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遺言執行者は相続登記の単独申請が可能!必要書類や流れもわかりやすく解説

遺言執行者は相続登記の単独申請が可能!必要書類や流れもわかりやすく解説
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遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実現するために、相続財産の管理などの手続きを代行する権利を持つ人のことです。

相続登記は、被相続人の死亡によって発生する不動産の名義変更手続きであり、相続人が複数いる場合には特に煩雑になることがあります。

しかし、遺言書で遺言執行者が指定されていれば、遺言の内容に基づき、相続登記をその執行者が単独でおこなえる場合があります。

たとえ法定相続人が複数いても、遺言書の内容が明確であり、執行者に登記申請権限が与えられていれば、他の相続人の協力なしで登記手続きを完了でき、スムーズな相続が実現可能です。

本記事では、遺言執行者による相続登記や遺贈登記の基本知識から、具体的な手続きの流れ、必要書類、申請書の書き方までをわかりやすく解説します。

さらに、専門家に遺言執行者を依頼するメリットについても詳しく紹介するので、スムーズな相続手続きに向けた情報を探している人は、ぜひ参考にしてください。

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遺言執行者であれば相続登記の単独申請が可能

遺言書により遺言執行者が指定されている場合、原則として遺言執行者は不動産の相続登記を単独で申請できます。

これは、遺言内容の実現を担う遺言執行者に広範な権限が認められているためで、相続人全員の同意や委任状が不要な点で大きなメリットがあります。

まず、遺言執行者による単独申請の具体的な条件や、委任状が不要である理由について確認しておきましょう。

遺言執行者が相続登記の単独申請をおこなえる条件

遺言執行者が相続登記を単独で申請するためには、以下の3つの条件を満たしている必要があります。

  1. 法的に有効な遺言書のなかで遺言執行者が指定されている
  2. 遺言書に「特定財産承継遺言」が含まれている
  3. 2019年7月1日以降に作成された遺言書である

特定財産承継遺言とは、特定の相続不動産を特定の相続人に相続させると記載された遺言書のことです。

具体的には、「自宅の土地と建物は長男に相続させる」といった内容が特定財産承継遺言にあたります。

なお、2019年の法改正以前では、遺産に属する特定財産承継遺言があった場合でも、遺言執行者は相続登記を単独では実行できませんでした。

たとえば、遺言書に「被相続人所有の土地と建物は長男Aに相続させる。

遺言執行者は次男Bとする」という記載があった場合、土地と建物の相続登記ができるのは相続人Aのみで、遺言執行者であるBには相続登記申請の権限は持たなかったです。

しかし現在では、法改正によって2019年7月1日以降に作成された遺言書に関しては、相続人本人に加えて、遺言執行者も単独で登記申請ができるようになりました。

遺言執行者が相続登記をおこなう場合、委任状は不要

通常、相続登記を申請するには、全ての相続人が共同で申請するか、代表者に対して他の相続人から委任状を取得する必要があります。

しかし、遺言執行者がいる場合はこの限りではありません。

民法第1012条などにより、遺言執行者には相続財産の管理および処分に必要な一切の権限が付与されており、相続登記の手続きも単独でおこなうことができます

たとえば、遺言で「不動産は長男Aに相続させる」と明記されていれば、遺言執行者は他の相続人の協力・承認を得ることなく、自らの責任で登記手続を完了できるのです。

実務上も、登記申請に際して他の相続人からの委任状提出は不要とされており、遺言執行者の印鑑証明書や遺言執行書であることを示す遺言書があれば手続きは進行します。

遺言執行者がいる場合、遺贈登記の申請ができるのは遺言執行者のみ

遺贈とは、遺言書に基づいて不動産などの財産を他人へと贈与することです。

遺贈を受けて財産を受け取る人を受遺者と呼びます。

通常、被相続人の財産は相続人へと相続されますが、遺言書に記載があれば、相続人以外の第三者でも受遺者となり財産を受け取ることが可能です。

遺贈によって受け取った不動産の登記申請については、受遺者が自らおこなうのが通常ですが、遺言執行者が指定されている場合は話が異なります。

民法第1012条および不動産登記規則等により、遺言執行者が選任されている場合、遺言内容の実現に必要な行為については、原則として遺言執行者のみが単独でおこなう権限を持ちます。

そのため、遺贈登記も遺言執行者が単独で申請することが義務付けられており、受遺者本人が勝手に手続きすることはできません。

なお、遺言執行者が指定されていない場合は、相続人全員と受遺者による共同申請が必要です。

相続法改正で遺言執行者の法的地位や権限はどう変わった?

