弁護士になったきっかけ
高校時代に豊田商事破産管財事件についての『プロジェクトX〜挑戦者たち〜・悪から金を取り返せ』を見て,被害者のために全てをかけて闘う弁護士中坊公平の姿に,ただひたすらに感動したのがきっかけです。
この事件は,豊田商事という会社が一般の方々に実態のない「金」への投資を持ちかけ,投資金を騙し取るという大規模な詐欺事件でした。いわゆるペーパー商法詐欺です。被害総額は1200億円以上,当時としては最大の被害額といわれています。被害者のほとんどが高齢者で被害者数は3万人という空前の詐欺事件でした。豊田商事の破産管財人として,被害金の回収に尽力したのが中坊公平弁護士です。
この事件では,他の詐欺事件と同様に被害者から騙し取ったお金はほとんど残っていませんでした。
中坊弁護士が率いる管財人チームは豊田商事のグループ会社の賃貸先からの家賃や敷金,高額の給料をもらっていた豊田商事の従業員が納めた税金まで回収し,100億円というお金を集めることができました。
とはいっても,被害総額の10%です。普通であれば,被害者から不満が出るところですし,それこそ債権者集会は荒れに荒れるでしょう。しかし,この事件では,被害者からの不満はほとんどでませんでした。番組の中で,被害者から中坊公平弁護士に向けられた言葉で,(中坊弁護士が回収したお金は)「濡れた雑巾から絞り出したものじゃない,乾いた雑巾を絞ってひねりだした水と同じだ」というのがあるのですが,この言葉がすごく印象に残っています。仕事がうまくいったときは感謝されることはありますが,「うまくいかなくても感謝される」というのは,お客様に誠実に対応し,事件に全力で向き合わなければ,ありえないことだと思います。自分が弁護士になってみて,あらためてこの言葉の凄さがよくわかりました。
どんな法律事務所にしたいか?どんな弁護士になりたいか?
理想の事務所像というのが具体的にあるわけではありませんが,川崎で最大の法律事務所にするのが目標です。
現在,当事務所には11名の弁護士が所属しており,規模でいえば2番目くらいでしょうか。
やはり,人数が多いということは,それだけ事件に対応できる器や余力も大きくなるということですから,事務所の規模が大きいというのは大事なことだと思っています。
刑事事件や1秒でも早く相談や依頼をしたいというお客様へ迅速に対応できますし,一つ一つの事件にかけられる時間も多くなりますので。
理想の弁護士像というものを持ち合わせているわけではありませんが,まだ私が独立する前に勤務していた事務所の兄弁に言われた言葉だけは,特に仕事に忙殺されているときによく思い出して自分を奮い立たせていますね。
その言葉というのは,「弁護士にとっては100分の1の事件であっても,お客様にとっては1分の1の事件」というものです。
弁護士数が増えてきたこともあり,最近は仕事に忙殺されるということはほとんどなくなりましたが,この言葉を常に胸に置き,一つ一つの事件と真摯に向き合っていきたいと思います。
弁護士の仕事をやっていてよかったなと思う瞬間とは?
言うまでもなく,自分の能力を100%使って,100%の努力をし,100%の結果が出たときではないでしょうか。
こういうときは,もうそれだけで満足で,弁護士報酬すらいらないなと思うこともあります(もらいますが(笑))。
もう一つは,事件処理について,お客様と私の意見が対立し,私の考えに沿って事件処理をたことによって,満足のいく結果がでたときでしょうか(もちろん最終的にはお客様にも承諾してもらったうえで進めております)。
お客様の希望に沿って進めれば,仕事としては楽ですよね。負けた時の言い訳にもなりますし。
しかし,一切の妥協を排して事件処理にあたろうとする場合,時にはお客様を説得してでも自分の見解を通すことが必要になる場合もあります。
弁護士にとっては勇気のいることですが,こういうときに結果が出たときは,やはりうれしいですし,やっていてよかったなと思います。
趣味
・読書
多読家ではありません。たくさんの本を読むよりも,同じ本を何度も読み直すのが好きですね。
司馬遼太郎さんの『竜馬が行く』等の有名な作品は何十回と読み直しました。ほかには,村上春樹さんや東野圭吾さんなどの作品,海外の小説家であればヘミングウェイやドストエフスキーなどの作品もよく読みます。
何度も読み直すのは,内容が同じでも,読むときの年齢や置かれている状況・立場などによって捉え方が変わって,その都度新鮮さを感じるからだと思います。
これまで読み飛ばしていたところとかもあったりして,新たな発見があったりするのも魅力ですね。
・ゴルフ
ゴルフにはよく行っています。
良い運動になりますし,知り合いと楽しくプレイできるというのも良さの一つで,スポーツとしても奥が深いと思います。
ゴルフは,身体能力・頭脳・メンタルという3つの要素が必要で,戦略性の高いスポーツです。
答えが一つではないというのも特徴で,必ずしも肉体的に優れている人が勝つわけではないところも魅力です。
特技
・柔道
柔道は中学校までやっていて,初段を取得しています。
