自動車を相続したら、名義変更はどのようにおこなえばよいのでしょうか。
自動車の場合、金額によって手続きに必要な書類が異なります。
100万円以下の自動車を相続する場合、100万円を超える自動車の相続よりも簡易的な書類で手続きをすることができるのです。
本記事では、100万円以下の自動車を相続した場合の必要書類・金額を証明する査定書の取得方法・スムーズに名義変更をするためのポイントなどを紹介します。
できる限り少ない負担で手続きをしたい場合は、弁護士や行政書士などの専門家に依頼することも可能です。
まずは100万円以下の自動車の名義変更について基礎知識を知っておきましょう。
親などが亡くなって相続が発生した場合、自動車も相続財産に含まれます。
自動車を相続した場合は名義変更の手続きが必要ですが、100万円以下の自動車の場合は簡易的な手続きで名義変更が可能です。
なお、自動車の金額は、相続した時点では通常わかりません。
そのため、売ったとすればいくらになるかを評価することになります。
自動車の主な評価方法は、以下のとおりです。
また、遺産分割のために売却して現金化することも可能です。
自動車を相続すると所有者を変更しなければなりません。
自動車の査定額に関わらず、名義変更をおこなわなければ売却することも廃車にすることもできないのです。
なお、一人の相続人が自動車を相続してそのまま使う場合、実は名義変更をおこなう義務はありません。
道路運送車両法では、所有者が変更になった際に新所有者は、15日以内に名義変更をしなければならないと規定されていますが、相続で所有者が変わった場合は適用されないのです。
しかし、売却ができないことはもちろん、自動車税納付書が届かずに滞納してしまうリスクや、万が一交通事故に遭ったときに所有者の名義が違うと支払いが遅れるなど不便が多くなります。
そのため、名義変更は速やかにおこなうべきでしょう。
それでは、ここからは査定額が100万円以下の普通自動車を相続する際の名義変更の流れについて確認しましょう。
まずは、遺産分割協議成立申立書を作成します。
自動車の査定額が100万円を超える場合は遺産分割協議成立申立書ではなく、遺産分割協議書が必要です。
しかし、自動車の査定額が100万円以下の場合は簡易的に遺産分割協議成立申立書を利用することができます。
遺産分割協議成立申立書は、国土交通省やその地方支部局である関東運輸局などのWebサイトからダウンロードできます。
「自動車の表示」欄には、自動車の登録番号と車台番号を記載します。
これらは自動車検査証に記載されているため書き写してください。
「被相続人」欄には、亡くなった方の氏名と死亡年月日を記載します。
その下には「遺産分割協議成立年月日」と「申立書による申請の同意年月日」を書く欄があるのでそれぞれ記入しましょう。
最後に申立書を作成した日付と、新しい所有者の住所と氏名を記載し、押印すれば完成です。
遺産分割協議成立申立書の作成と同時に、名義変更に必要なそのほかの書類を集めておきましょう。
普通自動車の場合、軽自動車よりも必要書類が多く、役所や警察署などで入手しなければいけない書類もあるため、早めに準備することをおすすめします。
自動車の相続では、自動車そのものを物理的に分解して分けることができないため、共有名義にしておくケースもあります。
しかし、相続人のうちの一人が代表相続人として単独相続するのが一般的です。
そのため、ここでは代表相続人が単独相続する場合の必要書類を紹介します。
査定額が100万円以下の普通自動車を相続する際の名義変更に必要な、遺産分割協議成立申立書以外の書類は次のとおりです。
これに加えて、印鑑証明書と同じ実印も準備しておきましょう。
また、名義変更の手続きに出向くのは本人でなくても構いません。
忙しいなどの理由でほかの方に依頼する場合は、新所有者の実印を押した委任状が必要になります。
名義変更に必要な書類が揃ったら、陸運支局などへ提出します。
新所有者の現住所を管轄している運輸局の窓口で手続きをしましょう。
書類の記入や提出について不明点があれば、窓口で案内してもらうことが可能です。
なお、管轄の陸運局は都道府県の市区町村ごとに決まっています。
国土交通省Webサイトの「全国運輸支局等のご案内」ページから、管轄の運輸支局等が確認できるWebサイトへ移動できるので確認しておきましょう。
また、普通自動車と軽自動車では、手続きをおこなう場所が異なるため注意が必要です。
軽自動車の名義変更は軽自動車検査協会で受け付けているため、気をつけてください。
提出先では、持参した書類のほかにも次の書類を作成します。
書類を提出したら係員によって確認され、内容に不備がなければ新しい車検証がその場で交付されます。
新しい車検証を受け取れば、名義変更の手続きは完了です。
100万円以下の自動車の名義変更に必要な査定書としては、一般財団法人日本自動車査定協会が発行するものを利用するのがおすすめです。
日本自動車査定協会はJAAIとも呼ばれ、経済産業省と国土交通省(当時は通商産業省と運輸省)によって1966年に設立されました。
国の行政機関が設立したものとして、査定額に関する高い信頼を有しています。
