法律上のトラブルが起きた際、内容証明(内容証明郵便)の発送を検討している方もいるかもしれません。
また、内容証明を受け取った際の適切な対応方法を知りたい方もいるでしょう。
本記事では、内容証明の概要や利用料金、注意事項について解説します。
内容証明に関連したトラブルを解決したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
内容証明とは、文書の送付日や内容を証明するための制度で、正式名称は「内容証明郵便」といいます。
「いつ、誰が、誰に、何を伝えたのか」を明確に示すことができるため、裁判においても証拠として採用されることが多くあります。
内容証明を受け取った相手方は、「そんな郵便を受け取っていない」「そのような内容ではなかった」といった言い逃れが難しくなるでしょう。
また、内容証明には法的効力をもつ確定日付があるため、クーリングオフや債権譲渡、時効中断などの際にも、文書が作成された日を確定的に示すことができます。
さらに、内容証明には日本郵便株式会社の認証が押印されているうえ、郵便を受け取る際には受領の押印が求められるため威圧感を伴うでしょう。
証拠力と心理的圧力の組み合わせにより、内容証明郵便は問題のスムーズな解決を助ける重要なツールになります。
内容証明には、次のような効力が期待できます。
内容証明は、郵便を証明力のある証拠にできます。
通常の郵便とは異なり、「いつ、誰が、誰に、どのような内容で送付したのか」という詳細を確実に証明可能です。
裁判のような法的手続きで証拠としての価値が高まるため、相手方からの「そんな文書は受け取っていない」という主張に対抗できます。
内容証明は独自の体裁や形式により、受け取った相手に心理的プレッシャーを与えられるでしょう。
内容証明の特徴として「配達員からの直接配達」「整った体裁」「通知人と被通知人についての情報の記載」「割印や認証スタンプ」など、一般的な手紙とは異なる点が多くあります。
心理的なプレッシャーがあることで、支払いを拒否していた相手が支払いをおこなうなど、紛争が解決すに向かうことがあるでしょう。
内容証明は、時効の完成を遅らせることができます。
時効とは一定の事実状態が続いた場合、権利の行使を放置していると、所有者でない者がその権利を取得する(取得時効)か、元の権利者がその権利を失う(消滅時効)法的な効果を生じるものです。
民法では時効を中断または遅らせるための方法が定められており、具体的には次の4つの時効中断事由が存在します。
このうち、内容証明を用いた請求は④の「催告」に該当し、時効を中断する効力があります。
しかし、催告後6ヵ月以内に裁判上の請求や差押え、仮差押え、仮処分などの手続きを取らない場合、催告前の状態に戻り時効は中断されなかったこととして取り扱われます。
さらに、催告は一度しか利用できないため、6ヵ月以内に再度の内容証明を発送しても時効は中断されません。
内容証明を使った催告は時効を中断する強力な手段となるものの、そのあとの手続きや期限には細心の注意を払う必要があります。
内容証明を送るべき代表的なケースとして、次のような場合があります。
内容証明は、貸したお金の返済がなされないときに効果的です。
内容証明には貸主が正式に返済を要求したことや金額や期限などの詳細が記録されるため、トラブル回避や法的手続きの際にも大きな証拠になります。
口頭や通常の手紙での催促よりも相手に強い印象を与え、返済への意識を高められるでしょう。
クーリングオフの際に内容証明を用いることで、意向が正式に伝えたことが証明され、契約解除のプロセスがスムーズに進められます。
クーリングオフは特定の契約で、一定の期間内であれば契約の解除ができる制度です。
内容証明によって送付日や内容が確定できるため、クーリングオフの適用期間内に意向を伝えたという証明にも役立つでしょう。
損害賠償や慰謝料の請求で内容証明を利用することで、具体的な損害の詳細や請求額、根拠となる事実や状況を正確かつ公正に伝えられます。
また、内容証明を受け取った側は法的手段を考慮している相手からの正式な請求であると受け取り、早期の対応や和解を促す可能性も高まるでしょう。
内容証明で権利を確実に主張することで、法的手続きにおいても有利になり得ます。
遺産分割交渉の際に内容証明を利用することで、具体的な希望や理由を明確に伝えられます。
正式な文書として相手方に届けることで、相手方に遺産分割に関する交渉の必要性や緊急性を認識させ、対応を促す可能性が高まるでしょう。
遺産分割は、感情的なもつれや家族間の対立が生じる可能性があります。
そのような状況下でも、自身の主張や意向をはっきりと相手方に伝えることは重要です。
さらに、法的な手段を取る必要が生じた場合、内容証明を用いて自身の主張を明確にしておくことで、交渉や裁判の過程がスムーズに進むことが期待できます。
内容証明の書き方は、次のとおりです。
