相続にあたって、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
被相続人が貸金庫を利用していた場合、貸金庫の中身も相続の対象となります。
貸金庫から何が見つかるか次第ですが、遺産分割協議を円滑に進められるように、必要な手続きを確認しておきましょう。
本記事では、貸金庫の中身を相続するときの注意点、被相続人が契約していた貸金庫の見つけかたなどについてわかりやすく解説します。
貸金庫の中身の相続は、中に何が入っているか不明であるため、一般的な相続とは異なり、トラブルになりやすい傾向があります。スムーズな手続きを実現するために、本記事でポイントを押さえておきましょう。
貸金庫の中身は、ほかの相続財産と同様に相続の対象となります。そのため、不動産や預貯金などの財産と同じように、民法のルールに則って適切に処理しなければいけません。
なお、相続人のひとりが無断で貸金庫を開扉して中身を取り出すのも厳禁です。
貸金庫の中身は、被相続人の死亡によってすべての相続人の共有財産になっている状態になるからです。
貸金庫の中身を取り出すには、適切な開扉手続きを踏む必要があります。
被相続人がどのような方法で財産管理をしていたのかを把握するのは簡単ではありません。
多くの方は、そもそも被相続人が貸金庫を利用していたかどうかも知らないでしょう。
そこでここでは、被相続人が生前貸金庫を利用していたか調査する方法を3つ紹介します。
まずは、被相続人が残した遺言書の内容を確認してください。
遺言書に「貸金庫に預けている⚪︎⚪︎は長男に譲る」などと記載されていれば、貸金庫を利用していたとわかります。
被相続人が公正証書遺言書を遺していたり、自筆証書遺言保管制度を利用していたりする場合、公証役場や法務局で遺言の有無を確認できるので、問い合わせて確認してみるとよいでしょう。
ただし、自筆証書遺言書保管制度を利用していないときには、自宅や会社、貸金庫などに遺言書がしまわれている可能性があります。
どうしても見つからないのなら、遺言書は残されていないものとして相続手続きを進めるしかありません。
被相続人が貸金庫を利用していたかどうかは、通帳の引き落とし履歴から判明することも多いです。
というのも、多くの貸金庫は、自動更新の1年間契約制度を採用しており、「貸金庫利用料は半年分もしくは1年分、指定口座から定期的に前払いで引き落とす」というルールを設けているからです。
通帳を確認して、半年もしくは1年ごとに貸金庫使用料が引き落とされていれば、その金融機関に貸金庫があることを意味します。
被相続人がどの金融機関の貸金庫を利用しているか確証が得られないのなら、契約をしている可能性がある全ての金融機関に照会するしかありません。
ただし、貸金庫の照会方法は金融機関ごとに異なります。
必要書類や問い合わせ方法などについては、直接金融機関に直接確認しましょう。
相続発生後に、貸金庫の中身を確認する方法は、遺言書があるかどうかで異なります。
ここでは、相続人が貸金庫の中身をチェックする流れについて解説します。
遺言書で遺言執行者が指定されている場合や、利害関係者からの請求によって家庭裁判所が遺言執行者を選任した場合には、貸金庫の開扉を遺言執行者に任せることができます。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理そのほか遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。
そのため、相続人の同意がなくても貸金庫を開扉できるので、スムーズに貸金庫の中身を確認できるでしょう。
ただし、たとえば遺言書に「貸金庫の開扉は⚪︎⚪︎(遺言執行者以外の者)に任せる」などという記載がある場合には、遺言書で指定された人物が開扉手続きをおこなわなければいけません。
遺言執行者が定められている場合に貸金庫を開扉する一般的な流れは以下のとおりです。
遺言執行者が指定されている場合でも、貸金庫を開扉するときには、相続人全員が同席することが推奨されます。
なぜなら、遺言執行者に貸金庫の中身を盗まれるのを防止する必要があるからです。法的には遺言執行者だけで貸金庫を開扉できる状況でも、相続人全員が開扉・開錠に参加したほうが将来的なトラブル予防になるでしょう。
遺言書が存在しない場合や遺言執行者が指定されていない場合、遺言執行者に貸金庫の開扉に関する権限が与えられていない場合には、原則として、相続人全員で貸金庫を開扉して中身を確認する作業をおこなわなければいけません。
貸金庫の中身は相続人全員の共有状態にあるため、相続人全員が貸金庫の中身に対して一定の権限を有していると考えられるからです。
遺言執行者が指定されていない場合の貸金庫を開扉する一般的な流れは以下のとおりです。
なお、相続人の数が多い場合、全員が予定を合わせて金融機関などを訪問するのは簡単ではないでしょう。
金融機関によって運用は異なりますが、相続人全員の同意があれば実際に開扉手続きに参加するのは一部の相続人だけで足りる、欠席する相続人が署名・押印した同意書があれば足りる、弁護士や司法書士の同席があれば全員出席しなくてもいい、などの例外ルールを定めている場合があるので、貸金庫を利用している金融機関まで確認してください。
相続のタイミングで貸金庫を開扉するには、金融機関で指定された必要書類を用意しなければいけません。
