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遺産の範囲で揉めたときにできる遺産確認訴訟とは?手続きの流れや注意点について

吉田 朋師
監修記事
遺産の範囲で揉めたときにできる遺産確認訴訟とは?手続きの流れや注意点について
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「この預貯金や不動産は、本当に遺産に含まれるのだろうか?」

家族が亡くなり遺産相続を進める中で、このような疑問を抱いたことはありませんか。

遺産の範囲は、預貯金の名義や管理の状況などによって解釈が分かれることもあり、相続人同士で主張が対立すると話し合いだけでは解決できないケースも少なくありません。

こうした場合に役立つのが、「遺産確認訴訟(遺産確認の訴え)」です。

本記事では、遺産確認訴訟を提起すべきケースや訴訟手続きの流れ、訴訟提起にあたっての注意点をわかりやすく解説します。

相続を円滑に進めるための参考として、ぜひ参考にしてください。

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遺産の範囲で揉めたときに役立つ「遺産確認訴訟」とは?

遺産確認訴訟とは、特定の財産が相続財産に含まれるかどうかを裁判で確定させるための訴訟をいいます。

遺産分割を進めるにあたっては、まず「どの財産が遺産に含まれるのか」を明確にしなければなりません。

もし遺産の範囲が不明確なまま遺産分割をおこなうと、相続人の取り分が大きく変わってしまい、後々のトラブルにつながるおそれがあるからです。

しかし、遺産相続においてはどこまでを遺産に含めるかで見解や解釈が分かれるケースが多く、遺産の範囲で揉めてしまうことも珍しくありません

そのため、当事者同士で遺産の範囲を決められない場合は、裁判によって正確に遺産の範囲を確定させるのです。

裁判で相続財産の範囲が確定すれば、それ以降は異なる判断ができなくなるので、遺産分割協議をスムーズに進めやすくなります。

遺産の範囲に納得できない場合に遺産確認訴訟で解決を目指すべきケース

遺産確認訴訟を提起すべきケースは、主に以下の3つです。

  1. ほかの法的手続きではトラブルの解決ができない場合
  2. 争点となっている遺産が高額であり影響が大きい場合
  3. ほかの相続人が遺産を隠している可能性が高い場合

ここでは、それぞれのケースについて詳しく解説します。

1.ほかの法的手続きではトラブルの解決ができない場合

遺産分割に関する争いは、「遺産分割協議」「遺産分割調停」「遺産分割審判」といった手続きによって解決を目指すのが一般的です。

遺産分割協議は相続人全員の話し合いによって進めますが、相続財産の範囲そのものについて認識が対立していると合意に至ることは困難です。

遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入って相続人間の話し合いを進めてくれますが、最終的には当事者全員の合意がなければ成立しません

遺産分割審判では、相続財産の範囲を裁判官が判断してくれますが、審判には相続財産の範囲を法的に確定させる拘束力がないとされています。

このように、協議や調停、審判だけでは財産の帰属を明確にできない場合、相続財産の範囲を確定させるためには、「遺産確認訴訟」を提起する必要があります。

2.争点となっている遺産が高額であり影響が大きい場合

不動産や高額の預貯金など、争点となる遺産が高額の場合にも遺産確認訴訟は有効です。

高額な財産の帰属が不明確なままだと、各相続人の取り分に大きな差が生まれ、将来的に深刻なトラブルに発展する可能性があります。

そのため、高額な財産が遺産に含まれるかどうかで悩んでいる場合は、遺産確認の訴えによって明確な取り決めをすることが大切です。

3.ほかの相続人が遺産を隠している可能性が高い場合

相続財産の全体像が不透明で、ほかの相続人が財産を隠している疑いがある場合にも、遺産確認訴訟は有効です。

遺産分割を進めるには、まず相続財産を全て明らかにする必要があります。

しかし、被相続人と同居していた相続人が財産を管理していた場合、開示された財産が本当に全てかどうか疑問が残ることも少なくありません。

また、被相続人から聞いていた遺産額よりも少ない財産しか開示されなかった場合、隠された財産があるのではないかという不信感が生じます。

子ども名義の預貯金口座や不動産など、名義上は他人の財産であっても実質的には被相続人の財産とみなせる場合も同様です。

その点、遺産確認訴訟を提起すれば、隠された財産の有無も含めて遺産の範囲を明確にできます。

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遺産の範囲に納得できない場合に遺産確認訴訟を提起する際の基本的な流れ

遺産確認訴訟は、基本的に以下の流れで進みます。

  1. 訴訟に必要な書類を準備する
  2. 管轄の裁判所に訴訟を提起する
  3. 各期日で主張・立証を繰り返す
  4. 和解や判決で遺産の範囲が決定する

ここから、それぞれの手続きの内容について解説します。

1.訴訟に必要な書類を準備する

遺産確認訴訟を提起するには、まず裁判所に提出する書類を準備します。

遺産確認訴訟に必要な書類は、主に以下のとおりです。

  • 訴状
  • 被相続人と相続人の戸籍謄本・住民票
  • 財産関係の書類(不動産登記簿、預金通帳、株式の取引明細など)
  • (被相続人が遺言書を作成している場合)遺言書

