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老朽化アパートの相続はどうする?損をしないため知っておくべき基礎知識を解説

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相続財産の中に老朽化したアパートが含まれている場合、「そのまま相続すべきか」「売却や建て替えを検討すべきか」と悩む方は多いのではないでしょうか。

老朽化した建物の維持管理には多額の修繕費がかかるほか、空室リスクや入居者からのクレーム対応など、相続人にとって大きな負担となることも少なくありません。

一方で、適切な判断をすれば資産価値を守りながら収益を得られる可能性もあります。

そこで本記事では、老朽化したアパートを相続した際に直面する課題やリスク、活用・売却の選択肢、判断のポイントについてわかりやすく解説します。

老朽化したアパートの相続で悩んでいる方は、最適な選択をするための参考にしてください。

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老朽化したアパートを相続する主なリスク・注意点

老朽化したアパートの相続には、以下のようなリスク・注意点があります

  • 修繕費がかさむ
  • 空き室が多くなりやすく収益性が悪くなりがち
  • 新築のアパートに比べ相続税が高くなりやすい
  • 売却も難しくなる
  • 固定資産税を毎年支払わなくてはならない

それぞれの注意点について、詳しく見ていきましょう。

修繕費がかさむ

老朽化したアパートを相続する最大のリスクは、想定外に修繕費用がかかる可能性があることです。

建物は時間とともに必ず劣化が進み、集合住宅では外壁や屋根といった大規模修繕から、給湯器やエアコンなどの設備交換まで、継続的に多額の出費が発生します。

外壁塗装や防水工事は数百万円~一千万円を超える場合もあり、複数の部屋で設備の交換時期が重なればさらに大きな負担となるでしょう。

これらの費用を計画的に準備していなければ、突然の出費で資金繰りが苦しくなり、相続後のアパート賃貸経営にも影響を及ぼしかねません

そのため、老朽化アパートを相続する際には、修繕計画と費用の見通しを立て、長期的に備えることが欠かせない注意点といえるでしょう。

空き室が多くなりやすく収益性が悪くなりがち

老朽化したアパートを相続すると、空室リスクの高まりによって収益性が大きく低下する危険があります

入居者は築浅で設備が整った物件を好むため、古いアパートはどうしても敬遠されがちです。

その結果、入居が決まらずに空室が増え、家賃収入が減少します。

多くのオーナーは空室を埋めるために家賃を下げざるを得ませんが、それでも必ず入居が決まるとは限らず、収益性はさらに悪化しかねません。

加えて、修繕費がかさむ中で家賃収入が減るという悪循環に陥り、経営が厳しくなるケースも少なくないのです。

新築のアパートに比べ相続税が高くなる場合がある

老朽化したアパートを相続すると、新築よりも相続税が高くなるリスクがある点に注意が必要です。

多くの方は「古い建物だから評価も低く税金も安いだろう」と考えがちですが、相続税は市場価格ではなく「相続税評価額」で計算されます。

そして、アパートなどの賃貸物件には「借家権割合」による減額制度が適用されますが、その効果は入居率(賃貸割合)に大きく左右されます。

空室が多い=賃貸割合が低いと減額幅が小さくなり、築浅満室より評価が高くなることもあります。

反対に満室に近づけば減額は大きくなります

たとえば、アパートが満室なら評価額を30%下げられますが、半分空室であれば減額幅は15%にとどまります。

そのため、空室の多い老朽化アパートは、満室経営の新築アパートよりも評価額が高く算出され、結果として相続税の負担が重くなるという逆転現象が起こり得るのです。

売却も難しくなる

老朽化したアパートは、「売りたいのに売れない」状況に陥りやすいという大きなリスクがあります。

また、木造アパートは法定耐用年数(22年)を超えると金融機関から融資がつきにくく、購入できる層が現金買いに限られてしまいます

さらに、旧耐震基準で建てられた建物は安全性への不安から敬遠されやすく、空室の多さや修繕費の重さも収益性の低下につながります。

加えて、売却後に欠陥が発覚すれば「契約不適合責任」として売主が修繕費を負担するリスクも高まります。

こうした要因が重なり、老朽化アパートは思うように売却が進まず、出口戦略が難しくなる点に注意が必要です。

固定資産税を毎年支払わなくてはならない

老朽化したアパートを相続すると、固定資産税という避けられないコストが毎年発生する点に注意が必要です。

入居者がいようといまいと、所有している限り固定資産税や都市計画税(対象地域)が課されます。

さらに重要なのが「住宅用地の特例」です。

アパートが建っている場合、土地の評価額が最大6分の1に軽減されますが、建物を取り壊して更地にするとこの特例が使えなくなり、課税標準が上がるため税負担が大きく増える可能性があります。

