このように、法定相続情報一覧図について疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
法定相続情報一覧図とは、被相続人の相続関係をまとめた証明書のことをいいます。
相続手続きでは、相続登記や預貯金口座の名義変更、相続税の申告など多岐にわたり、手続きごとに戸籍謄本が必要です。
しかし、同時進行でおこなうには戸籍の束が複数必要になることもあり、戸籍を1通ずつしか取得していなければ手続きがなかなか進まないでしょう。
その点、法定相続情報一覧図を取得すれば、戸籍の束の代わりに相続関係を証明する書類として使うことができます。
何通か取得しておけば複数の相続手続きを同時進行でおこなえるため、相続手続きをスムーズに進めやすくなるでしょう。
本記事では、法定相続情報一覧図の基本的な役割から作成・取得の流れ、必要書類のポイントまでわかりやすく解説します。
記事を読むことで、法定相続情報一覧図を活用した効率的な相続手続きの進め方が理解でき、手続きの負担を軽減できるでしょう。
法定相続情報一覧図とは、被相続人の相続関係をまとめた証明書のことをいいます。
見た目は家系図と似ていますが、公的な手続きには直接利用できない家系図とは違い、相続登記や預貯金の解約などさまざまな場面で公的書類として利用可能です。
これまで、相続手続きをおこなう際には被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本を一式揃える必要があり、同時に複数の手続きをおこなう場合は何セットも戸籍を用意する必要がありました。
しかし、法定相続情報一覧図があれば戸籍謄本を提出する必要がなくなるため、さまざまな手続きを同時進行でおこなえるようになったのです。
なお、法定相続情報一覧図には、以下の2つの意味合いがあります。
法定相続情報一覧図は、まずは申出人が作成します。
その後、作成した法定相続情報一覧図を法務局に提出し、登記官の認証を受けたあと、認証文が入ったものが写しとして交付される仕組みです。
法定相続情報一覧図を取得する前に、基本的な情報を知っておく必要があります。
ここでは、申出人や手続き完了までにかかる期間、交付手数料について解説します。
法定相続情報一覧図の申出ができるのは、被相続人の相続人やその代理人です。
具体的には、以下の人が申出をおこなえます。
なお、親族とは民法725条において以下のような人が該当するとされています。
また、資格者代理人には、以下のような専門家が該当します。
ここでの注意点は、戸籍謄本で相続関係が全て証明できるケースでなければならない点です。
戸籍謄本で相続関係を証明できない場合、法定相続情報一覧図は取得できません。
また、法定相続情報一覧図は戸籍をもとに作成するため、被相続人・相続人が日本国籍を有している必要があります。
帰化によって被相続人が日本国籍を取得したケースであっても、出生からの戸籍が存在しないため法定相続情報一覧図は作成できません。
被相続人・相続人の中に外国籍の人がいるときは、そもそも制度を利用できない点に注意しましょう。
法定相続情報一覧図の手続きは1週間〜10日程度で完了するケースが多いですが、早ければ書類を提出した翌日に完了することもあります。遅くとも、2週間程度で取得できるでしょう。
ただし、法務局の混み具合や書類に不備があるかどうかによっても異なるため、いつ完了するか気になるなら法務局に確認することをおすすめします。
相続手続きには期限がものも多いので、余裕をもって法定相続情報一覧図を取得しましょう。
法定相続情報一覧図の交付手数料は無料です。どれだけ取得しても費用はかかりません。
ただし、申出や受け取りを郵送でおこなうと、その分の郵送料がかかります。
また、取得の際には戸籍一式が必要になり、戸籍・除籍・改製原戸籍謄本の発行手数料がかかります。
さらに、専門家に手続きを依頼した場合は、事務所によっても異なりますが1万円〜10万円程度の費用がかかるでしょう。
法定相続情報一覧図を作成し、法務局で認証を受けるまでの流れは以下の4ステップです。
ここからは、ステップごとのポイントを解説します。
まずは、戸籍謄本などの必要書類を集めます。
申出に必要な書類は以下のとおりです。
身分証明書については、上記のもの以外でも認められる場合があります。
ただし、上記以外のものを持参する場合、身分証明書として利用できるかどうかを法務局に事前に確認するようにしましょう。
また、運転免許証やマイナンバーカードのコピーを提出する際は、原本と相違ないことを余白部分に記載し、申出人または代理人の名前を記載してください。
上記に加え、以下の書類が求められる可能性もあります。
必要書類が揃ったら、書類をもとに提出用の法定相続情報一覧図を完成させます。
様式は、法務局のホームページからダウンロード可能です。
「法定相続人が配偶者及び子である場合」や「法定相続人が子のみである場合」など、さまざまなタイプの様式が用意されているため、自分のケースに合うものを選びましょう。
作成時の注意点は、以下のとおりです。
まず、用紙の下部から5cm程度は登記官の認証文が入るため、空けておかなければなりません。
相続人の住所は記載してもしなくても構いませんが、記載するなら住民票の添付が必要です。
記載しなかった場合は、相続登記や遺言書の検認手続きの際に住民票・戸籍附票といった書類を求められます。
なお、作成方法はパソコンでも手書きでもどちらでも構いません。
ただし、手書きの場合は黒インクのペンやボールペンと決まっています。
鉛筆やシャープペンシル、摩擦や熱で消えるフリクションボールペンなどは使用できない点に注意しましょう。
法務局のホームページには記載例も掲載されているので、参考にしながら作成してみてください。
提出用の法定相続情報一覧図が完成したら、申出書に必要事項を記入します。
申出書の様式についても、法務局のホームページからダウンロード可能です。
申請書には、以下のような内容を記載しましょう。
なお、法定相続情報一覧図の通数には制限がないため、何通でも無料で交付してもらえます。
