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マンションの相続手続き|手順・必要書類・税金の計算方法を解説

みとみらい法律事務所
後藤 直樹
監修記事
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マンションの相続には、適切な手続きに加えて税金に関する理解が不可欠です。

個々の状況に応じて必要書類が異なるほか、かかってくる相続税も異なるため、適切な知識がなければ相続はスムーズに進みません。

本記事では、マンションの相続手続きの流れをはじめ、必要書類や費用、そして税金の計算方法などについて解説します。

マンションという大きな財産だからこそ、税金の負担を抑えながら効率的に引き継ぐための方法を把握しておくことは重要です。

また、将来を見据えて家族に財産を引き継ぐ際の選択肢を知っておくためにも、本記事で基礎知識を身につけておきましょう。

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マンションの相続手続きの流れ

マンションの相続は、被相続人による遺言書の有無の確認からはじまり、相続人や相続財産の調査、遺産分割協議、相続税の申告と支払い、相続登記まで、一連の手続きを正確におこなう必要があります。

相続手続きは専門的な知識が求められるほか多くの書類が必要になるため、事前の準備と理解が不可欠です。以下では、基本的なマンションの相続手続きの流れを解説します。

①遺言書を確認する

相続手続きにおける最初のステップは、被相続人による遺言書の有無を確認することです。

遺言書が存在すれば、その内容に基づいて相続手続きが進められます。

遺言書は、故人の最終的な意志を反映しており、相続人や財産の分配に関する記載があります。

遺言書の種類には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があり、それぞれ異なる手続きが必要です。

なお、遺言書が存在しないケースでは、法定相続人が法律に基づいて財産を分割します。

遺言書の有無と種類を確認することで、相続の方向性が決まります。

②相続人調査・相続財産調査をおこなう

遺産分割の基本となるのは、相続人の特定と相続財産の調査です。

まずは戸籍謄本や住民票などの公的書類を用いて相続人を明確にし、不動産登記簿や銀行口座などから相続財産を洗い出します

ここでおこなう調査は、後の遺産分割協議や相続税申告に必要な情報を集めるために不可欠です。

相続財産には、不動産・預貯金・株式・車両・貴金属なども含まれ、全財産を把握する必要があります。

③遺産分割協議をおこなう

相続人が確定し、相続財産が明らかになったら、遺産分割協議をおこないます。

この協議では、相続人全員の合意のもと、誰がどの財産を相続するかを決定します。

協議の結果は遺産分割協議書に記載し、正式な合意とするためにはすべての相続人が署名・捺印しなければなりません

具体的な分割方法としては、以下の方法が挙げられます。

分割方法

内容

現物分割

相続財産をそのままの形で相続人間で分配します。マンションであれば、相続人の1人がそのまま引き継ぐ方法です。相続財産の価値が明確で、特定の財産を必要とする相続人に適していますが、価値の均等分配が難しいケースがあります。

代償分割

一部の相続人が相続財産を取得し、他の相続人にはその価値に相当する金銭や他の財産を分配する方法です。特定の財産を引き継ぎたい相続人がいるケースに有効で、金銭的調整により公平性を保つことができます。

換価分割

相続財産を売却して得た金銭を相続人間で分配する方法です。マンションなどの不動産を売却し、その売却益を相続人で分け合います。相続人全員に公平な分配が期待できますが、市場状況による売却価格の変動リスクがあります。

共有分割

相続財産を相続人全員の共有名義にする方法です。マンションの場合、所有権を共有することになります。将来的な財産の売却や利用に際して全共有者の合意が必要となるため、手続きが複雑化する可能性がありますが、財産を手放したくないケースに選択されます。