税額が最大6倍に跳ね上がることもあります

つまり、経営が赤字だからと安易に解体すると「解体の罠」に陥り、税負担が重くなるリスクがあるのです。

相続後の判断を誤らないためにも、固定資産税の仕組みと特例の有無を正しく理解しておくことが不可欠です。

老朽化したアパートを相続する際にあらかじめチェックすべき主なポイント

老朽化したアパートの相続にはさまざまなリスクが生じるため、相続をするかどうかを判断する際はいくつかのポイントをチェックしなければなりません。

具体的なチェックポイントは、以下の4つです。

  • 空き室や収益の状況
  • アパートの状態や大規模修繕の時期・金額
  • ローンの残高
  • 同じ地域の賃貸需要

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

空き室や収益の状況

まず、アパートの経営が現在どのような状態にあるのかを確認しましょう。

そのために重要なのが「レントロール(賃貸条件一覧表)」です。

アパートを不動産会社が管理している場合は、連絡して郵送してもらいましょう。

レントロールからは、以下の情報が読み取れます。

  • 各部屋の家賃と共益費:部屋ごとに家賃設定がどうなっているか
  • 入居状況:「入居中」か「空室」か、全体の入居率
  • 契約開始日:各入居者がいつから住んでいるか

また、レントロールを分析する際には、以下のような点に注意しましょう。

  • 家賃のばらつき:同じ間取りなのに、最近入居した人のほうが長く住んでいる人よりも家賃が安くなっている場合、周辺の家賃相場が下落している可能性があります
  • 特定の入居者への依存:特定の法人が社宅として多くの部屋を借り上げている場合、一気に大量の空室が発生するリスクがあります
  • 空室の想定家賃:空室の「想定家賃」が、周辺の相場と比べて不自然に高い場合、実態に即していない可能性があるので注意が必要です

アパートの状態や大規模修繕の時期・金額

相続するアパートについて、今後にいつどれくらいの修繕費がかかるかを把握することも大切です。

ここで確認すべき書類は「長期修繕計画書」と「過去の修繕履歴」です。

これらの書類では、以下のような視点で分析してみましょう。

  • 資金計画の妥当性:長期修繕計画書で積立金がマイナスになる時期がある場合、相続後のオーナーに負担が発生する可能性があります
  • 計画の見直し状況:長期修繕計画が一度も見直されていない場合、想定している工事費用と実際にかかる費用に大きな乖離がある可能性があります
  • 先送りされた工事:計画上では実施済みのはずの修繕が、実際にはおこなわれていない場合、近い将来に大きな負担が発生する可能性があります