相続法改正前の民法では、遺言執行者の法的な立場について「相続人の代理人とみなす」との規定があるだけで、その権限や役割は必ずしも明確とはいえませんでした。

そのため、遺言執行者と相続人の間で意見が食い違い、紛争に発展するケースも見られていました。

そこで、2019年7月1日施行の相続法改正により、遺言執行者の地位と権限が明確化され、これまでは曖昧だった実務の扱いが法制度として裏付けられました

まず、従来は「相続人の代理人」とみなされるだけで法的地位に不明確さがありましたが、改正後の民法1012条1項では「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他必要な行為を行う権利義務」を持つことが定められました。

これにより、遺言執行者は遺言者の最終意思を実現すべき独立した主体として法的に認められたといえます。

ほかにも、以下のような点において、遺言執行者の地位や権限が明文化されました。

  • 「遺言執行者としての行為は、相続人に対して直接効果を生じる」と明記され、執行者の行動が直ちに遺言内容の効力となることが明文化された(民法1015条)
  • 遺言執行者のみが遺贈の履行や特定財産承継遺言の登記申請を単独で行えることがはっきり示され、相続人全員の同意や委任状がなくとも、円滑に遺言内容を実現できるようになった(民法1012条2項・1014条2項)
  • 遺言執行者がいる場合、相続人による執行の妨害行為は無効とされることが明文化された(民法1013条)
  • 遺言執行者の復任権が認められ、執行者による司法書士などへの委任が容易になった(民法1016条)

以上のように、相続法改正は遺言執行者の権限を法的に強化し、遺言の内容実現を円滑にするための支援を意図したものといえるでしょう。

遺言執行者が相続登記をおこなう流れ

遺言執行者が選任されている場合、相続登記は他の相続人の同意や委任状を必要とせず、遺言執行者が単独で進められます

遺言執行者が相続登記をおこなう際は、以下のような流れにしたがって進めましょう。

  1. 必要書類を集める
  2. 登記申請書を作成する
  3. 法務局で登記申請をおこなう
  4. 登記完了を確認する

それぞれのステップで必要となる書類や注意点について詳しく解説します。

1.必要書類を集める

最初に、相続登記に必要な書類を準備します。

遺言執行者が相続登記を単独でおこなう際に必要な書類は主に以下のとおりです。

  • 遺言書(公正証書または家庭裁判所で検認済みのもの)
  • 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本
  • 被相続人の住民票(除票)、または戸籍附票(除附票)
  • 相続によって不動産を取得する相続人の戸籍謄本
  • 相続によって不動産を取得する相続人の住民票、または戸籍附票
  • 不動産の固定資産評価証明書、登記事項証明書 など

上記に加え、遺言執行者の就任を証明する書類や、相続関係説明図を添えると手続きがスムーズになります。

また、相続登記を特定財産承継遺言の内容通りに進めるのであれば、被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本を揃える必要はありません。

なお、遺言書の内容により求められる書類が変わることがあるため、法務局や専門家に問い合わせて確認しておくと安心です。

2.登記申請書を作成する

必要書類を集めたら、登記申請書を作成します。

申請書には「所有権移転登記」や「遺言による相続」などの登記目的・原因を明記し、不動産の所在地や地番、家屋番号などを正確に記載します。

申請人欄には遺言執行者の氏名と住所を記載し、署名または押印をします。

提出する際には印鑑証明書の添付が求められることもあるためあらかじめ用意しておくのがおすすめです。

また、登記原因証明情報として遺言書の写しなども添付する必要があります。

申請書の書き方は「遺言執行者による相続登記申請書の書き方」にてさらにわかりやすく紹介します。

3.法務局で登記申請をおこなう

登記申請書と必要書類がそろったら、法務局に提出します。

提出方法には、窓口での直接提出、郵送、オンライン申請の3つがあります。

オンライン申請は登録作業で手間がかかるため、専門家以外の遺言執行者が初めて申請する場合は、窓口または郵送での提出が無難です。

郵送の場合は返信用封筒や必要な添付資料を忘れずに同封しましょう。

申請が受理されると、法務局から登記完了予定日が伝えられ、完了後に必要な書類が返送されます。

4.登記完了を確認する

登記申請が完了すると、登記識別情報通知や登記完了証が発行されます。

これらの書類が届いたら、不動産登記簿を確認し、登記内容が正しく反映されているかをチェックしましょう。

誤記や不備がある場合は、申請から1週間〜2週間ほどで法務局から連絡が届くので、指示に従って修正してください。

登記完了を確認したら、相続人全員にも報告しておきましょう。

なお、登記識別情報などの重要書類は厳重に保管しておくことが求められます。

完了後に手元に残る書類を整理し、万が一のトラブルに備えておきましょう。

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遺言執行者による相続登記申請書の書き方

遺言執行者が提出する相続登記申請書のサンプルは、以下のとおりです。

相続登記申請書のサンプル

このサンプルでは、不動産の名義人であった東京太郎さんが亡くなり、妻である東京花子さん、長男の東京一郎さん、次男の東京次郎さんがそれぞれ法定相続分通りに不動産を相続した場合を想定しています。

