ベンナビ相続 > 相続コラム > 土地・不動産相続 > 田舎の土地を相続放棄したい!具体的な手続きの流れとポイントについて詳しく解説
更新日:

田舎の土地を相続放棄したい!具体的な手続きの流れとポイントについて詳しく解説

長谷川 達紀・日吉 加奈恵
監修記事
田舎の土地を相続放棄したい!具体的な手続きの流れとポイントについて詳しく解説
注目 不動産相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
電話・メールOK
夜間・休日も対応
累計相談数
21万件超
不動産相続が得意な
弁護士から探せる
不動産相続が得意
な弁護士を探す

被相続人名義の田舎の土地の資産価値が低く、有効活用の方法も簡単に見つからないときには、相続放棄の判断をするのも選択肢のひとつです。

ただし、相続放棄については民法でさまざまなルールが定められています。また、相続放棄をすることでほかの遺産も一切承継できなくなってしまいます。

そのため、相続放棄をする際には、事前に手続きの流れや法的効果、注意事項を押さえて、慎重な判断をしなければなりません。

そこでこの記事では、相続放棄をする方法、相続放棄をするときに重視するべきポイント、相続放棄を検討しているときに弁護士に相談するメリットなどについてわかりやすく解説します。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
不動産の相続が得意な弁護士を探す

相続放棄によって「田舎の土地」の相続を回避する流れ

まずは、田舎の土地を相続放棄するときの流れについて解説します。

  1. 相続放棄申述書などを作成する
  2. 家庭裁判所に申述書などを提出する
  3. 照会書に必要事項を記入し返送する
  4. 相続放棄申述受理通知書を受け取る

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

1.相続放棄申述書などを作成する

まずは、相続放棄手続きに必要な書類の準備から始めましょう。

相続放棄に必要な必要書類は、主に相続放棄申述書と申立添付書類の2つにわかれます。

相続放棄申述書

相続放棄をするには、相続放棄申述書が欠かせません。

相続放棄申述書は以下の裁判所のホームページからダウンロードできるので、リンク先の記載例を参考にしながら作成をしてください。

申立添付書類

相続放棄をする際には、申述者の地位ごとに定められた申立添付書類が必要です。

共通

  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本

申述人が被相続人の配偶者の場合

  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の子またはその代襲者の場合(第一順位相続人)

  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が台州相続人の場合、被代襲者の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の父母・祖父母等の場合(第二順位相続人)

  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子及び代襲者で死亡している者がいる場合、その子及び代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属で死亡している者がいる場合、その直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

申述人が被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者の場合(第三順位相続人)

  • 被相続人の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の子及び代襲者で死亡している者がいる場合、その子及び代襲者の出生時から死亡時までの全ての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 申述人が台州相続人の場合、被代襲者の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

2.家庭裁判所に申述書などを提出する

必要書類の準備が終わったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述をおこないます。

申述をする際には、必要書類とあわせて、申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。

申述先の管轄裁判所の連絡先については、「裁判所の管轄区域|裁判所」から確認してください。

また、連絡用の郵便切手の金額と内訳は、裁判所により異なりますので、事前に管轄の裁判所に確認するようにしましょう。

3.照会書に必要事項を記入し返送する

家庭裁判所に対して相続放棄の申述をおこなうと、申述日から1週間〜2週間以内に、裁判所から相続放棄照会書が郵送されます。

相続放棄照会書とは、相続放棄の申述をした人が本当に相続放棄をする意思を有しているかを裁判所が確認するための書類のことです。

相続放棄の法的効果について丁寧な説明が記載されており、今回発生した相続について本当に相続放棄する意思があるかの最終的な意思確認がおこなわれます。

なお、相続放棄照会書には相続放棄回答書が同封されています。

指定された箇所にチェックを入れたり必要事項を記入したりしたうえで、裁判所に返送をしてください。

4.相続放棄申述受理通知書を受け取る

相続放棄回答書を返送し、家庭裁判所が相続放棄を有効なものだと判断した場合には、裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付されます。