ローンの残高

老朽化したアパートを相続する際は、ローン残高の確認も非常に重要です。

相続ではプラス財産だけでなく借金などのマイナスの財産も引き継ぐため、ローンが残っていれば返済義務も相続人に移ります。

まずは契約書や返済予定表を確認し、わからない場合は金融機関に問い合わせて残高を把握しましょう。

また、特に重要なのが「団体信用生命保険(団信)」の有無です。

契約者が亡くなった時点で団信に加入していれば、残りのローンは保険金で完済され、残高はゼロになります

これにより、赤字経営だったアパートが一転して黒字になるケースもあります。

しかし、団信未加入であれば返済負担が続くため、経営判断に大きく影響してしまいます。

団信の保険金は、商品ごとに請求期限・要件が異なる場合があります。

請求には時効もあるため、相続が発生したらすぐに確認することが不可欠です。

同じ地域の賃貸需要

最後に、アパートが建っている場所の価値を見極めます。

建物が古くても、立地が良ければ活路は見出せます。

地域の賃貸需要を調べる方法はいくつかあります。

  • インターネットで調べる:SUUMOやHOME'Sといった不動産ポータルサイトで、アパートの最寄り駅や地域名で検索します。
    競合となる物件がどれくらいあるか、家賃はいくらで募集されているか、などを確認して相場観を養います。
  • 自治体の情報を確認する:市区町村のWebサイトで、人口の増減(人口動態)や、将来の都市計画(再開発計画)などを調べます。
    新しい駅の開業や企業の誘致計画があれば将来性は明るいですが、逆であれば需要の先細りが懸念されます。
  • 現地を歩いてみる:実際に自分の足で周辺を歩いてみましょう。
    駅からの道のり、スーパーやコンビニの利便性、街の雰囲気や治安など、データだけではわからない「住みやすさ」を肌で感じることが大切です。
  • プロに聞く:地域の不動産会社に相談してみましょう。
    彼らは日々の業務を通じて、どんな人が部屋を探しているのか、どんな設備が人気なのかといった、最もリアルで新鮮な情報をもっています。

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老朽化したアパートを相続したらどうする?考えられる主な選択肢

ここまでを踏まえて老朽化したアパートを相続することを決めた場合、相続後の選択肢としては大きく以下4つがあります。

  1. アパート経営を引き継ぐ
  2. アパートを建て替える・リノベーションする
  3. アパートを取り壊し別の用途で活用する
  4. アパートを売却する

どの選択肢が最適かは、アパートの状態だけでなく、現在の資金状況、時間、そしてアパート経営に対する考え方によって大きく異なります。

それぞれのメリット・デメリットを比較し、現在の状況に最も合う道を探っていきましょう。

アパート経営を引き継ぐ

故人の事業をそのまま受け継ぎ、大家さんとしてアパート経営を続けていく選択肢です。

メリット
  • 空室が少なく、収支がプラスであれば、毎月安定した家賃収入を得られる可能性があります。
  • 親が残してくれた大切な資産を手放すことなく、持ち続けることができます。
  • 減価償却費や固定資産税などを経費として計上できるため、所得税の節税につながることがあります。
デメリット
  • 「修繕費」「空室」「税金」といったリスクを全て自身で背負うことになります。
  • 大規模修繕に備えた資金や、空室期間中の経費を賄うための手元資金がなければ、経営はすぐに立ち行かなくなります。
  • 大家業は、入居者からのクレーム対応や家賃滞納の督促など、想像以上に手間と時間がかかる仕事です。

アパートを建て替える・リノベーションする

現状のままでは競争力が低いと判断した場合に、投資をおこなって物件の価値を高める戦略です。

特に、建物の構造自体はまだしっかりしており、部分的な改修で魅力が向上するならリノベーションを検討します。

【リノベーション(大規模改修)】

メリット
  • 建て替えに比べて費用が安く、工期も短い傾向にあります。
  • ターゲットを絞った改修で、家賃アップや入居率の向上が期待できます。
デメリット
  • 建物の基礎や構造体といった根本的な部分は古いままです。
  • 近い将来、別の箇所で大規模な修繕が必要になる可能性があります。

一方、建物が旧耐震基準である、構造的な問題がある、あるいは大規模な改修が必要な場合は、建て替えを検討するのが合理的です。

【建て替え】

メリット
  • 最新の設備や間取りを取り入れた、競争力の高い新築物件になります。
  • 家賃を高く設定でき、長期的に安定した収益が見込めます。
デメリット
  • 解体費用と建築費用で、非常に高額な資金が必要になります。
  • また、現在の入居者に退去してもらう「立ち退き交渉」が必要で、時間と費用がかかることがあります。

アパートを取り壊し別の用途で活用する

「建物は負債だが土地は資産である」と割り切り、アパートを取り壊して土地を別の形で活用する選択肢です。

解体後の土地の活用方法には、以下のようなものがあります。

  • 駐車場経営:初期投資が比較的少なく、管理の手間も少ないのが魅力です。
  • 更地として売却:問題の多い建物をなくし、シンプルな「土地」として売却します。
    老朽化アパートのままよりも買い手がつきやすい場合があります。
  • そのほかの活用法:戸建て住宅を建てる、事業者に土地を貸す(定期借地)など、さまざまな可能性があります。

