相続に関する弁護士相談をご検討中の方へ
亡くなった親族の遺品から「電話加入権」と記載された証書が見つかり、どのように扱えばよいのか困っていませんか?
電話加入権は、預貯金や不動産などと同じように相続財産に該当します。
かつては数万円の価値があった電話加入権も、今では価値が大きく下がっていますが、だからといって放置してはいけません。
NTTで承継や譲渡、解約など必要な手続きをおこなわないと、まったく使用していないにもかかわらず回線使用料がかかり続けたり、その料金を誰が負担するかでほかの相続人とトラブルになったりするおそれがあります。
本記事では、電話加入権は相続財産になるかどうかや相続税評価額の算出方法、相続手続きの方法について解説します。
親族が亡くなった際、遺品の中から「電話加入権」に関する書類が見つかることがあります。
電話加入権とは、NTTの固定電話を契約・利用するために必要な権利のことです。
「施設設置負担金」とも呼ばれ、預貯金や不動産などと同じように相続財産に含まれます。
現在はスマートフォンやひかり電話の普及によって価値が大きく下がっていますが、価値が低いからといって放置してはいけません。
また、権利を購入する人も減っていますが、亡くなった方が高齢である場合、電話加入権を保有しているケースも多いです。
電話加入権を保有している方が亡くなったら相続するかどうかを相続人全員で話し合い、NTTで手続きをおこなう必要があります。
そもそも、亡くなった方が電話加入権を保有していたかがわからないケースも少なくありません。
被相続人が電話加入権を持っているか確認したいときは、まず被相続人宛に届いていた電話料金の請求書や領収書を探してみてください。
請求書には契約内容が記載されているため、加入権の有無が判断できます。
請求書が見つからない場合は、被相続人の預金通帳やインターネットバンキングの取引履歴を確認しましょう。
毎月「NTT東日本」「NTTファイナンス」などから決まった額の引き落としがあれば、何らかの契約が存在するはずです。
それでもわからないときは、NTTに直接問い合わせて確認するのが確実です。
固定電話から局番なしの「116」に電話し、契約者名や住所を伝えれば契約内容を照会できます。
なお、「加入電話・ライトプラン」や「INSネット64・ライト」は、契約時に施設設置負担金が発生せず電話加入権がないプランです。
名義変更か解約どちらかの手続きをする必要はありますが、相続する権利そのものが存在しないため相続の対象にはなりません。
相続税の申告が必要なケースであれば、電話加入権を財産として計上する必要があります。
2020年12月31日までの相続では、電話加入権は個別に評価しなければならず、国税庁が定める全国一律1,500円の「標準価額」をもとに申告するのが一般的でした。
しかし、時代とともに電話加入権の価値が大きく下がったことを受け、2021年1月1日以降に発生した相続については、税法上の評価方法が変更されています。
現在のルールでは、電話加入権を個別に評価せず、1つあたりの価格が5万円以下の家具や家電、衣類などと同じ「家庭用財産(家財一式)」として、一括で評価してもよいとされています。
金額は、例えば「家財一式10万円」など、被相続人の生活状況に応じて10万円〜50万円程度で評価するケースが多いですが、電話加入権は少額であるため相続税額に与える影響はほとんどないと考えてよいでしょう。
ただし、被相続人が事業をおこなっており電話加入権を多数保有していた場合は、家庭用財産と一括りにせず、以前のルールに準じて1加入権あたり1,500円で評価するなど、個別に評価したほうがよいケースもあります。
いずれにしても、金額が小さいからといって申告が不要になるわけではないことを覚えておきましょう。
スマートフォンが普及した現在、固定電話の電話加入権に大きなメリットを感じない方が多いかもしれません。
しかし状況によっては、相続によって得られる利点もあります。
具体的なメリットは、以下のとおりです。
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
電話加入権を相続するメリットのひとつは、被相続人がこれまで使っていた電話番号をそのまま引き継げることです。
例えば、被相続人が営んでいたお店を相続人が引き継ぐ際、長年使ってきた電話番号を変えると顧客や取引先に要らぬ混乱を与えるおそれがあります。
また、職場や病院などにその電話番号を緊急連絡先として登録している場合も、番号が変わると変更手続きをおこなわなければなりません。
その点、電話加入権を相続すればこれまで使っていた固定電話番号をそのまま使い続けられます。
そのほか、クレジットカードやローンの審査を受ける際、固定電話の存在がプラスに働く可能性がある点もメリットです。