相続放棄申述受理通知書が手元に届くのは、相続放棄回答書を返送してから10日後が目安です。この段階で、相続放棄手続きは終了します。

被相続人が生前負担した債務を取り立てるために債権者から連絡があったときには、相続放棄申述受理書を提示すれば相続放棄の事実を証明できるので、借金を返済しなくて済みます。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
不動産の相続が得意な弁護士を探す

田舎の土地があって相続放棄をする際の4つのポイント

田舎の土地が相続財産に含まれている場合において相続放棄をするときのポイントを4つ解説します。

  • 相続放棄の期限が到来するまでに手続きに着手する
  • ほかの相続人に相続放棄する旨を伝える
  • 申請後に相続放棄受理証明書を取得する
  • 可能であれば弁護士に相談・依頼する

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

1.できる限り早く相続放棄の手続きを始める

以下のように、相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヵ月以内にする必要があると定められています。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

(法定単純承認)

第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

引用元:民法|e-Gov法令検索

この期間内に相続放棄をしなければ、単純承認をしたとみなされるので注意しましょう。

相続放棄の手続きは合計1ヵ月程度はかかるので、その期間を加味したうえで、できるだけ早いタイミングで相続放棄するか否かの判断を下して、相続放棄手続きに着手するのが賢明です。

なお、相続財産の調査が間に合わないなどの事情がある場合には、期間伸長の申立てによって、相続放棄の猶予期間を伸ばすことができます。

ただし、単に「手続きを忘れていた」という理由では期間伸長が認められないこともあるので注意しましょう。

2.ほかの相続人に相続放棄のことを伝える

相続放棄をしたからといって、ほかの相続人にその旨を伝える法的義務はありません。

ただし、相続人のひとりが相続放棄をすると、ほかの相続人の判断にも一定の影響を与えるのが実情です。

たとえば、「全ての相続人が相続をするなら被相続人の負債を按分できるので相続を選択するものの、相続放棄をする相続人が発生して負債の負担割合が大きくなるなら相続をしたくない」と判断する相続人にとっては、ひとりの相続人の相続放棄の判断は重要な意味を有するでしょう。

そのため、相続放棄をする場合には、ほかの相続人にもその旨を連絡したほうが親切だと考えられます。

3.申請後に相続放棄申述受理証明書を取得する

相続放棄の手続きが終了した場合には、相続放棄申述受理証明書を取得しておきましょう。

相続放棄の申述が終了すると、裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付されます。相続放棄申述受理通知書でも合法的に相続放棄があった事実を証明できますが、相続放棄申述受理通知書は1回しか発行されません。

一方、相続放棄申述受理証明書は、申請すれば何度でも発行可能です。

たとえば、相続が発生したときには、債権者である金融機関から借金やローンの返済を求める通知書が送付されたり、不動産の名義変更手続きをしなければいけなかったりします。

また、相続放棄をした相続人は、その都度相続放棄をした事実を証明しなければいけません。

これらの手続きなどにスムーズに対応するには、相続放棄申述受理証明書を複数部発行して手元に保管しておくことを強くおすすめします。

4.手続きが難しい場合は弁護士に依頼する

相続放棄を検討しているときには、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談してください。

遺産相続問題が得意な弁護士に相談・依頼をすれば、以下のメリットを得られるでしょう。

  • 相続財産の構成内容や相続人の相関図を客観的に分析して、相続放棄をするべきかどうかアドバイスをしてくれる
  • 相続放棄をするときに必要な書類を用意してくれる
  • 裁判所とのやり取りやほかの相続人・利害関係者への連絡などを代理してくれる
  • 相続放棄の期間伸長の申立てにも対応してくれる
  • 相続放棄後のトラブルにも対応してくれる

相続放棄は、一度おこなうと原則撤回や取り消しができないため、弁護士などの専門家に相談しながら慎重に判断することが大切です。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
不動産の相続が得意な弁護士を探す