ただし、アパートを取り壊すと「住宅用地の特例」がなくなり、土地の固定資産税が大幅に上がることには注意が必要です。

また、建物を解体するのにも費用がかかります。

アパートの規模では、数百万円単位の費用を見込んでおきましょう。

アパートを売却する

売却は、アパート経営に関わる全ての責任とリスクから解放され、資産を現金化する出口戦略です。

メリット
  • 売却が完了すれば、修繕、空室、税金、入居者トラブルといった、大家としての全ての悩みから解放されます。
  • まとまった現金が手に入り、複数の相続人で公平に分割することが容易になります。
デメリット
  • 老朽化アパートは買い手がつきにくく、希望の価格で売ることは困難な場合が多いです。
  • 売却後に見つかった欠陥について、責任を問われる可能性があります(契約不適合責任)。

売却には、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」の2つの方法があります。

買取は仲介よりも売却価格が低くなる傾向にありますが、スピーディーに現金化でき、契約不適合責任が免除されることが多いというメリットがあります。

老朽化したアパートの相続は誰に相談すればよい?

老朽化アパートの相続は、不動産、税金、法律など、さまざまな専門知識が絡み合うため、一人で全てを正しく判断するのは困難です。

そのため、悩んでいる内容ごとに適切な専門家へ相談し、アドバイスをもらうことをおすすめします。

以下では、悩み別に相談すべき専門家をまとめましたので、ぜひ相談の際の参考にしてください。

こんなことで悩んでいたら… 相談すべき専門家
「このアパート、そもそも価値があるの?売れるの?」
「アパート経営を誰かに任せたい」
不動産会社 →最も身近で、最初の相談窓口として適しています。
売却査定や賃貸管理の代行などを依頼できます。
「相続税はいくらかかる?」
「家賃収入の確定申告はどうするの?」
税理士 →相続税の申告や、アパート経営を続ける場合の確定申告など、税金に関する問題の専門家です。
「アパートの名義変更(相続登記)をしたい」
「相続人同士で話し合った内容を正式な書類にしたい」
司法書士 →相続したアパートの名義を自分に変更する手続き(相続登記)の専門家です。
相続登記は2024年4月から義務化されています。
「相続人同士で揉めてしまって、話がまとまらない」
「入居者との間で法的なトラブルが起きている」
弁護士 →相続人間で意見が対立した場合や、入居者との法的なトラブルが発生した場合など、「争いごと」の解決を専門とします。
「アパートの建て替えやリノベーションを具体的に考えたい」 建設会社・ハウスメーカー →建て替えやリノベーションを検討する際に、具体的なプランの提案と見積もりを出してくれます。

また、専門家を選ぶ際には、「相続を得意としているか」「実績は豊富か」「費用は明確か」といった点を確認し、信頼できる相談先を選びましょう。

さいごに|老朽化アパートの相続は複雑な問題が絡み合う!専門家に相談を

老朽化したアパートの相続は、単なる財産の引き継ぎではありません

修繕費の負担、収益性の悪化、予想外に高くなる可能性のある相続税、そして売却の難しさなど、多くの課題が複雑に絡み合っています。

本記事では、それらのリスクを具体的に理解し、現在の状況を把握するためのチェックポイント、そして将来に向けた4つの選択肢があることを解説しました。

最も大切なことは、「唯一の正解はない」ということです。

最適な解決策は、相続したアパートの立地や状態、そして何よりも、現在の経済状況や将来設計によって決まります。

次にやるべきことは、レントロールや修繕計画書などの書類を確認し、ご自身の状況を把握すること。

そして、その情報をもって、信頼できる専門家へ相談することです。

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この記事の監修者
横浜平和法律事務所
大石 誠 (神奈川県弁護士会)
相続問題の解決実績多数。相続診断士や終活カウンセラーの資格を有し、ご相談者様のお悩み解決に向けて親身にサポートしています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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