電話加入権を相続するメリットとして、災害時の連絡手段としての役割も挙げられます。
光回線を使用するひかり電話などは、停電時にルーターの電源が落ち、通話ができなくなってしまいます。
また、災害時はスマートフォンもなかなかつながりません。
しかし、従来のアナログ回線なら、電話基地局に非常用発電設備が備わっているため、電話基地局が無事であれば停電時でも通話できる可能性があります。
ただし、これはあくまでも停電に対応した電話機を使用している場合です。
例えば、ACアダプターが必要な電話機など、停電に対応していない電話機は停電時に利用できない点に注意しましょう。
被相続人が残した電話加入権は、必ずしも相続しなければならないわけではありません。
例えば、実家が空き家になり、誰も固定電話を使用しないのであれば、名義変更以外の方法を選択したほうがよいでしょう。
ただし、電話加入権は価値の有無にかかわらず相続財産に該当するため、たとえ不要でもそのまま放置してはいけません。
ほかの財産と同じように相続人全員で話し合い、NTTで正式な手続きをおこなう必要があります。
特に、被相続人に多額の借金があり、相続放棄を検討している場合は注意が必要です。
電話加入権を自分に名義変更したり解約したりすると、財産を処分したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。
相続放棄を検討しているときは相続財産には手を付けず、まずは弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
電話加入権を今後どうするかが決まったら、NTTで正式な手続きをおこないましょう。
手続きには大きく分けて以下の5種類があり、誰が権利を引き継ぐのか、今後利用するかどうかなどによって必要な書類や手数料が異なります。
ご自身の状況に合った方法を選択するために、まずはそれぞれの内容をしっかり確認することが重要です。
電話加入権を配偶者や子どもなどの法定相続人が引き継ぐ場合は、承継手続きをおこないます。
これは通常の相続と同じ位置づけで、手数料はかかりません。
手続きには以下の書類が必要です。
|
被相続人の死亡が確認できる書類 |
・死亡診断書 ・戸籍謄本 ・戸籍抄本 ・除籍謄本 ・住民票除票 など |
|
相続関係が確認できる書類 |
・被相続人との関係がわかる戸籍謄本 ・検認済みの遺言書(相続関係が確認できる場合) ・遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書 ・法定相続情報一覧図の写し など ※承継者が配偶者、子ども、父母、祖父母、兄弟姉妹、甥姪以外の場合 |
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承継者の本人確認書類 |
・運転免許証 ・マイナンバーカード ・健康保険証+国民年金手帳 ・健康保険証+住民票 ・国民年金手帳+戸籍抄本 など 【有効期限がない証明書の発行期限】 ・東日本:発行から3ヵ月以内 ・西日本:発行から6ヵ月以内 |
手続き方法は、NTT東日本と西日本で異なります。
東日本の場合は、公式ホームページ上に届出書のフォーマットがありません。
「116」に電話して書類を送ってもらうか、Web申込みで対応しましょう。
西日本については、ホームページから届出書がダウンロードできます。
そのほか、1回線だけであればWeb申込みも可能です。
それぞれ、詳細は公式ホームページを確認してください。
法定相続人以外の方が電話加入権を引き継ぐときは、譲渡手続きが必要です。
遺贈で譲り受ける場合、法定相続人が引き継ぐ際と同じ「被相続人の死亡が確認できる書類」と「承継者の本人確認書類」に加えて、遺言書の提出が求められます。
遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言で検認が済んでいない場合は、必ず譲渡手続き前に検認を済ませておきましょう。
検認とは、家庭裁判所が残された遺言書の状態や内容を確認し、存在を認めるための手続きです。
検認前に遺言書を開封すると5万円以下の過料が課されるため、検認前に開封しないよう注意しましょう。
公証役場で作成してもらう公正証書遺言であれば、検認は不要です。
なお、譲渡手続きには1加入権あたり880円の費用がかかります。
電話加入権が不要なら、解約手続きをおこないます。
NTT東日本・西日本ともに、公式ホームページの専用フォームからオンライン手続きが可能です。
Webでの手続きが難しい場合は「116」に電話し、解約したい旨を伝えましょう。
それぞれ、画面の指示に従って必要事項を入力してください。
契約者死亡による解約の場合、契約者の死亡を証明する書類や手続きをおこなう方の本人確認書類の提出を求められます。
