遺産相続における手続きは、自分でやると大変な作業も多く、弁護士・行政書士などの士業に依頼するケースも多くあります。
中でも、相続税の申告は特に内容が難解、かつ複雑で時間のかかる手続きです。
そのため、税理士に依頼することになるのですが、税理士に依頼する場合の費用はいくらになるのでしょうか。
本記事では、遺産相続における相続税申告についての手続きを税理士に依頼する場合の費用について解説します。
まずは、相続税申告を依頼した際の税理士費用の相場を確認しましょう。
なお、報酬については平成14年3月までは税理士報酬規定が定められていました。
ただ、現在は税理士報酬規程は廃止されており、税理士が自由に報酬を設定できるようになりましたが、遺産総額×0.5~1.0%程度が相場となっています。
ただし、実際に申告作業を開始すると手続きが煩雑な場合、必要書類が非常に多かった場合に料金が加算され、1.0%以上に高くなってしまう可能性もあります。
また、相続税申告を依頼した場合の税理士費用の決め方も、以下のとおり事務所によって異なります。
このように、ひとえに相続税申告といってもどのような資産があるかによって、税理士に必要とされる専門知識や作業量が異なります。
遺産総額が多くなるほど内容が複雑になり、対応すべき量も増えることが多いため、通常は遺産の総額が増えれば増えるほど報酬も自ずと増加傾向にあります。
東京23区内に不動産を所有しているほか、金融資産などがある場合の例です。
・遺産の総額
家・土地の価額:4,000万円
金融資産や自動車などの総額:1,000万円
総遺産額:5,000万円
税理士報酬の割合:総資産額の1%
税理士報酬:(5,000万円×1%)=50万円
東京23区内に不動産を所有しているほか、賃貸アパートと金融資産などがある場合の一例です。
自宅の家・土地の価額:5,000万円
賃貸アパートの価額:9,000万円
金融資産などその他の資産:2,000万円
税理士報酬の割合:0.5%
税理士報酬:1億6,000万円×0.5%=80万円
相続税申告についての費用は、税理士事務所のホームページに掲載されているので、いくつか候補がある場合には、事前にホームページで見比べてみるのがよいでしょう。
相続税の申告についての税理士をはじめ、士業がおこなっている業務について相談をする場合、一般的には30分5,000円程度の相談料がかかります。
たとえば、2時間程度の相談をすると5,000円×4(120分)=20,000円となります。
相続税の相談については、中には無料で相談に応じている事務所もあるので、ホームぺージなどで確認をしてみましょう。
ケースによっては、相続税申告を依頼した際に税理士費用の追加料金が発生する可能性もあります。
ここでは、具体例として5つのケースを見ていきましょう。
評価が難しい土地がある場合には、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
相続税申告のためには、相続する遺産について相続税における評価額を確定することが必要です。
相続税は遺産の額に応じて一定の税率を乗じて求められるため、遺産がいくらとなるのかは正確に計算しなければなりません。
その計算方法として、財産評価基本通達という国税庁から発せられている通達があり、これに基づいて計算がおこなわれます。
遺産の中でも、不動産は評価が難しい財産に分類され、特に不動産の形状や接道状況などによっては評価が非常に難しいことがあります。
このような評価が難しい土地がある場合には、税理士の業務内容が複雑になるため、報酬額が加算される可能性があります。
中でも路線価がついている土地については、その形状や接道の状況によってさまざまな補正・加算がされるので、評価額の計算が複雑となります。
たとえば、土地の形がいびつな場合、正方形・長方形である土地に比べると利用がしづらく、同じ面積でも評価を減額する可能性があります。
一方、角地や2つの公道に面しているなどで、利便性が高い土地である場合には評価を増額する可能性もあります。
これらを調査・計算する必要があり、税理士の関与が増えることから、税理士の報酬額加算されることがあります。
ほかにも、非上場株式が財産にある場合、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
会社の持分である株式は、相続税における財産として計算をする必要があります。
上場株式である場合には市場価格が明確なので計算はそれほど難しくありません。
ただ、非上場株式の場合には類似業種比準方式・純資産価額方式・配当還元方式といった3つの方法を、その会社の規模や状態にあわせて使用します。
このように、非上場株式の評価をするにあたり、会社の規模や所有不動産などさまざまな調査が必要となることから、税理士報酬が加算される可能性があります。
税理士事務所によっては、「非上場株式1社あたり◯円」と、加算報酬を規定している場合もあります。
相続税の申告は、自己が相続人となって相続が開始したことを知った日から10ヵ月以内におこなわなければなりません。
そのため、申告期限まで時間がない場合に、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
相続税申告には10ヵ月の猶予があるとはいえ、いざ手続きを開始してみると思いがけず時間がかかる場合や、財産の洗い出しや評価に手間取る場合など、想定していたよりも時間を要するケースも多くあります。
そのため、申告期限まで時間がない場合には集中して案件に取り組む必要があることから、税理士費用が加算される可能性があります。
税理士事務所によって違いはあるものの、残り3ヵ月を切っている場合は申告期限まで時間がないものとして加算されるでしょう。
もっとも、申告期限間近の場合には、依頼そのものを断られてしまうおそれもあるため、なるべく早い段階で税理士に依頼することをおすすめします。
書面添付制度を利用する場合、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
