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事業承継を弁護士に依頼するメリット|経営者が知っておくべき弁護士の役割と選び方

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長年にわたり事業をけん引してきた経営者でも、いつかはリタイヤしなくてはならないため、後継者へ事業承継する必要があります。

しかし、後継者育成や自社株承継など、やるべきことが山積みになるため、以下のような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

  • 事業承継について弁護士に相談したい
  • 事業承継では弁護士にどんなことをしてもらえる?
  • 事業承継を弁護士に依頼する必要はある?
  • どんな弁護士に事業承継を依頼するとよい?

本記事では、事業承継における弁護士の役割、弁護士に依頼したときのメリットや費用を解説しています。 

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事業承継で弁護士にしてもらえること

事業承継は顧問税理士や会計士、コンサルタントなどに依頼するケースもありますが、窓口を一本化すると手間やコストがかからないので、弁護士への依頼をおすすめします。

弁護士は以下の役割を担うため、事業承継に必要な手続きを全てサポートしてもらえるでしょう。

経営状況の分析と事業承継計画の策定

事業承継を弁護士に依頼すると、以下の要素から自社の経営状況を分析してくれます。

  • 資産と負債の状況
  • 損益の状況
  • 株式の保有状況
  • キャッシュフローの状況
  • 相続人の状況
  • 個人資産の状況

経営状況を分析したあとは、親族または役員・従業員への事業承継、あるいはM&Aによる事業承継のいずれかを決定し、最適な事業承継計画を策定します。

後継者育成と法的なサポート

事業承継の方法が決まったら、本格的な後継者育成がスタートします。

弁護士は企業法務や労務などの法律面からアドバイスをおこなうので、後継者が社内トラブルや社外からのクレーム処理に対応できるようになります。

先代経営者が後継者を育成する場合、社業との両立が難しく、計画どおりに育成できないケースがあるので注意してください。

自社株承継のサポート

自社株の保有数は会社の支配権に影響するため、後継者の持株比率を高くしておかなければなりません。

自社株の承継は贈与にあたるので、以下の方法から自社に適したものを選ぶことになります。

  • 暦年贈与
  • 相続時精算課税制度
  • 事業承継税制の活用
  • ホールディングス化

事業承継税制を活用すると自社株にかかる相続税や贈与税の納税を猶予してもらったり免除してもらったりできます。

しかし、かなり多くの要件を満たす必要があるので、弁護士に可否などを判定してもらうとよいでしょう。

なお、ホールディングス化は節税対策を目的としたスキームではなく、銀行融資が前提になるので、金融機関から勧められたときは必ず弁護士に相談してください。

M&Aのサポート

M&Aによって事業承継する場合、弁護士は以下の役割を担ってくれます。

  • 企業調査となる法務デュー・デリジェンス
  • M&Aに関する契約書のチェック
  • 買い手企業や仲介会社とのトラブル対応
  • その他の法的アドバイス

弁護士は仲介会社との交渉もおこなってくれるので、先代経営者や後継者は社業に専念できるでしょう。

また、契約内容に関するトラブルが発生した場合でも、弁護士に依頼しておけばスムーズに解決できます。

金融機関との交渉

経営者が会社の借入れを個人保証している場合、ほとんどの金融機関は個人保証の引き継ぎを要求してくるでしょう。

後継者が難色を示すと事業承継は難しくなりますが、弁護士に依頼すると、後継者に個人保証をつけないように金融機関と交渉してくれます。

また、親族以外の後継者へ事業譲渡する場合でも、弁護士は後継者側の融資もサポートしてくれるので、資金調達もスムーズになります。