どのような書類を用意すべきかは、「法定相続人が引き継ぐ場合」を参考にしてください。
なお、解約後は加入権が消滅します。
一度解約すると復権できないため、いずれ利用するつもりなら、このあと解説する利用休止や一時中断を検討するのがおすすめです。
電話加入権について、「しばらく使用する予定はないが、権利だけは残しておきたい」というときは、利用休止の手続きが便利です。
利用休止をすると、毎月の回線使用料を負担せず権利を保持できます。
ただし、5年ごとの更新が必要です。
更新を忘れて10年が経過すると、権利は自動的に消滅するため注意しましょう。
また、利用休止をするなら、先に承継や譲渡手続きをおこない、被相続人から新たな契約者に名義を変更しておく必要があります。
利用休止時・再開時には以下の工事費が発生し、利用再開時には電話番号が新しくなる点にも注意しましょう。
|
利用休止時 |
再開時 |
|
3,300円〜 ※工事内容によって異なる場合あり |
訪問不要:3,300円〜 要訪問:2万2,000円〜 |
なお、利用休止も、NTT東日本・西日本ともに公式ホームページからオンラインでおこなえます。
将来、また同じ家で同じ電話番号を使う予定があるなら、一時中断を選択する方法があります。
一時中断の場合、利用休止とは異なり再開後も同じ電話番号を利用可能です。
期限は定められておらず、更新手続きも要りませんが、中断中も回線使用料がかかる点に注意しましょう。
また、先に承継手続きや譲渡手続きをおこない、被相続人から新たな契約者に名義を変更しておく必要があります。
利用休止と同様に、中断時と再開時には工事費がかかる点にも注意が必要です。
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利用休止時 |
再開時 |
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3,300円〜 ※工事内容によって異なる場合あり |
訪問不要:3,300円〜 要訪問:2万2,000円〜 |
一時中断の手続きは、NTT東日本・西日本ともに公式ホームページの専用フォームからおこなえます。
予約受付後に担当者から詳細確認の電話が入るため、対応するようにしましょう。
ここからは、電話加入権の相続についてよくある質問を紹介します。
被相続人が亡くなったあとに電話加入権を放置した場合、電話をまったく利用していなくても回線使用料がかかり続けます。
また、その料金を誰が負担するかでトラブルになる可能性もあります。
そのため、価値がほとんどないからといって安易に考えず、ほかの相続財産と同じように、相続人同士で誰がどのように手続きするかを話し合い、速やかに行動することが重要です。
なお、相続人同士の仲が悪く、話し合いがまとまらない、誰も手続きに協力してくれない、といったケースも考えられます。
その場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、裁判所の調停委員を介して話し合う方法もあります。
電話加入権のためだけに調停を起こすのは現実的ではありませんが、ほかの遺産分割と合わせて解決を目指す際に、このような選択肢があることも知っておきましょう。
遺産分割でもめている、あるいはもめそうなときは、まずは相続問題を得意としている弁護士に相談することをおすすめします。
電話加入権を解約しても、契約時に支払ったお金は一切返金されません。
契約時に支払った施設設置負担金は、かつて電話網を普及させるために、契約者が建設費の一部を前払い的に負担していたものです。
NTTは、負担金がある代わりとして月々の回線使用料を安く設定しているため、解約しても返金はおこなわないとしています。
少しでもお金に換えたい場合は、専門の買取業者に売却する方法もありますが、買取価格は1,000円程度と非常に安く、手続きの手間を考えると現実的ではありません。
電話加入権が相続財産になるかどうかや相続税評価額の算出方法、相続手続きについて解説しました。
電話加入権は相続財産に該当します。
放置すると回線使用料がかかり続けるほか、誰が支払うかでトラブルになる可能性があるため、必ず相続人全員で話し合い、承継・譲渡・解約・利用休止・一時中断のいずれかの手続きをおこないましょう。
相続税の評価については、2021年以降の相続であれば個別に計算する必要はなく、ほかの家庭用財産とまとめて申告可能です。
また、手続きは慎重におこなうことが重要です。
特に、相続放棄を検討している場合は、財産を処分したとみなされるリスクがあるため解約や名義変更をしてはいけません。
利用休止や一時中断の際に、先に相続人への名義変更が必要になる点も忘れないようにしましょう。
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