2.管轄の裁判所に訴訟を提起する

書類をそろえたら、管轄の裁判所に訴状を提出して訴訟を提起します。

管轄裁判所は、「被告(相手方とする相続人)の住所地の地方裁判所」となるのが原則です。

相続人が複数いる場合は、そのうちひとりの住所地の裁判所を選ぶこともできます。

ただし、そのほか「被相続人の最後の住所地の地方裁判所」や、「相続対象の不動産の所在地の裁判所」など、法律で管轄が認められている裁判所であれば、どの裁判所に提起しても差し支えありません。

なお、訴訟提起にあたっては、以下の費用が必要になります。

  • 訴訟手数料(収入印紙):原告の法定相続分相当額に応じて数万円~数十万円
  • 郵便料金(切手):数千円程度

3.各期日で主張・立証を繰り返す

裁判が開始すると、裁判所は複数の期日にわたり原告・被告双方の主張と証拠を確認し、争点となる財産が実際に遺産に含まれるかどうかを確認します。

なお、複雑なケースでは、期日が複数回にわたり、決着までに1年以上かかることも珍しくありません。

また、裁判開始後は、原則として地方裁判所へ出廷する必要があるので、手間や時間がかかることは覚悟しておきましょう。

ただし、弁護士に依頼すれば、出廷を代行してもらうことも可能です。

4.和解・判決で遺産の範囲が決定する

裁判所は、原告・被告からの主張が出そろった段階で、和解の勧告をおこないます。

裁判所が提示した和解案に双方が合意すれば、その時点で訴訟は終了です。

和解が成立しない場合、裁判官が最終的に遺産の範囲を判断して判決を下します。

判決に不服がある場合は、判決後2週間以内に控訴することが可能です。

遺産の範囲を確定させたい人が遺産確認訴訟を提起する際の3つの注意点

遺産確認訴訟を提起するにあたっては、以下のように注意すべき点もあります。

  • 誰が何を相続するかまでを決めることはできない
  • 相続人全員に対して訴訟を提起する必要がある
  • 「確認の利益」がなければ訴訟を提起できない

ここから、それぞれの注意点について詳しく解説します。

1.誰が何を相続するかまでを決めることはできない

遺産確認訴訟で裁判所が判断できるのは、「どの財産が相続財産に含まれるか」という点だけです。

遺産の取り分はまだ決まらないため、相続財産は相続人全員の共有状態となります。

具体的な分割方法は、遺産分割協議などで別途決める必要があることを覚えておきましょう。

2.相続人全員に対して訴訟を提起することになる

遺産確認訴訟は「固有必要的共同訴訟」と呼ばれる手続きです。

そのため、相続人の一部だけを被告として訴えられるわけではなく、相続人全員を当事者として含めて訴訟を提起する必要があります。

もし一部の相続人だけを被告として訴訟を提起した場合、訴えが却下されてしまうので、注意が必要です。

3.「確認の利益」がなければ訴訟を提起できない

遺産確認訴訟を提起するためには、「確認の利益」があることが必要です。

確認の利益とは、原告に法律上の不安や危険が現に存在し、それを解消するために訴訟による判断が有効である場合を指します。

たとえば、すでに相続分を譲渡してしまった人が訴えを提起する場合や、対象となる財産がすでに消費されて存在しない場合には、確認の利益がないと判断され、訴えが却下されてしまいます。

このような場合は、遺産確認訴訟ではなく、不当利得返還請求訴訟などの別の手段で解決を図る必要があります。

さいごに|遺産の範囲で揉めている場合は早めに弁護士に相談しよう!

本記事では、遺産確認訴訟を提起すべきケースや手続きの流れについてわかりやすく解説しました。

遺産が高額の場合や、相続人が遺産を隠している可能性が高い場合など、遺産の範囲で揉める可能性が高そうであれば、遺産確認訴訟の提起が有効です。

ただし、遺産確認訴訟には専門的な知識と経験が必要なため、個人で適切に対応するのは難しいでしょう。

そのため、訴訟の検討にあたっては、早めに弁護士に相談することが重要です。

また、弁護士に相談すれば、相続人間での話し合いや煩雑な手続きも任せられるので、相続に伴うストレスを大幅に軽減できます。

さらに、特別受益や寄与分といった見落としやすい論点についてもアドバイスを受けられるため、相続手続きを正しく進められるでしょう。

なお、ベンナビ相続を利用すれば、遺産分割や相続トラブルの対応を得意とする弁護士を、お住まいの地域に応じて簡単に探せます。

争いを長引かせず、円滑に相続手続きを進めるためにも、ぜひベンナビ相続を活用して自分に合った弁護士を見つけてください。

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この記事の監修者
修善寺法律事務所
吉田 朋師 (静岡県弁護士会)
『修善寺法律事務所』は、静岡県密着型の法律事務所で、その中でも相続トラブルに注力しております。 生前対策~相続発生後まで幅広くご対応いただけますので、是非ご連絡してください。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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