ただし、JAAIは中立公平な立場で中古車の評価をする第三者機関であり、売買はしていません。
そのため、実際の売買価格とは異なることがあります。
では、JAAIでの査定書発行の手順を確認しましょう。
JAAIに査定を依頼するには、電話予約が必要です。
電話は最寄りの事業所にかけましょう。
事業所一覧は、JAAIのWebサイトから確認できます。
電話では、査定場所と査定日時について担当者と打ち合わせをします。
査定の際は、支所への持ち込みまたは出張を選択可能です。
ただし、出張査定の場合は別途出張料がかかります。
査定日が決まったら査定業務委託依頼書を印刷して、必要事項を記入したうえで事業所宛にFAXで送信します。
査定業務委託依頼書は、事業所ごとに準備されているため、JAAIのWebサイトから依頼する事業所のページへ移動し、ダウンロードしましょう。
依頼者の情報・車名・型式・登録番号・査定の目的などの記載事項があるので、記載しておいてください。
査定の場所と日程が決まったら、査定当日に必要なものを確認し、準備しましょう。
当日必要なものは以下です。
自動車の査定にかかる時間は約30分です。
内装や外装の状態確認と、各部位の機能や装備品の点検がおこなわれ、自動車検査証が転記されます。
なお、事故歴や改造歴がある自動車の場合は、査定時間が長くなることもあります。
査定書の発行までに査定料を支払います。
普通自動車の場合は国産車なら9,900円、輸入車や特装車なら12,100円と規定されています。
また、出張査定を依頼した場合は出張料金として、距離によって2,200円から12,100円がかかります。
詳しくはWebサイトや電話予約の際に確認しましょう。
自動車の価格評価を目的とした査定の場合は、査定証が発行されます。
ただし、即日発行は原則としておこなわれておらず、後日受け取ることになります。
どれくらいで手元に届くかは依頼した事業所に確認しましょう。
ここからは、100万円以下の自動車の相続に関するよくある質問を紹介し、回答していきます。
似たような疑問を持っている方は、ぜひ参考にしてください。
軽自動車は、一般的に普通自動車よりも資産価値が低く相続で争いになり難いことから、普通自動車の場合よりも相続における手続きが簡易的です。
軽自動車の名義変更には、相続に関する書類が必要ありません。
そのため、査定額に関わらず遺産分割協議書も遺産分割協議成立申立書も不要です。
ただし、車検証や新しく所有者となる相続人の住民票などは必要です。
また、登録や名義変更を申請する機関は、普通自動車と異なります。
軽自動車の場合は、軽自動車検査協会への申請となるため気をつけてください。
名義変更に必要な書類については、全国の軽自動車検査協会の支所へ問い合わせるかWebサイトなどで確認しましょう。
本記事内「査定額が100万円以下の普通自動車を相続する際の名義変更の流れ」で触れたように、普通自動車の査定額が100万円を超えるものを相続した場合は、名義変更する際、遺産分割協議成立申立書ではなく、遺産分割協議書が必要です。
そのほかの書類は、査定額が100万円以下だった場合と同じであるため、本記事内「名義変更に必要なそのほかの書類を集める」を参考にしてください。
自動車の相続における名義変更は義務ではありません。
しかし、名義変更をおこなわないとさまざまなデメリットがあります。
まず、名義変更がされていなければ、相続をしても相続人の財産とは認められません。
そのため、売却することができません。
また、道路運送車両法に基づく自動車の一時抹消登録や自動車リサイクル法に基づく永久抹消登録もできず、適正に処分することができないというデメリットがあります。
さらに、万が一交通事故を起こしたときに任意保険が使えず、加害者に対する損害賠償を自分で支払わなければならない可能性や、相続人全員が自動車保有者として責任を問われる可能性もあります。
被害者となってしまったときも、入通院費などの支払いを受けるのに多大な時間を要する可能性があるのです。
また、遺産分割をした段階で複数の相続人の共有名義にしておいたけれど、結局一人が引き継いだという場合も、必ず自分自身の名義に変更しましょう。
放置しておくと、共同相続人が借金をして返済できなくなった際などに、債権者に差し押さえられてしまうおそれがあります。
このようなデメリットを踏まえると、できるだけ早く名義変更をおこなうのがおすすめです。
100万円以下の自動車の相続における名義変更は、100万円を超えるときに比べると簡易的におこなうことができます。
そうはいっても、必要書類の準備や手続きは煩雑で時間がかかるものです。
手順を誤って手間が増えてしまわないよう、確実にスムーズに手続きをしたいなら、弁護士や行政書士などの専門家に依頼するのがベストです。
煩雑な手続きを全て任せることができ、確実に名義変更を完了することができるでしょう。
信頼できる専門家を探したいなら、ポータルサイト「ベンナビ相続」の利用がおすすめです。
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