相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
相続の覚書を作成したあとに、こんな疑問や悩みを抱えていませんか?
覚書であっても、基本的には契約書などと同じく法的効力を持ちます。
つまり、署名や押印をした当事者には、その内容に従う義務が生じるのです。
ただし、場合によっては覚書が無効になることもあるので、納得がいかない場合には覚書の効力を争うこともできます。
本記事では、相続における覚書の効力が認められる条件や無効となるケース、覚書に納得できない場合の対処法についてわかりやすく解説します。
適切な取り分を相続するためにも、相続の覚書について疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
相続の覚書とは、被相続人や相続人同士が遺産の扱いについて合意した内容を文書化したものです。
覚書は、契約書と同様に、原則として締結した当事者を法的に拘束します。
たとえば、被相続人と長男が、生前に「自宅の土地は長男に相続させる」と取り決めた覚書を作成していた場合、基本的に土地は長男が相続します。
また、相続人同士で「自宅の不動産は長男が相続し、預金は次男と三男で分ける」と取り決めた覚書がある場合、基本的に合意内容をあとから覆えすことはできません。
このように、相続の覚書は当事者の意思を明確に反映させる重要な書面なので、正しく作成されれば遺産分割や贈与の手続きにおいて強い効力を持ちます。
相続の覚書は法的効力を有するのが原則ですが、以下のケースでは相続に関する覚書が無効となる場合があります。
覚書を作成するにあたっては、これらの無効事由にあたらないよう、内容を慎重に確認しましょう。
ここから、それぞれのケースについて詳しく解説します。
覚書は、当事者本人または正式に権限を持つ代理人全員が署名や押印をするのが一般的です。
そのため、署名や押印がひとりでも欠けている場合、法的に効力を持たないと判断される可能性が高くなります。
覚書を締結する際に、被相続人や相続人が「意思能力」を有していなければ、覚書は無効となります。
意思能力とは、物事の是非を判断したり、自分の行動の結果を理解したりする能力をいいます。
意思能力の判断にあたっては一人ひとりの状況や精神状態が考慮され、たとえば被相続人が認知症にかかっていた場合などは、意思能力がなかったと判断されるのが通常です。
ただし、法定後見人や任意後見人が意思能力のない当事者の代わりに署名した場合は、有効となる場合もあります。
相続の対象が特定できない場合や、条項の文言が二通り以上に解釈できる場合など、覚書に記載された内容があいまいであれば、無効と判断されることがあります。
たとえば、覚書に「土地は長男が相続する」と書かれていた場合でも、被相続人が複数の土地を有していた場合、どの土地を相続するか特定できないため覚書は無効とされる可能性が高いです。
遺産分割は被相続人が亡くなったあとに初めておこなえるので、相続人間での生前の遺産分割の合意は法律上認められません。
そのため、仮に被相続人の生前に相続人同士で遺産分割についての覚書を作成していたとしても無効です。
実際に遺産分割をおこなうには、被相続人が亡くなったあとに相続人間で話し合う必要があります。
覚書の内容が違法行為を目的とする、人倫に反する、当事者に過度の負担を強いるなど、法律や社会のルールに反している場合、公序良俗違反として無効と判断されます。
たとえば、覚書に「長男は自宅を相続しない代わりに、今後親の扶養義務を一切放棄する」と書かれていた場合などが該当します。
覚書の締結にあたり、錯誤・詐欺または強迫の事実が認められた場合、自由な意思による合意があったとは評価できないので、覚書は無効となります。
たとえば、長男が「相続する土地の価値は1,000万円」と信じて覚書を作成したものの、実際には5,000万円の価値があったとします。
この場合、土地の評価額に関する錯誤が認められるため、その覚書内での意思表示を取り消すことが可能です。
ただし、勘違いが相続人自身の重大な過失にもとづいていた場合などは、取り消しはできません。
また、ほかの相続人が、土地の相続人に対して「相続する土地の価値は1,000万円」と嘘をついたものの、実際には5,000万円の価値があった場合も、詐欺に該当するため覚書内での意思表示の取り消しが可能です。
なお、相続人ではない第三者が詐欺をおこなった場合、ほかの相続人が詐欺を知っていた、または知ることができた場合に限り、取り消しが認められます。
さらに、ほかの相続人が暴力や脅迫をちらつかせて覚書への署名押印を強制させた場合も、当然その覚書は無効です。