取引会社との契約整備

事業承継を弁護士に依頼すると、取引会社との契約整備にも対応してくれます。

現在取り交わしている契約書に不明確な点があると、事業承継の際に契約解除されたり、相手方に不利な条件をうやむやにされたりする可能性があります。

また、受注・発注の契約が経営者同士の口約束だけでおこなわれている場合、早急に契約書を作成・締結しなければなりません。

契約内容を整備するとトラブルを予防できるので、不安材料を抱えたまま後継者にバトンタッチしたくない方は、全て弁護士に洗い出してもらうとよいでしょう。

労務体制の整備

労務体制を整備すると生産性が上がり離職率が下がるので、企業価値を高めた状態で事業承継できます。

弁護士はパワハラやセクハラ、労災などの不安要素をチェックし、従業員が安心して働ける職場環境を整備するためのサポートをしてくれます。

また、労務関係は法改正も多いので、自社内で法改正に対応できていない場合、就業規則や雇用契約書、退職金規定などのチェックも弁護士に依頼するとよいでしょう。

親族の遺留分対策

事業承継では後継者に自社株を集中して承継させることが求められるので、親族の遺留分対策が必要です。

後継者以外の親族に預貯金や不動産を渡す予定でも、会社の業績がよければ自社株の評価額が高くなるため、相対的に預貯金や不動産の価値が下がってしまいます。

株式を分散させると後継者の支配力に影響するので、中小企業の経営者にとっては悩ましい問題になるでしょう。

そこで弁護士は株式を遺留分請求の対象としない除外合意制度を活用して、後継者へスムーズに自社株を承継できるよう、親族と交渉するなどサポートしてくれます。

相続発生後にできることは限られるので、弁護士に遺言書の作成を依頼する、または生前贈与のアドバイスも受けるようにしてください。

家族信託の活用

家族信託で後継者に自社株を信託すると、経営者が認知症になっても後継者が議決権を行使してくれます。

先代経営者は受益者となって自社株の配当を受け取り、亡くなったあとの承継先を後継者にしておけば、事業承継対策として活用できます。

信託契約によって先代経営者に指図権を残すと、自社株を信託しても会社経営にタッチすることも可能です。

弁護士に依頼すれば、信託の細かい条件を相談したり信託契約書の作成を任せられたりできます。

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事業承継を弁護士に依頼するメリット

事業承継は失敗が許されないため、計画的かつ慎重に手続きを進める必要があります。

経営者個人の遺産相続も考えておかなければなりませんが、弁護士に依頼すると以下のメリットがあるので、ベストな状態で後継者にバトンタッチできるでしょう。

事業承継の前に自社の問題を解決できる

自社の経営状態を分析した結果、法務や財務面などの問題が見つかった場合でも、弁護士に依頼すると事業承継の前に解決できます。

経営者の交代は取引先との関係性や従業員の士気にも影響するので、不安材料を取り除き、後継者がスムーズに受け入れられる体制を構築するべきでしょう。

また、経営上のリスクを解消して企業価値を高めると、M&Aによる事業承継も成功しやすくなります

書類作成を代行してもらえる

事業承継を弁護士に依頼すると、口約束になっていた契約の書面化や株式譲渡契約書などの作成、株主への通知など、あらゆる書類作成を代行してもらえます。

書類を整備すると取引先との付き合いがスムーズになり、社内のトラブルも起きにくくなるので、訴訟などのリスクも回避できるでしょう。

贈与契約書や遺言書の作成も依頼しておけば、個人名義の財産についても承継者が明確になり、相続争いを防止できます。

事業承継を法律面からサポートしてもらえる

事業承継には会社法や税法などの専門知識が必要になるので、弁護士に法律面をサポートしてもらいましょう。

社内だけで対応すると契約書の法的有効性を担保できなかったり、想定外の税金が発生したりする可能性があるため、取引先との付き合いや事業資金に影響します。

社内規程やクレームの処理体制、労務体制などが不十分であれば、事業承継の前に最適化しておく必要があります。