貸金庫の契約者である被相続人が死亡して相続が発生したこと、貸金庫の開扉手続きに関与する人物が相続人であることなどを金融機関側がチェックしなければ、貸金庫の中身の盗難・紛失のリスクが生じるからです。
相続後に貸金庫を開扉するときに要求される代表的な必要書類は以下のとおりです。
なお、金融機関ごとに求められる書類の種類は異なるので、詳細については直接貸金庫を利用している金融機関に問い合わせてください。
貸金庫の中身は相続財産に含まれますが、具体的な相続手続きについては、貸金庫の中身が何だったのかによって異なります。
ここでは、貸金庫から見つかった財産の種類ごとに相続手続きの注意点を紹介します。
貸金庫から被相続人名義の預貯金通帳が出てきた場合には、預貯金通帳に保管されている口座残高が相続の対象になります。
預貯金通帳が見つかったら、まずは被相続人が死亡した時点の残高証明書を発行してもらいましょう。
残高証明書を入手することによって、以下のメリットが得られます。
また、預貯金通帳の取引履歴を精査すれば、被相続人が抱えている負債などの存在も把握できるでしょう。
残高証明書の取得方法は金融機関ごとに異なります。
以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてチェックしてください。
貸金庫から株式や債券、投資信託などの証書が見つかった場合、これらの有価証券も相続手続きの対象になります。
株式などの有価証券の相続では、株式の金銭的価値の算定方法や分割方法などについて争いが生じることが少なくありません。
貸金庫から株券などが出てきたなら、証券会社や上場会社・非上場会社に問い合わせをして、取引残高報告書を発行してもらい、遺産分割協議に役立てましょう。
なお、貸金庫で見つかった株式を現金化せずに相続人がそのまま相続するときには名義変更手続きが必要です。
上場企業と非上場企業とで名義変更手続きの方法は異なるので、必要書類を準備したうえで、証券会社や非上場企業まで直接問い合わせましょう。
株式を相続するときの手続きの流れや注意点については以下の記事でも詳しく解説しています。
株式が相続財産に含まれると遺産分割協議の難易度が高くなるので、弁護士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
貸金庫から生命保険の保険証券が見つかったときには、速やかに生命保険契約の内容・受取人を確認してください。
なぜなら、契約者・被保険者・受取人の関係性によって発生する税金の種類が異なるからです。
たとえば、契約者と被保険者が同一人物で、相続人が受取人に指定されている場合には、受取人には相続税が課税されます。
また、契約者と被保険者が異なり、契約者と受取人が同じ人物とされているなら、受取人は所得税・住民税を納めなければいけません。
さらに、契約者と被保険者が別人で、契約者とは異なる別の人が受取人に指定されているケースでは、受取人は贈与税の納付義務を課されます。
生命保険と相続をめぐる論点や手続きの流れについては以下の記事で詳しく紹介しているので、あわせて確認しておきましょう。
貸金庫から不動産の契約書が見つかった場合、その不動産の名義人が被相続人なら、不動産を相続財産に含めて相続手続きを進めなければいけません。
できるだけ早いタイミングで契約書の内容を確認したうえで、登記事項証明書を取得しましょう。
不動産をめぐる遺産分割協議や相続手続きは、トラブルの種になりやすいものです。
たとえば、不動産の評価方法、不動産の分割方法がなかなか決まらずに遺産分割協議が成立せずに家庭裁判所での調停・審判に移行するケースも少なくありません。
また、生活拠点がなくなる不安から、被相続人の配偶者が不動産を相続したいと主張したり、家業を引き継ぐ関係から長男が不動産の取得を希望したりなど、感情的な理由で相続人間のトラブルが生じる可能性もあります。
相続財産に不動産が含まれるときの手続きの流れや注意事項については、以下の記事で詳しく解説しているので、気になる方はチェックしておきましょう。
貸金庫から、時計、貴金属類、現金、ブランド品などが出てきたのなら、これらも相続手続きの対象になります。
遺言書が存在しない限り、遺産の分配方法は相続人同士で自由に決定できます。
たとえば、被相続人の思い出の品だからという理由で、金銭的価値とは関係なく、「長男が時計、長女がブランド品」という分け方をするのも問題ありません。
これに対して、相続人間の不公平感をなくすことを最優先にするのなら、貸金業者などに貸金庫で見つかった財産を査定してもらったうえで、現金化や現物引き取りなどをしながら相続人間の利害を調整するのも選択肢のひとつでしょう。
貸金庫の中身は、ほかの財産と同様に相続の対象となります。
ただし、貸金庫の有無を確認する方法や、開扉にはさまざまな手続きが必要なので、不安に感じる場合は弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
ベンナビ相続では、貸金庫の相続トラブルなどを得意とする弁護士を多数紹介中です。法律事務所の所在地、具体的な相談内容、初回相談無料などのサービス面から24時間無料で専門家を検索できるので、できるだけ早いタイミングで信頼できる弁護士までお問い合わせください。
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