被相続人が生きている間に、相続人が相続放棄に関する覚書を作っても、効力は認められません。
相続開始前に相続放棄を認めると、相続人が圧力や誤解によって不当に権利を手放してしまう可能性があるためです。
また、生前の遺留分放棄も、家庭裁判所の許可がない限り認められません。
家庭裁判所の許可が必要なのは、相続人が圧力や脅しを受けて不当に権利を放棄することを防止するためです。
相続の覚書に納得できない場合には、以下の3つの方法をとりましょう。
ここから、それぞれの対処法について詳しく解説します。
覚書が有効かどうかを確認するには、覚書の内容や作成状況に無効となる理由がないかを検討する必要があります。
たとえば、「当事者の署名・押印がない」「錯誤、詐欺、強迫によって作成された」などの事情があれば、覚書は無効と主張可能です。
加えて、内容が明確で当事者全員の意思が反映されているか、法律やほかの文書と矛盾していないかも確認しましょう。
覚書の解釈に関して相続人間で食い違いが発生した場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てられます。
遺産分割調停は、調停委員が当事者間の話し合いを仲介して解決を図る手続きです。
調停では、調停委員が中立の立場で双方の意見を聞き、遺産を誰がどれだけ取得するかについての合意を模索します。
相続人の根拠のない主張や身勝手な要求は認められません。
相続人全員が調停案に同意すれば調停が成立し、合意内容に沿って遺産分割をおこないます。
相続人の一部でも調停案に同意しない場合は、調停は不成立となり、自動的に「遺産分割審判」に移行します。
遺産分割審判は、裁判所が当事者の主張を聞いたうえで遺産分割の方法について判断を下す手続きです。
審判が確定すると、当事者はその内容に従って遺産を分割しなければなりません。
相続人とのトラブルに直面した場合には、早めに相続問題を得意とする弁護士に相談することが重要です。
弁護士に依頼することで、以下のようなメリットを得られます。
ここでは、相続における覚書の効力に関するよくある質問をまとめました。
似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで疑問を解消してください。
覚書に同意した相続人が死亡した場合、その人が持っていた覚書に関する権利や義務は、原則として亡くなった人の相続人に引き継がれます。
これは、民法で定められた「権利義務の包括承継の原則」に基づきます。
たとえば、覚書において祖父の財産を父親が受け取ることになっていたケースで、父親が死亡した場合、受け取る権利は父親の子どもが承継するのが原則です。
なお、覚書によって義務を負担することになっていた場合でも、基本的にその義務も子どもに引き継がれます。
ただし、以下のような場合には覚書で定めた権利や義務は承継されません。
覚書は遺言書としてそのまま有効になるわけではありません。
遺言書として効力を持たせるには、遺言の種類ごとに法律で定められた要件を守る必要があります。
形式を満たさない覚書は、遺言としての効力を有しません。
遺言書として認められる主な要件は、以下のとおりです。
| 遺言の種類 | 主な要件 |
| 自筆証書遺言 |
|
| 公正証書遺言 |
|
| 秘密証書遺言 |
|
覚書はあくまで当事者間の合意を確認するための書面にすぎないため、登記申請の根拠書類として認められません。
不動産の相続登記をするためには、「遺言書」または「遺産分割協議書」を作成し、戸籍などの必要書類とあわせて法務局に提出する必要があります。
本記事では、相続の覚書の効力についてわかりやすく解説しました。
相続の覚書は法的効力を有しますが、署名や押印がない、強制や錯誤によって作成されたなどの事情があれば、法的効力が無効となるケースもあります。
覚書の無効を主張するためには、遺産分割調停の申立てや、相続問題を得意とする弁護士への相談がおすすめです。
とくに、弁護士に相談すれば、あなたの状況に合った解決策を考えてもらえるので、事態が円滑に解決しやすくなります。
なお、「ベンナビ相続」を利用すれば、相続問題を得意とする弁護士を、相談内容や対応地域に応じて簡単に探せます。
相続は感情的な対立が起きやすく、法的な手続きも複雑です。
納得できない覚書がある場合や、対応に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
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