正面添付制度とは、相続税申告をする際に税理士が申請内容が適切である旨を説明する書面を作成し、これを申告書に添付する制度のことです。
これによって税務調査のリスクが下がり、万が一申告漏れがあった場合でも加算税課されないとったメリットがあります。
もっとも、これには書類を作成する税理士の責任負担があるので、税理士報酬が加算されることがあります。
相続税の物納をする場合、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
相続税の納付は基本的には金銭でおこないますが、税額が大きく期間内に現金が用意できないなどの理由から、代わりに不動産などを納める「物納」という方法を検討するケースがあります。
物納の手続きには、物納申請書・物納手続関係書類を税務署長に提出する必要があり、税理士の関与が増えることになります。
そのため、税理士報酬が加算される可能性があります。
そのほか、相続人の数が多い場合も、税理士費用の追加料金が必要となることがあります。
相続人の数が多ければ多いほど、収集すべき書類が多くなったり、申請書に記載したりする内容が増えます。
そのため、「相続人が1人増えるごとに○%加算」という形で加算報酬を定めている税理士事務所もあるため、事前に確認するようにしましょう。
相続税申告を税理士に依頼する際の費用面に関する3つのポイントを知っておきましょう。
まず、正式な依頼をする前に税理士に見積もりを出してもらいましょう。
税理士報酬についてはホームページで大まかに記載されているものの、詳細な金額については実際に相談してみないとわからない場合があります。
そのため、正式な依頼をする前に見積もりを出してもらいましょう。
このとき、遺産や相続人に関する情報をできる限り提供することで、見積もりの精度が上がるでしょう。
見積もりをもらった際には、金額の根拠もあらかじめ聞いておくのがよいでしょう。
また、複数の税理士に相談して相見積もりをおこなうようにしましょう。
相談は一人の税理士しかできないというわけではなく、また見積もりを出してもらったからといって、必ずその税理士に依頼をしなければならないわけではありません。
そのため、相談できる税理士が複数いる場合には複数の税理士に相談して、合い見積もりをおこなうのがよいでしょう。
合い見積もりをおこなうためにも、金額の根拠・加算の有無などを見積もりの段階でしっかり確認しておくようにしましょう。
税理士選びの際、税理士費用の安さだけでは選ばないようにしましょう。
もし、相続税申告が簡単な手続きでどのような税理士に依頼しても結果が変わらないような場合であれば、安さで決めるのがよいといえるでしょう。
しかし、相続税申告には、複雑かつ高度な知識が必要であり、税理士といえども深い知識・経験が不可欠です。
税理士費用が安いに越したことはないものの、集客が難しく費用を下げているだけのような場合も少なからずあります。
この場合、費用は安いけども相続税申告に関する知識経験に乏しく、依頼者に損害を出してしまう可能性も否めません。
また、税理士費用が安くても、態度が横柄で仕事が雑で税務調査を招いてしまっているような場合もあります。
そのため、税理士費用の安さだけでは選ばないようにしましょう。
税理士費用のほかに税理士を選ぶ際には、クチコミ・相続に関する実績・取り組みなどが参考になるでしょう。
クチコミに関しては、Googleの口コミのように、インターネット上での口コミを利用するのがよいものの、これらは必ずしも適切な内容のものであるとはいえない点は理解しておきましょう。
また、相続に関する実績や取り組みがきちんとされているかをホームぺージなどで確認しましょう。
また、実績のある税理士はホームページやYoutubeなどを利用して、相続に関する情報を積極的に発信していることもあるので、判断材料のひとつになるでしょう。
こういった相続税に関する実績や取り組み・情報発信とあわせて報酬の安さを踏まえたうえで検討するのがよいでしょう。
さいごに、相続税申告の税理士費用に関するよくある質問を紹介します。
費用の支払いは契約の当事者がおこなうので、基本的に誰が支払っても構いません。
たとえば、最も多くの財産を取得した人が全員分をまとめて払ったり、配偶者控除を受けて相続税の支払いが必要ない配偶者が支払ってもかまいません。
ただし、税理士報酬を代わりに支払ってもらったことが、ケースによっては贈与を受けたとみなされ、その金額が110万円を超える場合には、贈与税の申告・納税が必要となることがあります。
一般的には、相続税申告をおこなう前後に支払います。
ほとんどケースにおいて、税理士報酬を支払うタイミングは初回面談時で説明されますが、もし説明がなかった場合は必ず確認しましょう。
また、税理士事務所によっては前金が必要な場合もあるため注意が必要です。
そのほか、成功報酬制をとった方は、相続税の申告・納税が終わったあとに支払うことになるでしょう。
ただし、中には基本報酬を大きく上回る金額の請求がなされる可能性もあり、依頼者との間でトラブルに発展する可能性も否定できません。
もし成功報酬制の税理士を検討するのであれば、契約前に税理士からの説明が納得できるものであるか、慎重に話を聞いて判断しましょう。
相続税申告を依頼した場合の税理士報酬は、相談料や申告書作成料などの費用を経費として相続財産から控除することはできません。
相続財産から控除できるのは、葬式費用や債務、生命保険金や死亡退職金の非課税枠などに限られます。
本記事では、相続税申告の税理士費用についてお伝えしました。
相続税の申告は、相続税法という非常に細かく難解な法律を理解しながら確実に申告書を作成し、もれなく添付書類を集める必要があります。
そのため、税理士に依頼するのが望ましいところです。
税理士に依頼する場合の費用の相場や税理士費用が高くなってしまう場合を確認して、まずは気になる税理士に合い見積もりをおこなってみましょう。
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