法律面を整備すると経営体制が強化されるので、不安材料があるときは弁護士にサポートを依頼してください。

事業承継のスケジュールを圧縮できる

事業承継は3年~10年程度の期間を必要としますが、弁護士に依頼するとスケジュールの圧縮が可能になります。

後継者や幹部候補の育成、財務体質の改善など、時間と労力がかかる作業を弁護士に依頼しておけば、当初の計画を上回るスピードで事業承継できるでしょう。

経営者が高齢な場合は事業承継を急がなければならないので、社内の体制を整備しつつ、家族信託で認知症リスクに備えるなど、必要な手続きは全て弁護士に依頼してください。

相続トラブルを回避できる

相続トラブルが発生すると後継者の自社株承継に支障をきたしますが、弁護士に事業承継を依頼している場合、生前贈与や遺言書の作成をサポートしてもらえます。

特別受益は相続財産の減少につながるので、特別受益に配慮しておけば、遺産分割の争いを防止できるでしょう。

また、法的効力のある遺言書を作成すれば、遺産相続をスムーズに進めやすくなります。

なお、遺留分の侵害は除外合意制度によって回避できますが、後継者以外に残す財産の評価額が高ければ、遺留分対策が不要になる可能性もあります。

個人の財産まで配慮が行き届かないときは、弁護士に財産評価や相続対策を依頼してください。

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事業承継を弁護士に依頼したときの費用

事業承継を弁護士に依頼すると、着手金や報酬金などの費用が発生します。 弁護士費用の報酬体系は、各法律事務所によって異なります。

特に決まった相場はありませんが、一般的な報酬体系は以下のとおりです。

法律相談料

弁護士の法律相談料は30分5,500円、または1時間1万1,000円程度が目安になります。

事業承継の相談は複数回にわたるケースが多いので、決算書や定款などを準備しておくと相談時間を短縮できるでしょう。

なお、初回の法律相談料を無料で対応している弁護士もいますので、問い合わせてみてください。

また顧問契約を締結した場合、顧問弁護士は一定の時間までの相談については定額の顧問料の範囲内で相談できるケースが一般的です。

着手金

事業承継の着手金は会社の規模や資産によりますが、一般的には30万~50万円程度になるでしょう。

着手金は問題解決の成否に関わらず発生するので、弁護士と委任契約を結んだあとが支払いタイミングになります。

一部の弁護士は着手金を無料にしていますが、その分報酬金が少し高めに設定されているので、支払総額に大きな差はありません。

報酬金

弁護士の報酬金に統一基準はありませんが、事業承継の方法により、以下のような報酬体系になっているケースが一般的です。

【親族または役員・従業員への事業承継】

依頼者の経済的利益 報酬金
300万円以下 ~13.2万円
300万円超~3,000万円 ~66万円+6.6万円
3,000万円超~3億円 ~330万円+39.6万円
3億円以上 経済的利益の0.66%+171.6万円

【参考記事】顧問弁護士相談広場 | 事業承継を弁護士に依頼した際の役割・メリットと費用相場

【M&Aによる事業承継】

株式の譲渡価格 報酬金
5億円以下 ~2,500万円
5億円超~10億円以下 2,500万円超~4,000万円
10億円超~50億円以下 4,000万円超~1億5,000万円
50億円超~100億円以下 1億5,000万円超~2億円
100億円超 2億円超

【参考記事】顧問弁護士相談広場 | 事業承継を弁護士に依頼した際の役割・メリットと費用相場

なお、依頼者の経済的利益とは、事業承継の解決によって得られる利益を金銭に換算したものです。

実費と日当

実費には交通費や通信費、書類の作成手数料やコピー代などが含まれています。

コピー代は1枚あたり20円~40円程度になりますが、セット料金にしている弁護士もいるので、相談時によく確認してください。

また、日当は出張対応などが必要となった場合に発生し、1時間1万円程度が目安になるでしょう。

事業承継はどんな弁護士に依頼するべきか?