・ダーツ
ゴルフほどではありませんが,戦略性のあるスポーツだと思います。
相続分野の対応にあたって心掛けていること
相続分野の特色は,「当事者が多い」(多くの相続事案が当事者3人以上)というところだと思います。
複数当事者同士にも微妙な位置関係や関係性がありますので,それを早急に把握して,配慮しながら事件処理にあたることが大事だと思っています。
そのため,最初にお話を伺う際は,そのあたりの関係性について積極的にうかがって,丁寧に読み取るようにしています。
そういったところから得た情報が,最適なコミュニケーションを取るうえで役立ったり,のちのち説得しなければならない場面になった際のヒントになったりするのです。
事件の処理とは関係ないと思える話に思わぬヒントが隠れていたりするんです。
また,相続財産の全容についても詳細に聴取,調査をするようにしています。
たとえば,一つの通帳から他の財産の存在が発覚したりすることもあるので,資料等には細かく目を通しながら対応しています。
相続分野(遺産分割等)を解決するために大切にしている考え方
相続分野では,遺産分割協議や遺留分に関するご相談が最も多いと思います。
相続の場合,基本的に大枠の事件処理手順は決まっているので,あとは当事者間での感情のもつれや特殊な問題(特別受益,寄与分,遺産の評価等)にどう対処するかという部分が肝になることが多いという印象です。
遺産分割協議については,特に相手方へのファーストコンタクトを大切にしていて,最初にお手紙を書いたり電話をしたりする際は,非常に気を使っています。
相続の場合は特に当事者間の感情のもつれが争いに発展することも多いので。また,「弁護士が介入する=喧嘩をする」というイメージを抱いている方は少なくありません。一度嫌われてしまうとその後に信頼を回復するのは非常に大変なので,相手方に対して不躾な書面を出すようなこともしませんし,「この弁護士と話してみたいな」と思われるくらい,少なくとも話をすることについて怖いとかストレスを感じさせないように,丁寧な対応をするよう心がけています。
事件処理の点で心掛けているのは,相続については法的な部分がある程度固まっているので,交渉時に安易に妥協したりしないことでしょうか。
たとえば,離婚事件であれば,一定程度譲歩して迅速に離婚合意できれば,次の人生を早く踏み出せるというメリットがあります。
しかし,相続の場合,妥協してもそのようなメリットはありません。もちろんお客様の希望が第一ですが,しっかり時間をかけて安易な妥協はしない,というのが基本方針となります。
初回相談時に心掛けていることは,今後の見通しについてしっかりご説明することです。もし見通しが厳しい場合には,事前にお伝えしたうえで,依頼するかもどうかも含めて判断していただきます。たとえば,「被相続人と同居していた相続人が,被相続人の口座から勝手にお金を下ろして使ってしまったのでそれを取り返したい」というご相談があったとします。
この場合,証拠もなくただ訴えるだけでは取り返すことは極めて困難なので,何らかの証拠がないか検討したうえで,難しい場合には,難しいとしっかり伝えるようにしています。
相続事案というのは,経験によって得られる知識で対応しなければならないことや,「実務上こうなっている」といったことが非常に多く,文献などを読んでもわからないことが多いという特徴があります。
特に,特別受益などは,教科書通りに対応しても主張が認められないことがほとんどです。そのようなことも含めて,現場での経験がものをいう分野であるとも思います。
相続分野を弁護士に依頼することのメリット
さきほども話しましたが,相続事件は弁護士の経験が非常に大事になってくる分野です。
私個人としては年間20件以上,累積数百件程度の相続事件を取り扱ってきた経験がありますので,事件処理や相談時の見通しの精度の高さには自信があります。
また,当事務所には現在11名の弁護士が所属しており,経験値の蓄積は他の事務所よりも格段に多いと自負しております。
また,私は,法務局の新入社員向けの研修も務めており,民法の分野の中で相続に関する研修を担当しています。
改正相続法も含め,相続分野には精通していますので,安心してご相談いただければと思います。
※解決事例・特に印象に残っている案件
被相続人が生前に20人近い親戚に財産を贈与していたという案件で,被相続人死亡後に相続人から相談,回収の依頼を受けた事案がありました。
調査したところ,贈与によって相続人の遺留分が侵害されていることがわかりましたので,法的に認められる分を半年間で全額回収しました。
丹念に事情を聴きとったところ,どうやら贈与を積極的に主導したのは受贈者のうちの1人であり,他の親戚はその1人の意向に従いそうな気配でしたので,その1人を説得し,手続に積極的に協力してもらうことでスピード解決ができた事案です。
当事者間の関係性に配慮する,相手方からも信頼を得るように努めるという事件処理方針が全てうまくいって100%の結果が出た事案なので,相続案件としてはは非常に印象に残っている事件です。