④相続税の申告・支払いをする

相続財産の評価額に基づいて相続税の申告をおこないます。相続税の計算は複雑であり、基礎控除や各種の控除を適用することで税額が変動するのが特徴です。

また、相続税の計算には、財産の評価額・法定控除・適用される税率など、多くの要素が関わってきます。

適切な申告と納税は、相続における法的な義務を果たすために不可欠であり、申告期限内に正確な申告と税金の支払いを完了させることが重要です。

ミスを防ぐためにも、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

⑤相続登記をおこなう

最終的に、相続したマンションの名義変更をするために相続登記をおこないます。相続登記をおこなうことで、正式に不動産の所有権が相続人に移転されます。

相続登記には、遺産分割協議書や戸籍謄本など複数の書類が必要となるため、事前に準備を進めておくことが大切です。

相続登記によって不動産の所有権が法的に保護されるため、将来的なトラブルを防ぐことにもつながります。

相続登記は相続手続きにおける最終段階であり、相続人の権利を確固たるものにする役割があります。

マンションを相続する際の必要書類

マンションの相続に際して必要となる書類は、相続の状況によって異なります。

まずは個々の相続の状況に合わせた必要書類について知っておきましょう。

以下では、遺言書に従って相続するケース、法定相続分で相続するケース、遺産分割協議をして相続するケースでそれぞれ必要な書類を紹介します。

 