内容証明の用紙には、サイズや枚数に制約は設けられていません。
便せん、原稿用紙、コピー用紙、メモ用紙など、どのような種類であっても使用可能です。
ただし、内容証明は差出郵便局で5年間保存されるため、感熱紙のように長期保存に適さないものは避けましょう。
枚数に制約はありませんが、内容証明が2枚以上になる場合、全てのページをホチキスなどで綴じ、ページの繋ぎ目に割印を押す必要があります。
これは、内容の途中での変更や追加を防ぐためのものです。
内容証明の作成方法についても特に制約はないため、手書きでもパソコンの文章作成ソフトで作成しても、どちらでも問題ありません。
内容証明には1枚当たりの行数と1行当たりの文字数に制限が定められています。
具体的な制限は、次のとおりです。
・縦書きの場合:1行に20字以内、1枚につき26行以内
・横書きの場合:以下のいずれかの方式で書くことが可能です。
1行に26字以内、1枚につき20行以内
1行に13字以内、1枚につき40行以内
1行に20字以内、1枚につき26行以内
文字数を気にせずに書類を作成したい場合、市販の内容証明の用紙や400字詰め原稿用紙を使用しましょう。
弁護士や行政書士などの専門家が出す内容証明では、横書きのA4サイズ縦長の書類が一般的です。
内容証明に使用できる文字には、ルールが存在します。
基本的に許容される文字はひらがな、カタカナ、漢字、数字、一般的な記号や句読点です。
英字は固有名詞としての使用に限定され、たとえば氏名、会社名、地名、商品名などが該当するでしょう。
一般的な英語文やほかの外国語文は、内容証明での使用が認められていません。
また、記号の「」や『』などのかっこは、はじめの一つだけが1文字としてカウントされ、終わりの方はカウントされません。
かっこ付きの数字や文字の(1)(2)(一)(二)などは通常2文字としてカウントされますが、文中で序列を示す場合は1文字としてカウントします。
英字や外国語文の制約、さらに記号のカウント方法に注意しながら、内容証明を正確に作成することが求められます。
内容証明には、差出人と受取人の住所を必ず記載する必要があります。
差出人が2人以上の場合は、差出人全員の住所氏名を記載しましょう。
代理人が出す場合は本人の名前で出す、もしくは代理人としての立場を明確に記載することが必要です。
文書のタイトルは義務ではありませんが、状況に応じて記載するとよいでしょう。
ここでは、内容証明の出し方について以下のとおり解説します。
内容証明を送る際、以下のものを郵便局に持参しましょう。
なお、封筒は送達する相手方の住所・氏名を記入しておき、封をしない状態で持参しましょう。
全ての郵便局が、集配郵便局もしくは支社が指定した郵便局に限られます。
事前に最寄りの郵便局が内容証明のサービスを提供しているかを確認してから訪問しましょう。
内容証明を利用する際は、「配達証明」を忘れずに付けましょう。
配達証明を付けることで、受取人に内容証明が配達された日付を証明できます。
「配達証明」を付けると、1週間程度で「〇月〇日に配達したことを証明します」と記載されたハガキが差出人のもとに返送されるでしょう。
「配達証明」を付けないと受取人に配達された事実や日付に確証がもてないため、内容証明の意義が失われてしまう可能性があります。
配達証明は1年以内であれば後からでも請求できますが、発送時のよりも高額になり、受領証も必要となるため、内容証明発送時に利用しましょう。
内容証明の利用料金は、次のとおりです。
|
料金 |
基本料金 |
【定形郵便物】 25gまで:84円 50gまで:94円
【定形外郵便物】 規格内 50gまで:120円 100gまで:140円 150gまで:210円 250gまで:250円
規格外 50gまで:200円 100gまで:220円 150gまで:300円 250gまで:350円 |
一般書留の加算料金 |
損害要償額が10万円までのもの:480円 損害要償額が10万円を超えるもの:10万円を超える5万円までごとに23円増 |
内容証明の加算料金 |
1枚:480円 2枚:770円 3枚:1,060円 4枚:1,350円 5枚:1,640円 |
配達証明の加算料金 |
差し出しの際:350円 差出後:480円 |
たとえば、25gまでの定形郵便で内容証明を送った場合の費用は次のとおりです。
「84円(25gまでの定形郵便)+480円(一般書留の加算料金)+480円(内容証明の加算料金)+350円(配達証明の加算料金)=合計1,394円」になります。
ここでは、内容証明を出す際によくある質問2つについて解説します。
内容証明の文書を訂正する場合、以下の順序で直す必要があります。
普通の手紙とは異なり以上の方法に従わないと、文書の信頼性や公正性が保たれません。
内容証明を作成する際は、記載時には文書の内容をよく確認し、必要に応じて訂正を丁寧におこないましょう。