とはいえ、大量に取得しようとすると法務局から用途を聞かれる可能性があります。
本当に必要な通数だけを交付してもらうようにしましょう。
必要書類を揃えて申出書を作成したら、法務局に持参して申出の手続きをおこないましょう。
申出先は、以下の4つから選択できます。
法定相続情報一覧図を窓口で受け取るときは、運転免許証やマイナンバーカード、住民票といった本人確認書類を忘れずに持参しましょう。
申出書に記載した住所・氏名と一致する身分証明書が必要であるためです。
直接法務局に出向くことが難しければ、郵送での申出もおこなえます。
郵送での交付を希望するなら、申出書の「必要な写しの通数・交付方法」欄で「郵送」にチェックを入れ、返信用封筒と切手を同封しましょう。
管轄の法務局については、法務局のホームページから検索してください。
提出用の法定相続情報一覧図を作成する際は、以下の4つのポイントに注意しながら作成してください。
ここでは、作成をスムーズに進めるための4つのポイントについて解説します。
法定相続情報一覧図を作成するときは、法務局のホームページに掲載されているテンプレートを活用することをおすすめします。
過去にも法定相続情報一覧図作成経験があればよいですが、はじめて作成する場合に、一から自作すると時間がかかってしまいます。
法務局のテンプレートを活用することで、作成時間を短縮できるだけでなく、記載ミスも減らせるでしょう。
法務局のホームページには、さまざまなパターンの様式が用意されています。
自分たちのケースに近いものを選び、必要な箇所に修正を加えて使用してください。
法務局が提供する様式は法的要件を満たしていると考えられるため、安心して利用できる点もメリットのひとつです。
法定相続情報一覧図を作成する際は、法務局のホームページに掲載されている記載例を参考にしましょう。
様式と同様に、さまざまなパターンの記載例が用意されているため、近いケースを選ぶのがポイントです。
法定相続情報一覧図に記入漏れやミスがあると、登記官から申出人やその代理人に連絡が入り、不備の内容について指示が出されます。
内容に修正が生じると、修正が完了するまで審査が止まってしまうため、とくに急ぎの場合はきちんと記載例に沿って作成することが重要です。
法定相続情報一覧図を作成する際は、必ずA4サイズの白い用紙に印刷しましょう。
これは法務局が明確に定めた規定であり、記載例にも「A4縦の用紙を使用してください」と明記されています。
A4以外のサイズの用紙や色付きのものを使用してしまうと、申出が受理されず再提出が必要になることがあります。
再提出が生じたことで申出が遅れれば、その分完了までの日数も延びてしまうため注意しましょう。
なお、用紙の質について、法務局は「長期保存することができる丈夫なもの」を推奨しています。
通常のコピー用紙で問題ありませんが、極端に薄い紙は避けたほうが無難でしょう。
法定相続情報一覧図は、自分でも作成・取得が可能です。
しかし、中には相続関係が複雑で作成が難しいケースもあります。
とくに以下のような場合は、弁護士や司法書士といった専門家への相談を検討したほうがよいでしょう。
代襲相続とは、相続人になるはずだった人が被相続人より先に亡くなったり相続権を失ったりした場合に、その人の子どもや孫が代わって相続人になることです。
上記のような複雑なケースでも、専門家に相談すれば法定相続情報一覧図の作成・取得はもちろん、戸籍謄本の収集から相続登記、預貯金の名義変更まで一貫してサポートしてもらえます。
手続きの負担を軽減したい場合や将来的なトラブルを予防したいときは、専門家の力を借りることをおすすめします。
最後に、法定相続情報一覧図に関するよくある質問を紹介します。似たような疑問を抱えている方は、ここで解消しておきましょう。
法定相続情報一覧図は、以下のようなシーンで活用できます。
相続では、複数の手続きを同時におこなわなければならないため、法定相続情報一覧図を作成することで手続きの負担がぐっと少なくなるでしょう。
なお、生命保険金の請求については、各保険会社に確認してください。
法定相続情報一覧図は、絶対に取得しなければならないわけではありません。
法定相続情報一覧図を取得する主な目的は相続手続きの効率化であるため、とくに効率化を必要としないケースであれば取得するメリットはないでしょう。
例えば、以下に該当するなら取得する必要はないと考えられます。
ただし、上記にあてはまらず、相続関係が複雑・相続人が多いといった問題がある場合は、取得したほうが相続手続き全体がスムーズになる可能性があります。
法定相続情報一覧図を紛失してしまった場合、再発行が可能です。
ただし、法務局での保存期間は申出日の翌年から5年間と定められているため、5年を過ぎると再発行できなくなる点に注意が必要です。
保存期間を過ぎたあとに再発行が必要になったときは、再度申出をおこない、登記官に認証してもらうしかありません。
ほかの相続人が作成した法定相続情報一覧図は原則として取得できません。
再発行を受けられるのは、当初の申出書に申出人として記載された人に限られます。
ただし、申出人として記載された人から委任された場合は取得可能です。
本記事では、法定相続情報一覧図の作成方法や取得の流れ、作成のポイントを解説しました。
法定相続情報一覧図とは、被相続人の相続関係をまとめた証明書のことをいいます。
被相続人の相続人やその代理人が無料で取得でき、早ければ翌日、遅くとも2週間程度で取得可能です。
自分でも作成・取得できますが、中には相続関係が複雑だったり相続人が多かったりと、作成が難しいケースもあります。
作成する際に困ったら、弁護士や司法書士などの専門家に相談することも検討してみてください。
法定相続情報一覧図があれば、同時に複数の相続手続きがおこなえるようになり、相続人の負担も軽減できます。
法定相続情報一覧図を取得し、相続手続きを円滑に進めましょう。
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