遺言書どおりに相続する場合

法定相続分で相続する場合

遺産分割協議をして相続する場合

登記申請書

被相続人の戸籍謄本

被相続人の住民票・除票

相続人の戸籍謄本

相続人の住民票

固定資産税評価証明書

遺言書

×

×

遺産分割協議書

×

×

相続関係説明図

×

×

マンションの相続でかかる費用・税金

マンションを相続する際には、必要書類の取得費用に加えて相続税や登録免許税などが必要です。

以下では、マンションを相続する際に必要になる具体的な費用や税金について解説します。

必要書類の取得費用

マンションの相続に必要な書類には、登記申請書、被相続人の戸籍謄本、住民票、相続人の戸籍謄本や住民票、固定資産税評価証明書などがあります。

これらの書類を取得するためには、役所や法務局への手数料が必要です。相続人が複数人いるケースでは、書類の必要枚数も変わるため注意しましょう。

書類

入手場所

費用

登記事項証明書

法務局

600円程度

被相続人の住民票・除票

市区町村役場

300円程度

被相続人の戸籍謄本

市区町村役場

450円~750円程度

相続人の戸籍謄本

市区町村役場

450円~750円程度

相続人の住民票

市区町村役場

300円程度

固定資産評価証明書

市区町村役場

400円程度

相続税

相続税は、被相続人から相続人へと移転する財産の価値に基づいて計算されます。

基礎控除額を超える遺産に対して課税されるため、マンションの市場価値やその他の相続財産を正確に評価することが必要です。

相続税の計算には、土地や建物の評価方法に加えて、基礎控除・小規模宅地等の特例・配偶者控除といったさまざまな控除が適用されます。

負担を軽減するためにも、専門家のアドバイスを受けることも一つの手段です。

相続税には控除・特例制度がある

相続税計算時に適用される主な控除や特例制度を適切に活用することで、相続税の負担を軽減することができます。

相続が発生した際には、これらの制度を確認し、適用できるものがあるか検討しましょう。

主な控除・特例制度

利用可能なケース

内容

相続税の基礎控除

すべての相続人

相続税の計算において、3,000万円+(600万円×法定相続人数)の控除が可能

小規模宅地等の特例

自宅や事業用地等を相続するケース

自宅用地や事業用地など特定の用途に供されている小規模宅地について、相続税の評価額から最大80%まで減額することができる

配偶者控除

配偶者が相続するケース

配偶者に対しては、最大1億6,000万円までの相続財産が非課税となる

未成年者控除

未成年の相続人がいるケース

未成年の相続人1人につき、特定の額が相続税の課税価格から控除される

障害者控除

障害をもつ相続人がいるケース

障害をもつ相続人に対して、特定の額が相続税の課税価格から控除される

相次相続控除

短期間内に再度相続が発生したケース

前回の相続から一定期間内に再度相続が発生した場合、前回の相続で支払った相続税額を一部控除することができる

登録免許税

マンションの相続登記をおこなう際には、登録免許税の支払いが必要です。

登録免許税とは、不動産の名義変更を公的に記録するためのもので、不動産の価値に応じた税率が適用されます。

相続登記は義務ではありませんでしたが、2024年4月から義務化されるため、相続が発生した際には登録免許税の支払いが必須になります。

相続登記を怠ると過料が課されるおそれもあるため、注意しましょう。

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【計算例】マンションの相続でかかる相続税の計算方法

マンションを相続する際には、土地と建物の評価からはじめ、利用可能な控除や特例を適用したうえで相続税の課税遺産総額を算出します。

各相続人に課税される遺産額と相続税額を明らかにするために、以下で具体的な計算方法について解説します。

①土地・建物の評価額を計算する

相続税の計算において、土地と建物の評価額を正確に算出することは非常に重要です。

土地と建物の評価額は相続税の課税基準となるため、適切な方法で評価する必要があります。

土地は路線価や倍率表を用いて、建物は固定資産税評価額をもとに評価するのが一般的です。

以下では、土地と建物の評価方法について、具体的な計算式とともに解説します。

土地部分の評価方法

土地の評価には、国税庁が公表する路線価をもとに計算します。

路線価は、土地が位置する地域の1平方メートルあたりの価格を示しており、この価格に土地の面積を乗じることで土地の評価額を算出します。計算式は以下のとおりです。

  • 土地の評価額=路線価×土地の面積

倍率表を用いる場合、地域ごとの固定資産税評価額に適用される倍率で、土地の相続税評価額を求めます

建物部分の評価方法

建物の評価額は、固定資産税評価額をもとに計算します。

固定資産税評価額とは、市町村が定める建物の価値を反映したもので、この額をそのまま建物の相続税評価額として使用するのが一般的です。

固定資産税の通知書に記載されている額を参照して、建物の評価額について把握しておきましょう。

②利用できる控除・特例を確認する

相続税計算時には、基礎控除や小規模宅地の特例、配偶者控除など、さまざまな控除・特例が適用されます。

これらの控除や特例を適用することで、課税対象となる遺産額を減少させ、相続税の負担を軽減できます。

控除・特例

概要

基礎控除

すべての相続人に適用される控除で、相続税の計算において、3,000万円+(600万円×法定相続人数)の控除が可能

小規模宅地の特例

自宅用地や事業用地など特定の用途に供されている小規模宅地について、相続税の評価額から最大80%まで減額できる特例

配偶者控除

配偶者に対して最大1億6,000万円までの相続財産が非課税となる控除

