定がなく、管理が難しい山林は、相続土地国庫帰属制度に適しています。

相続土地国庫帰属制度の利用を申請すると、法務局によって書面審査と実地調査がおこなわれます。

審査および調査の結果、問題がないと認められた場合には、負担金を納付することを条件に山林を国庫へ帰属させることができます。

ただし、すべての山林について相続土地国庫帰属制度を利用できるわけではありません。

却下事由または不承認事由が存在する場合には、相続土地国庫帰属制度を利用できないのでご注意ください。

  • <却下事由>
    →申請の段階で直ちに、相続土地国庫帰属制度の利用が却下されます。
    (a)建物の存する土地
    (b)担保権または使用収益権が設定されている土地
    (c)通路その他の他人による使用が予定される土地として、以下のいずれかが含まれる土地
    ・現に通路の用に供されている土地
    ・墓地内の土地
    ・境内地
    ・現に水道用地、用悪水路またはため池の用に供されている土地
    (d)特定有害物質により汚染されている土地
    (e)境界が明らかでない土地、その他の所有権の存否、帰属または範囲について争いがある土地
  • <不承認事由>
    →審査の段階で該当すると判断された場合に、相続土地国庫帰属制度の利用が不承認となります。
    (a)崖(勾配が30度以上で、かつ高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
    (b)土地の通常の管理または処分を阻害する工作物、車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地
    (c)除去しなければ土地の通常の管理または処分をすることができない有体物が地下に存する土地
    (d)隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ、通常の管理または処分をすることができない以下の土地
    ・他の土地に囲まれて公道に通じない土地であって、現に民法上の通行が妨げられているもの
    ・池沼、河川、水路または海を通らなければ公道に出ることができない土地であって、現に民法上の通行が妨げられているもの
    ・崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地であって、現に民法上の通行が妨げられているもの
    ・所有権に基づく使用または収益が現に妨害されている土地(軽微なものを除く)
    (e)上記のほか、通常の管理または処分をするに当たり、過分の費用または労力を要する以下の土地
    ・災害の危険により、土地や土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地
    ・土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地
    ・適切な造林、間伐、保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林
    ・国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地
    ・国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

山林の相続について困ったときのおすすめの相談相手

山林の相続手続きの進め方について困ったら、悩みの内容に応じて弁護士・税理士・司法書士・森林組合などに相談しましょう。

弁護士|山林の相続全般について相談できる

弁護士には、山林の相続手続きについて幅広く相談できます。

たとえば、山林を誰が相続するかについて相続人間で揉めてしまった場合は、弁護士に遺産分割協議の仲介を依頼するのがよいでしょう。

遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停・審判についても、弁護士に代理人として対応してもらえます

また弁護士には、山林を相続したくない場合の相続放棄や、相続土地国庫帰属制度の利用についても相談できます。

税理士や司法書士などの隣接士業と連携している弁護士に相談すれば、相続税の申告や相続登記の手続きについても、対応できる専門家をワンストップで紹介してもらえます。

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税理士|山林の相続税について相談できる

山林を含む相続財産等が多額に及ぶ場合は、相続税の申告が必要になる可能性が高いです。

相続税の申告については、税理士に相談しましょう。

税理士に相談すれば、複雑な山林の相続税評価についても適切に対応し、正しく相続税の申告をしてもらえます。

また、生前の段階から相続税対策を検討している方も、税理士に相談することをおすすめします。

相続税に精通して税理士に相談すれば、資産の状況や相続人のニーズなどに応じて、オーダーメイドに最適な相続税対策を提案してもらえるでしょう。

司法書士|山林の相続登記手続きについて相談できる

山林の相続登記手続きは、主に司法書士が取り扱っています。

自分でやると手間がかかる相続登記の手続きも、司法書士に依頼すればスムーズに対応してもらえます

ただし、山林の相続については登記以外にもさまざまな問題が発生することがあります。

そのため、まずは幅広く対応できる弁護士に相談して、弁護士から司法書士を紹介してもらう流れをおすすめします。

森林組合|相続後の山林の管理について相談できる

山林の維持管理は、所轄の森林組合の組合員になって管理費を払えば、専門業者に代行してもらうことができます。

山林を相続した後の維持管理に不安がある場合は、各都道府県の森林組合連合会や、個別の地域の森林組合に相談してみましょう。

さいごに|相続財産に山林があったら一度弁護士に相談を!

山林を相続する際には、相続登記や森林法に基づく市町村長への届出が必要になるほか、さまざまなトラブルのリスクにも注意しなければなりません。

スムーズに山林の相続手続きを完了するためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします

「ベンナビ相続」には、山林の相続に詳しい弁護士が多数登録されています。

地域や相談内容に応じて簡単に弁護士を検索できるので、たいへん便利です。

「ベンナビ相続」に登録されている弁護士の多くは、山林の相続に限らず、幅広い財産の相続手続きについて豊富な知見を有しています。

無料相談ができる弁護士も多数登録されているので、山林の相続についてお悩みの方は、「ベンナビ相続」を通じてお早めに弁護士へご相談ください。

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この記事の監修者
ゆら総合法律事務所
阿部 由羅 (埼玉弁護士会)
不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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