内容証明を利用する際、手紙以外の物品(資料、コピー、写真など)を同封することはできません。
手紙以外の物品が必要な場合は、別途郵送することが必要です。
内容証明を受け取った際は、適切な対処が求められます。
無視していると訴訟リスクが高まるため、対話と交渉を通じて解決を目指すことも選択肢のひとつです。内容証明への返信は義務ではありませんが、受け取りの拒否は避けるべきでしょう。
内容証明が届いたあとに起こることは、次のとおりです。
内容証明を無視することで、相手方が訴訟を起こす可能性があります。
とくに、内容証明の内容が金銭的な請求や権利の主張に関連するものである場合、訴訟のリスクはさらに高まるでしょう。
内容証明は相手方からの要求や主張、通知などを文書として明確に示す目的で送られます。
公式な手段を使って通知をおこなったにもかかわらず、相手方が対応を取らない場合、訴訟を起こす選択を取らざるを得ない場合もあるでしょう。
内容証明が届いた際には、すみやかにその内容を確認し、適切な対応を検討することが重要です。
内容証明が届いた際、すぐに対話の道を模索することで法的な対立を回避し、双方にとって納得のいく解決へと導く可能性が高まります。
内容証明を送信する行為自体は主張や要求を明確にするものであり、必ずしも法的手段をとりたいという主旨ではありません。
多くの場合、双方が意見を交換し、共通の認識や合意を見つけることを望んでいます。
直接、相手との対話を試みることで、誤解や不明点を解消し問題の根本的な解決策を共同で探ることができるでしょう。
また、交渉を通じて双方の立場や要求をより具体的に理解し合えるため、争いの解消につながることもあります。
内容証明が届いたからといって、必ずしも回答する義務はありません。
相手方の主張が明らかに不当である場合、無視しても訴訟に発展するリスクは少ないでしょう。
ただし、不当性の判断は難しいため、安易に無視することはリスクをともないます。
確実に対応するためには、受け取った内容証明に関して弁護士の意見を求めるとよいでしょう。
内容証明を受け取る際、拒否することは避けたほうが賢明です。
受け取りを拒否すると相手に「受け取りを拒否した」という情報が伝わります。
その結果、法的な問題や交渉の際に、不利な状況を生む可能性があります。
受け取りを拒否することで短期的な不快感は避けられるかもしれません。
しかし、長期的な視点での問題解決へのアプローチが困難になることを考慮すると、適切に受け取ることが推奨されます。
内容証明の作成を弁護士に依頼するのがおすすめな理由は、次のとおりです。
弁護士に内容証明の作成を依頼すると、法的な観点から内容を厳格にチェックできます。
内容証明の目的は、相手に何らかの通知や要求を正式に伝え、請求を効果的に実現することです。
しかし、内容に曖昧さや誤解を招く表現、さらには法律的に不適切な記述が含まれていると、内容証明自体の効果が損なわれるリスクが生じます。
弁護士は法律の専門家として、内容証明の効果を最大限に発揮するための適切な文言や表現を把握しています。
弁護士が作成した内容証明は、相手に対して明確かつ強固なメッセージを伝えられるでしょう。
そのため、後々の交渉や法的手続きで有利な立場を保つことが可能となります。
弁護士名義の内容証明郵便は多くの人々にとって、法的な問題の重要性を実感させるものです。
実際、弁護士を通じての交渉は相手方に対して強い印象を与え、真剣に対応を求める効果があります。
当事者は状況の重大性を理解し、迅速かつ適切に対応することが求められるでしょう。
弁護士名義で届く心理的なプレッシャーは交渉や紛争解決の過程で、相手方の対応を促進する有効な手段になり得ます。
弁護士には相手方との交渉も任せられます。
通常、一般の人々が直接交渉をおこなう場合、法的背景を十分に理解していないために、不利な条件を受け入れてしまうリスクもあるでしょう。
しかし、弁護士が間に入ることで客観的かつ冷静に状況を分析し、依頼者の利益を最優先して交渉を進められます。
交渉の専門家でもある弁護士は法的知識と経験を駆使して、最も有利な条件での合意を目指して効果的に交渉を進めてくれるでしょう。
内容証明は、紛争解決の手段として効果的な手段です。
しかし、利用方法や取り扱いには注意が必要です。
間違った手順や内容での送付は、意図した効果を発揮できないばかりか、逆に自身の不利益となる可能性もあります。
一方、内容証明を受け取った場合は内容や意図を十分に理解し、適切な対応をおこなう必要があるでしょう。
内容証明の作成や受け取りに関する疑問や不安を抱えている方は、弁護士への相談がおすすめです。
法的な手続きは複雑であり、誤った判断や行動はリスクをともないます。
より確実な結果を得るためにも、弁護士との相談を検討しましょう。
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