田舎の土地があって相続放棄をする場合の3つの注意点

相続財産に田舎の土地が含まれるケースで相続放棄をするときの注意点を3つ紹介します。

  • ほかの相続財産も一切相続できなくなる
  • 現に占有している場合は管理責任を負う
  • 必ずしも相続放棄が認められるわけではない

それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。

1.ほかの相続財産も一切相続できなくなる

相続放棄をすると、全ての相続財産を承継できなくなります。

「被相続人の負債は相続放棄したいが、預貯金だけは相続したい」「使い道のない田舎の土地だけは相続放棄するが、土地以外の財産は相続したい」などの取捨選択は許されません。

そのため、相続放棄の判断をするときには、本当に全ての遺産を放棄しても問題ないかを慎重に検討してください。

2.現に占有している場合は管理責任を負う

適法に相続放棄手続きを終えて、田舎の土地を手放したとしても、土地上の建物などを現に占有している場合には、管理責任を負担しなければいけません。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

引用元:民法|e-Gov法令検索

たとえば、田舎の土地に建てられた住居を適切に管理しておらず、屋根や外壁が崩れて通行人をけがさせてしまった場合には、治療費や慰謝料などの賠償責任を問われます。

そのため、田舎の土地を相続放棄して、その土地をめぐる法的責任から完全に逃れたいと考えるのなら、できるだけ早いタイミングで占有しない状況を作り出すべきでしょう。

3.必ずしも相続放棄が認められるわけではない

相続放棄の申述をしたからといって、以下のような事情が存在する場合には、相続放棄が認められない可能性があります。

  • 相続財産の使い込み、譲渡、売却、担保権の設定
  • 被相続人名義の預貯金の払い戻し、解約
  • 遺品整理に参加して遺品を持ち帰った
  • 遺産分割協議に参加した
  • 不動産、自動車、携帯電話など、被相続人の名義変更をした
  • 被相続人名義の株式の議決権の行使 など

相続放棄が認められない場合には、単純承認・限定承認について検討しなければいけません。

また、法定単純承認に該当するケースでは単純承認を回避できない以上、遺産分割協議で希望通りの相続を実現できるように話し合いを進めるべきでしょう。

さいごに|田舎の土地の相続放棄を考えているなら弁護士に一度相談を!

田舎の土地を相続放棄するかどうかを迷っているなら、念のために一度は弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談をすれば、遺産をめぐる状況を冷静に分析して、田舎の土地を相続放棄するべきか否かについて判断をしてくれます。また、田舎の土地の資産価値や立地条件などを踏まえて、現実的な有効活用の方法があるかも提案してくれるでしょう。

ベンナビ相続では、田舎の土地をめぐる相続問題への対応が得意な弁護士を紹介中です。法律事務所の所在地、具体的な相談内容、初回の相談料無料などのサービス面から24時間無料で専門家を検索できるので、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士までお問い合わせください。

今すぐ無料相談電話相談OKの弁護士が見つかる!
ベンナビ相続で
不動産の相続が得意な弁護士を探す
この記事をシェアする
この記事の監修者
新静岡駅前法律事務所
長谷川 達紀・日吉 加奈恵 (静岡県弁護士会)
幅広い相続に関するご相談に対応し、確かな実績と経験から、依頼者様の納得のいく解決に導くよう尽力しています。不動産の相続を司法書士などと連携して一貫して対応することも可能です。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

土地・不動産相続に関する人気コラム

土地・不動産相続に関する新着コラム

相談内容から弁護士を探す
相談員

相談内容を選択してください

金アイコン
もらえる慰謝料を増額したい方
弁護士の方はこちら
損をしない相続は弁護士にご相談を|本来もらえる相続対策も、弁護士が適正に判断|あなたの状況に合った損をしない解決方法を、遺産相続に強い弁護士がアドバイスいたします。