各記載項目について、簡単に概要をまとめると以下のとおりです。

項目 概要
①登記の目的 今回の申請でおこないたい内容を明確に記載します。遺言執行者による相続登記の場合は、「所有権移転」と記載するのが一般的です。
仮に被相続人の持っていた権利が不動産100%の所有権ではなく共有持分であった場合は、その持分の移転を申請するため、「所有権移転」ではなく「東京太郎 持分全部移転」のように記載する必要があります。
②原因 登記の原因となる出来事とその日付を記載します。相続登記の場合、原因は「令和〇年〇月〇日 相続」と記載します。
日付は被相続人が亡くなった日を記入します。
西暦ではなく、法務省の規定に従い元号(令和など)で記載しましょう。
③相続人 相続登記に関わる全ての相続人を、氏名・住所・持分の割合とあわせて記載します。
遺言執行者が申請者である場合でも、法定相続人や遺言により指定された受遺者の情報を正確に記入する必要があります。
④添付情報 「登記原因証明情報」(例:被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など)および「住所証明情報」(例:住民票など)を記載します。
⑤登記識別情報の通知希望の有無 「登記識別情報」とは、登記済権利証にあたるもので、今後の売買や贈与の際に必要になります。特別な理由がない限り通知を受けるようにしましょう。
⑥申請日 実際に登記申請をおこなう日付を記載します。
これは法務局に書類を提出する日となるため、事前に書類を準備して日付を空欄にしておき、提出時に記入するケースもあります。
元号表記(例:令和〇年〇月〇日)を用い、提出先の法務局名も併記します。
⑦課税価格・登録免許税 「課税価格」欄には固定資産評価証明書に記載された評価額を、「登録免許税」欄にはその金額に相続登記の税率0.4%を掛けた金額を記載します。
⑧不動産の表示 相続登記の対象となる不動産について、登記簿に記載された情報を基に正確に記入します。
不動産番号・所在・地番・地目・地積、また建物がある場合は家屋番号・構造・種類・床面積などを記載します。

これらの記載情報に不備や誤記があると、登記が受理されず、相続手続きが遅れる原因となります。

自分で提出する場合も、法務局や自治体の無料相談などを活用して抜け漏れがないか確認しておくのがおすすめです。

遺言執行者を専門家に任せるメリット

遺言執行者を弁護士や司法書士などの専門家に任せることで、以下のようなメリットを得ることができます。

  • 法律に則った手続きができる:登記や名義変更など、法的知識が必要な手続きも安心して任せられます。
  • 手続きをスムーズに進められる:専門家は必要書類や申請方法に精通しており、ミスや漏れを防ぎながら進行できます。
  • 相続人間のトラブルを回避しやすい:中立な第三者が執行者となることで、感情的な対立や誤解が起きにくくなります。
  • 煩雑な作業を全て任せられる:戸籍の収集や財産の整理など、多くの手続きを代行してくれるため、遺族の負担を軽減できます。

このように、遺言執行者を専門家に依頼することで、相続手続きを確実かつ円滑に進められる大きな利点があります。

また、2019年の法改正以後、遺言執行者に指定された人が、相続登記手続きを専門家へと依頼することが認められやすくなりました。

相続でトラブルが起きないよう、あらかじめ信頼できる専門家に依頼しておくと安心です。

さいごに|相続登記で不安な点があれば専門家に相談を!

本記事では、遺言執行者の相続登記に関する基礎知識や、手続きの流れ、相続登記を専門家に依頼するメリットなどについて詳しく解説しました。

相続登記は、遺産の分割や遺言内容の実現に必要不可欠な手続きです。

特に遺言執行者が指定されている場合、相続登記や遺贈登記を単独でおこなえるなど、一般の相続手続きとは異なるポイントも多く存在します。

しかし、申請書の作成や添付書類の準備などには専門的な知識が求められ、初めて手続きをする場合はミスも起こりがちです。

そのため、不明点や不安な点がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。

専門家に依頼することで、確実でスムーズな登記手続きが可能になり、相続人間のトラブル防止にもつながります

円満な相続のためにも、早めの相談がおすすめです。

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この記事の監修者
金森総合法律事務所
金森 将也 (愛知県弁護士会)
23年以上のキャリアを持ち、高度な専門知識で安心のアドバイスを提供。「話しやすさ」と「的確な見通しの提示」を大切にしています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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