【事件の概要】
被相続人は、80代の男性。相続人は、妻と長男、長女。
妻、長男が長女に対して、「被相続人は相続税対策で高額なローンを組んでマンションを建てた。遺産はこのマンション以外にない。
しかし、マンションのローンはまだたくさん残っているし、債務超過となっているので、相続を放棄しろ。相続放棄しないなら、お前もローンを払え」と要求。
「そんな無茶な話があるか!」と思った長女から依頼を受けて、受任。
【弁護士の対応と結果】
妻、長男(相手方)に、そちらの主張は法的に通らない旨をご説明致したものの、全く受け入れてもらえませんでした。
しかし、交渉の結果、まずは、遺産分割が終了するまでの間、毎月のマンションの賃料からローンを差し引いた金銭のうち、依頼者様の相続分にあたる金額を毎月依頼者様に送金していただくことができるようになりました。
その後、遺産分割調停を申し立てたところ、相手方も代理人弁護士を就けてくれ、「代償金として○○円を支払うから、マンション名義を自分にしてほしい」という提案がありました。
ようやく建設的な提案が出て、安心したのですが、提示された金額は安すぎると感じ、裁判所の指定に基づく、不動産鑑定の実施を求めました。
その結果、鑑定額は大幅に増え、依頼者様が取得できる代償金の金額は相手方の提案から1億円以上増額されました。
相手方もマンションを単独所有するために渋々これを受け入れ、相手方がローンを借り換えることによって、代償金を一括でお支払いいただきました。
【弁護士のコメント】
こちらの事案は、一言でまとめてしまえば、「不動産の鑑定を実施した結果、依頼者が取得する金額が1億円以上増えた」ということになります。
代償金が1億円以上増えた理由は、単に「それだけ価値のある不動産だった」ということだけなので、別に弁護士の腕は関係ありません。
しかし、解決に至るまでには、いろいろ配慮しなければならないこともあり、気を使いながら進めました。
まず、結果として、鑑定によってマンションの評価額が跳ね上がったのでよかったのですが、上がり方が中途半端だと鑑定が逆に依頼者様にとって不利益になる可能性がありました。
というのも、依頼を受けて初期の段階で、毎月のマンションの賃料からローンを差し引いた金銭のうち、依頼者様の相続分にあたる金額を依頼者様が受け取れる状態にしたので、依頼者様は事件解決が長引けば長引くほど、多くのお金が受け取れる状態にありました。
マンションの評価額の上がり方が中途半端で、依頼者様が受け取れる代償金の金額の上がり方も中途半端ですと、鑑定を行って代償金をもらうよりも、鑑定を行わずに調停を長引かせた方が、依頼者様の経済的利益が大きいという状況でした。
そこで、裁判所に鑑定の申立を行う前に、もともと懇意にしていた不動産鑑定士に依頼して、鑑定予想額を算出しました。
その結果、「このマンションであれば、評価額は跳ね上がる。代償金は1億円以上増える」という診断がでましたので、鑑定の申立を行い、首尾よく高額な代償金を受け取ることができました。
また代償金を受け取る際に、「相手方にローンを借り換えさせた」という点も重要なポイントです。
相手方にマンションの所有権を取得させる前提として、ローンも相手方に全て引き受けていただくわけですが、このような「被相続人名義のローンを特定の相続人に全て引き受けさせる」という合意は債権者(銀行)には対抗できません。
つまり、本件で、「ローンは全て相手方が引き受ける」と相手方との間で約束しても、相手方がローンを支払えなくなった場合、法的には債権者は依頼者にローンの支払いを請求することができます(もちろん、債権者はマンションに抵当権を設定しますので、依頼者に請求をしてくる可能性は低いのですが、法的には請求可能であり、請求してくる可能性が0ではありません。ローン額が高額なので、依頼者様としては請求を受ける可能性を0にしておきたいところです)。
しかし、本件では、相手方がこちらに支払う代償金の金額が、到底、相手方の自己資金では用意できない金額になったことから、相手方はローンを借り換える、つまり新たに相手方の名義で借り入れを行い、従前の被相続人名義のローンは全て弁済するということをしてくれたので、仮に相手方がローンを支払えなくなった場合でも、依頼者が債権者から請求を受ける可能性を0にできました。
冒頭でも申し上げたように、この事件において、依頼者様の代償金が相手方の提示より1億円以上増えた理由は、「それだけの価値のある遺産があった」ということであり、弁護士の腕は関係ありません。
しかし、私としては、依頼者様を望ましいゴールにたどり着かせるだけでなく、そこに至るまでに常に安心して道中を進んでいただけるようにいろいろと配慮したつもりです。
例えますと、「最高級の神戸牛」であれば、塩を振って、火を通せば、それだけで十分に美味しくなると思います。しかし、私は、単に、塩を振って、火を通すだけでなく、様々な仕事、細やかな配慮を加えて、お客様に提供させていただく所存です。