③相続税の課税遺産総額を計算する

相続税の課税遺産総額とは、土地と建物の評価額を合算して適用可能な控除・特例を差し引いた後の金額を指します。

この総額から、各相続人の法定相続分に応じた遺産額を算出します。課税遺産総額の計算式は、以下のとおりです。

  • 課税遺産総額=土地の評価額+建物の評価額-適用控除額

④各相続人の課税対象となる遺産額を計算する

相続人ごとに、法定相続分をもとにして課税遺産総額から各自の相続分を計算します。

遺産額を計算する過程で、特定の相続人に対する控除の適用などについても考慮する必要があるため注意が必要です。

⑤各相続人の相続税額を計算する

最終的に、各相続人の課税対象となる遺産額に対して相続税率を適用し、相続税額を算出します。

適用される相続税率は課税遺産額の規模によって異なり、税額の計算には累進課税が適用されます。

  • 相続税額=課税対象遺産額×相続税率

マンションを相続したあとの活用方法

マンションを相続した後は、活用方法を決定することが重要です。活用方法の選択肢は大きく分けて、自分で住む・他人に貸し出す・売却するという3つが挙げられます。

それぞれの選択にはメリットとデメリットがあるため、相続人の状況や将来計画に応じて最適な選択をしましょう。

相続人が住む

相続したマンションを賃貸には出さず、自分が住むという選択をするケースでは、以下のようなメリットとデメリットが考えられます。

メリット

・故人との思い出が詰まったマンションに住むことで、故人を偲ぶことができる

・新たに住居を探す手間や費用がかからない

デメリット

・マンションの立地や間取りが相続人のライフスタイルに合わない場合がある

・故人の住んでいたマンションに住むことで、精神的な負担を感じる可能性がある

ほかの人に貸し出す

相続したマンションに自分が住むのではなく賃貸として他人に貸し出すケースでは、以下のメリットとデメリットがあります。

メリット

・定期的な賃貸収入を得ることができ、相続財産を有効活用できる

・マンションの維持管理をおこなうことで資産価値の維持・向上が期待できる

デメリット

・賃貸管理には手間がかかり、トラブルが発生する可能性もある

・空室リスクや賃料の市場変動リスクを考慮する必要がある

売却する

相続したマンションを手元に残さず売却するという選択をするケースでは、以下のメリットとデメリットが考えられます。

メリット

・一時的に大きな現金を手に入れることができ、相続税の支払いや他の投資に利用できる

・維持管理の手間や費用から解放される

デメリット

・売却時の市場価格が低迷していると、期待した額より低い価格での売却となるリスクがある

・売却後はそのマンションを利用する権利を失うため、後悔するリスクがある

マンションを相続する場合の注意点

マンションの相続は、故人の意志や相続人の状況に応じて複雑な手続きが必要になります。

2024年4月1日からは相続登記が義務化され、相続税の申告や支払い、さらには故人が家賃収入を得ていた場合の準確定申告など、多岐にわたる注意が必要です。

以下では、特に重要なポイントを3つ紹介します。

2024年4月1日以降は相続登記が義務化される

相続登記は、故人の不動産を相続人が法的に承継するために必要な手続きです。

従来は義務ではありませんでしたが、2024年4月1日からは相続発生後から3年以内の相続登記が義務化されます。

登記を怠ると不動産の売却や贈与ができなくなるだけでなく、将来的に相続人間でのトラブルの原因となるおそれもあります。

相続税を期限内に支払えない場合は延納や物納を検討する

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日から10カ月以内です。相続税が支払えない場合は、延納や物納の制度を利用することが可能です。

  • 延納:税金の支払いを分割しておこなう方法
  • 物納:不動産などの財産を税金として納付する方法

延納や物納といった制度を活用することで、現金での一括支払いが難しい場合でも対応が可能になります。

被相続人に家賃収入があった場合は準確定申告が必要

故人が生前、賃貸マンションなどから家賃収入を得ていたケースでは、相続人は故人の死亡後に準確定申告をおこなう必要があります。

準確定申告は、故人の死亡した年の1月1日から死亡日までの所得に対しておこなう申告で、死亡日から4カ月以内におこなわなければなりません

この申告を怠ると、税金の追徴や罰金が課されるおそれがあります。

さいごに|マンションの相続で困ったら専門家に相談を

本記事では、マンションの相続手続きにおける基本的な流れや、相続でかかる費用・税金などを解説しました。

マンションの相続には、複雑な手続きが必要になるほか税金の計算が必須です。

ただし、実際の手続きは個々の状況によって異なるため、悩んでしまう方も少なくありません。

税金の負担を最小限に抑えながら財産を適切に引き継ぐためにも、マンションを相続する際には専門家に相談することをおすすめします。

専門家による適切なアドバイスを受けることで、将来の不安を解消し、家族への財産継承をスムーズにおこなうことができるでしょう。

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この記事の監修者
みとみらい法律事務所
後藤 直樹 (茨城県弁護士会)
弁護士歴30年以上。遺産分割や中小企業の跡継ぎトラブルまで、幅広い相続問題に対応。また、分割が複雑な不動産も長年の弁護士経験から他士業との連携を活かし、トータルサポートで問題の解決へと導く。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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