弁護士ごとに得意分野があり、得意・不得意が異なるので慎重に選ぶことが必要です。

事業承継に詳しいだけではなく、個人の遺産相続に精通しているかどうかも弁護士選びの判断基準になります。

土日や祝日でも相談できる弁護士

事業承継を弁護士に依頼するときは、土日や祝日でも相談できるかどうかチェックしておきましょう。

現役の経営者は社業が忙しいため、平日しか営業していない法律事務所の場合、事業承継が得意な弁護士であっても相談する時間を確保するのが難しくなります。

業種によっては夜間しか相談できないケースもあるので、柔軟に対応してくれる弁護士を選んでください。

企業法務に詳しい弁護士

弁護士は法律の専門家ですが、注力している分野が刑事事件や交通事故などの分野である場合には必ずしも事業承継に詳しいとは限りません。

事業承継を依頼するときは企業法務に詳しい弁護士を選んでください

企業法務に詳しい弁護士であれば、知的財産の管理や債権回収のノウハウ、労務管理や株主対策など、事業経営に必要なサポートを全て任せられます。

事業承継の成功実績が豊富な弁護士

事業承継を得意としている弁護士の場合、法律事務所のホームページに解決実績を掲載しているケースがあります。

依頼件数や解決件数、具体的な成功事例などの掲載があれば、安心して事業承継のサポートを任せられるでしょう。

成功事例の掲載があれば、自社と同業種の事業承継を手掛けているかどうかチェックしてください。

自社株評価や税金にも詳しい弁護士

事業承継には贈与税や相続税の知識も必要になるので、非上場株式の評価や税金にも詳しい弁護士あるいは税理士等の専門家と連携している弁護士を選びましょう

業績のよい企業は自社株の評価額が高いため、後継者に株式を移転する際、高額な贈与税や相続税がかかる可能性があります。

税金対策は事業の存続にも影響するので、財産評価や税制にも詳しい弁護士や税理士へ事業承継のサポートを依頼してください。

相性がよい弁護士

事業承継はM&Aのスキームでも1年~3年程度かかるため、弁護士との付き合いも長くなります。

性格的に合わない弁護士は依頼者のストレスになってしまうことから、必ず相性のよい弁護士を選んでください。

直接会って話すと弁護士の人柄もよくわかるので、初回の無料相談を活用してみましょう。

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事業承継はいつ始めるべき?

事業承継を始めるタイミングは企業ごとに異なりますが、経営者の年齢が60歳を超えているかどうかがひとつの判断基準になるでしょう。

厚生労働省が公表する「若年性認知症実態調査結果概要」によると、認知症の有病率は60歳から急激に高くなり、健康にみえても認知症予備軍になっているケースがあります。

「60歳はまだ若い」と思われるかもしれませんが、事業承継にかかる期間も考慮しておかなければなりません。

中小企業庁が作成した「事業承継ガイドライン」では、事業承継にかかる期間を意識調査し、以下のように公表しています。

  • 3~5年程度:全体の26.9%
  • 6~9年程度:全体の13.8%
  • 10年以上:全体の11.2%

事業承継に3年以上かかると考えている経営者は全体の51.9%になっており、10年以上かかると考えている経営者も少なくありません。

また、60代以降の経営者は50%以上が事業承継を進めている、もしくは承継プランを策定しているようです。

【参考】 令和2年3月公表の若年性認知症実態調査結果概要(厚生労働省) 令和4年3月改訂の事業承継ガイドライン(中小企業庁

親族や役員に対し事業承継する場合

親族や役員へ事業承継する場合、後継者の育成期間も含め一般的には5年~10年程度かかります。

自社に勤務しており、社業をある程度理解している場合は期間を短縮できる可能性もありますが、他社から人を招いた場合など引き継ぎに時間がかかるケースも考えられます。

このように長い時間が必要となるケースもあるので、先代経営者が高齢になっているときは、すぐにでも事業承継に着手する必要があります。

M&Aの場合

M&Aによる事業承継の場合、引き継ぎまで含めて1年~3年程度の期間が必要です。

具体的にはM&Aを仲介会社に依頼して譲渡実行するまで半年~1年、業務の引き継ぎをするのに半年~2年程度の時間がかかります。

M&Aによる事業承継では、経験豊富な譲渡先の社長が引き継ぐのが一般的です。

そのため親族や役員に引き継ぐ場合と違い、育成期間を考える必要がなく、事業承継にかかる期間も短縮できます。

まとめ|事業承継を検討中の方は早めに弁護士へ相談を

中小企業は後継者不足が問題となっており、優良企業が黒字のまま廃業するケースも少なくありません。

代表者の高齢化も進んでいることから、親族や役員への事業承継、またはM&Aが可能であれば、できるだけ早めに準備しておく必要があるでしょう。

また、中小企業オーナーは個人資産も多いので、事業承継と家族の遺産相続を同時に考えることになります。

自社株承継をめぐって家族間の対立が発生すると、後継者の議決権に影響が出るので注意してください。

事業承継は自分が元気なうちしかできませんが、なかなかきっかけを掴めない方は、まず弁護士に相談だけでもしてみましょう

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この記事の監修者
アシロ社内弁護士
この記事は、株式会社アシロの「ベンナビ相続編集部」が執筆、社内弁護士が監修しました。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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