未成年者が相続人の場合、どのように相続手続きを進めればよいかわからないという方もいるでしょう。
未成年者については、親権者または特別代理人が代わりに遺産分割協議などに対応しなければならず、どちらが対応するかはケースに応じて異なります。
なお、特別代理人を選任する際は家庭裁判所での手続きなどが必要で、自力で対応できるか不安な場合は弁護士への相談も検討しましょう。
本記事では、相続人が未成年者の場合の相続手続きや、特別代理人の選任方法、未成年者が相続放棄する際の手続きなどについて解説します。
ここでは、相続人が未成年者の場合の基礎知識について解説します。
相続人が未成年者でも、被相続人の遺産を相続する権利はあります。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
引用元:民法第887条
法定相続人の年齢には特に縛りがないため、未成年であろうと財産を継承できます。
未成年者の場合、単独では法律行為をすることができません。
相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きのことを「遺産分割協議」と呼び、これは法律行為に該当するため未成年者は参加できません。
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
引用元:民法第5条
未成年の相続人については、親などの親権者または特別代理人が代わりに遺産分割協議に参加する必要があります。
以下では、ケースごとの対応方法について解説します。
親権者が相続人ではない場合、未成年の相続人の代わりに親権者が遺産分割協議に参加します。
親権者も相続人である場合、代理人として遺産分割協議に参加してしまうと「親権者自身の相続人としての立場」と「代理人としての立場」で利害が対立してしまいます。
このような状態は利益相反行為として禁止されており、特別代理人を選任して遺産分割協議をおこなう必要があります。
(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
引用元:民法第826条
もし特別代理人を選任せずに親権者が代理人として遺産分割協議に参加した場合、その遺産分割協議は無効になります。
特別代理人になれるのは「相続と関わりのない成人」です。
相続に関係のない親族や友人のほか、弁護士や司法書士などが特別代理人になることもあります。
特別代理人が選任されるまでの流れは以下のとおりで、申し立てをしてから選任されるまでには1ヵ月~3ヵ月程度かかります。
ここでは、それぞれの手続きについて解説します。
相続に関する知識や経験がない場合は、手続きを進める前に相続問題が得意な弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、正しい手続きの進め方をアドバイスしてくれて、不安や疑問を解消できます。
弁護士は依頼者の代わりに手続きを進めることもでき、自分で手続きができるか不安な場合は依頼することも検討しましょう。
弁護士を探す際、一から自力で探そうとすると時間も手間もかかります。
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特別代理人を選任する際は、以下のような書類が必要です。
必要書類を準備したあとは、家庭裁判所にて特別代理人選任の申し立てをおこないます。
申し立てができるのは「未成年の相続人の親権者」や「利害関係人」で、申し立て先は「未成年の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
提出方法は、裁判所の窓口にて直接提出するか、郵送で提出します。
原則として提出した戸籍謄本などは返却されませんが、裁判所によっては提出時に申し出れば手続き終了後に返却してくれるところもあります。
もし戸籍謄本などが必要な場合は、事前に裁判所へ返却の有無を確認しておきましょう。
申し立てをおこなってから、1ヵ月ほど経過すると審判結果が通知されます。
提出書類などに問題がなければ特別代理人が選任され、その場合は「特別代理人選任審判書」が届くため大切に管理してください。
ここでは、特別代理人を選任する際に知っておくべきポイントについて、以下のケースごとに解説します。
未成年の相続人が2人以上いる場合、それぞれ特別代理人を選任しなければいけません。
まだ生まれていない胎児でも、被相続人の遺産を相続することができます。
ただし、死産だった場合は相続権はありません。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
引用元:民法第886条
相続において、内縁の妻・夫には相続権がありません。
未成年の相続人の代理人として対応することはできますが、未成年者が複数いる場合などは特別代理人を選任する必要があります。
未成年者が相続放棄をする場合、以下のケースごとに対応方法が異なります。
ここでは、未成年者が相続放棄をする際の手続きについて解説します。
相続人全員が相続放棄をする場合、未成年者と親権者で利益が相反することがないため、親権者が未成年者の相続放棄の申し立てをおこなうことができます。
未成年者だけが相続放棄をする場合、親権者が代わりに対応すると未成年者に不利益が生じる可能性があるため、特別代理人を選任しておこなう必要があります。
ここでは、未成年者の相続に関するよくある質問について解説します。
遺産分割協議自体には期限がないため、たとえば1年~2年待てば成人になるようなケースであれば遺産分割を待つという選択肢も有効です。
ただし、遺産分割を放置していると遺産が共有状態となって売却などが困難になるほか、その間に相続人が亡くなったりすると手続きが複雑になるなどのリスクもあります。
状況に応じて適切な対応は異なり、自分では判断が難しい場合は弁護士に相談しましょう。
相続後の未成年者の遺産は、親権者が管理します。
なぜなら、親権者は子どもの財産を管理する権利を持っているからです。
相続税の未成年者控除とは、未成年者が相続を受けた場合に相続税額から一定額が控除されるという制度です。
なお、相続税の未成年者控除を利用するためには、以下の要件を満たしている必要があります。
未成年者控除の適用要件や控除額などについて、詳しくは以下の国税庁ホームページに記載されています。
相続人が未成年者というケースでは、親権者が相続人ではない場合は親権者が、親権者が相続人である場合は特別代理人が代わりに遺産分割協議などに対応します。
特別代理人を選任する際は、必要書類を準備して家庭裁判所にて申し立てをおこなう必要があります。
弁護士であれば、正しい手続きの進め方をアドバイスしてくれるほか、代わりに手続きを進めてもらうこともできるので、未成年者の相続に関する悩みがある方は一度相談してみることをおすすめします。
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