何らかの事情で入籍をせず、内縁関係のパートナーがいる方の中には「内縁の妻や夫の財産は相続できるのかな?」と将来の相続に対して不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
内縁関係の場合は基本的に相続権は認められません。
そのため、生前から対策をしておく必要があります。
ここでは、内縁関係でもパートナーの財産を相続できる2つの方法について解説します。
内縁の妻・夫への相続には遺言書の作成が有効です
内縁の妻や夫に財産を相続するには、遺言書を作成する必要があります。なぜなら、内縁関係のパートナーには相続権がないからです。
しかし、遺言書は正しく作成しないと無効になってしまううえ、その他の相続人とのトラブルのきっかけにもなりかねません。弁護士へ相談・依頼するのが安心でしょう。
弁護士に相談・依頼することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 有効な遺言書を作成できる
- その他の相続人とのトラブルを防止できる
- 遺言の執行者も依頼できる
当サイトでは、遺言書の作成について無料相談できる弁護士を多数掲載しています。電話での相談も可能なので、依頼するか決めていなくても、本当に弁護士に依頼すべきかも含めてまずは無料相談を利用してみましょう。
この記事に記載の情報は2024年03月21日時点のものです
内縁の妻や夫には、相続権がありません。
長期間に渡り同居して事実上の夫婦として疑いがない状況であったとしても、婚姻届提出の有無によって相続権が認められるかどうかが変わってきます。
婚姻関係にない場合、相続権は権利として一切認められていないため、不服を申し立てる裁判をおこなっても結果は変わりません。
しかし、生前贈与や遺言を利用することで、内縁の妻や夫に財産を残せるケースもあります。
内縁関係でも賃借権の援用は認められるケースが多い
たとえば、男性が内縁の妻と生活するためにアパートを借りていた場合、内縁の夫が亡くなったあとでも内縁の妻はそのままアパートに住み続けることができます。
これは「たとえ内縁の妻であっても、内縁の夫が亡くなったからといって生活の場所を奪ってしまうことは権利の濫用にあたる」という考え方に基づきます。
もっとも、これは正確には賃借権の相続が認められたわけではなく、「内縁の夫の賃借権の援用が認められる」と表現することが多いようです。
いずれにせよ、内縁の妻は内縁の夫と暮らしたアパートに住み続けることができる場合が多いでしょう。
なお、借地借家法36条により、なかには内縁者が賃借権や借地権を承継できる場合があります。
借地権の詳しい相続方法は「借地権を相続したときに覚えておくと便利な7つのコト」をご覧ください。
内縁関係のパートナ―に遺産を承継する方法は以下の2つです。
生前贈与で内縁の妻・夫に財産を贈与しておく
まず一つ目は「生前に贈与してしまう」という方法です。
当然のことですが、生前に財産の贈与を受けておけば、その財産をパートナーの死亡後も利用することができます。
生前贈与には非課税枠が設けられているため、うまく活用すれば節税効果にも期待できます。
できるだけ多くの遺産をパートナーに残したい場合は、一度弁護士に相談しておくとよいでしょう。
遺言書で内縁の妻・夫に遺贈する
二つ目に「遺言書を作成しておく」という方法も有効です。
パートナーが生前に遺言書を作成しており、その遺言書に「一定の財産を内縁関係者に遺贈する」などの財産の承継が明確に記載されている場合には、その遺言書に沿った遺産の承継が可能となります。
しかし、遺言書を作成する際は、無効にならないように正しく作成する必要があるうえ、そのほかの相続人と内縁のパートナーがトラブルにならないように配慮する必要があります。
遺言書を作成する場合は、事前に弁護士などの専門家に相談しておくのがよいでしょう。
もし被相続人に配偶者がいない場合は、たとえ愛人でも内縁関係として扱われ、特別縁故者になれる可能性もあります。
しかし愛人の場合、遺言や遺贈以外で自分の死後に遺産を渡すのは困難でしょう。
そのため、愛人に対して遺産を渡したい場合は、若干の贈与税が発生するものの「生前贈与」という形でおこない、数年に渡って譲っていくのが最も確実です。
あえて贈与税を支払う形を選ぶ理由については、「愛人が勝手に財産を使いこんだり、預貯金などの名義変更をおこなったりしたと訴えられないようにする対策」と考えてください。
内縁の妻や夫が特別縁故者になれる場合
特別縁故者になると、被相続人の法定相続人が1人もいない場合には、亡くなった被相続人の身の回りの世話をしていた人が相続財産を受け取ることができます。
なお特別縁故者になるためには、家庭裁判所への特別縁故者の申し立てが必要です。
申し立てをおこなっても家庭裁判所が認めなければ、特別縁故者にはなれません。
法定相続人が1人もいない状況とは、法定相続人が死亡した場合だけでなく、法定相続人全員が相続放棄した場合も指します。
実際に相続を受けられるかどうかは家庭裁判所の判断に委ねられますが、内縁の妻・夫が特別縁故者になる可能性は十分にあるでしょう。
ただし結局のところ、特別縁故者という立場は法的に極めて不安定な立場です。
結局のところ、パートナー間で適切に財産の承継をおこないたいのであれば、生前贈与や遺言書などの明確な意思表示による財産移転の方法を準備しておいたほうが安心でしょう。
なお、特別縁故者として相続を受けた場合は、相続税の手続が必要です。
税金に関する相談については信頼できる税理士に相談してください。
内縁とは、「事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届が未提出であるために、法律上では配偶者として認められていない関係」を意味します。
パートナーと生活を共にするうえで、婚姻届を提出するかどうかは本人たちの自由です。
同居している男女が婚姻届を提出しなければいけないという法律もありません。
ただし、婚姻届を提出しないことによって、法律においては民法上の「配偶者」という立場になりません。
そして、法律上の「配偶者」という立場について認められる税金・保険・年金などの優遇制度を受けることもできません。
ちなみに、一般に「愛人」と表現される関係は、交際相手が既婚者であることを知った上で交際を続けている場合が多く、これはいわゆる不倫関係ということになります。これは内縁とは全く異なります。
内縁関係は、あくまで法律上の婚姻に準ずる関係です。
そのため、民事紛争の世界でも、法律上の婚姻関係に準じて一定の権利や利益が保護される場合があります。
内縁関係には、法律において「民法上の夫婦」と同等の権利・義務が認められている項目と、「民法上の夫婦」と同等の権利・義務が認められていない項目があります。
夫婦と同等の権利義務
- 貞操義務
- 同居・協力・扶助の義務(民法752条)
- 婚姻費用分担の義務(民法760条)
- 日常家事の連帯責任の義務(民法761条)
- 帰属不明財産の共有推定(民法762条)
- 財産分与(民法768条)
- 嫡出の推定(民法772条2項)
特別法で夫婦と同様にみなされる項目
- 遺族補償年金を受ける者としての配偶者の権利
- 労働災害の遺族補償を受ける労働者の配偶者の権利
- 退職手当を受ける者としての配偶者の権利
夫婦とは区別され内縁関係には認められない権利義務
- 夫婦の同姓(民法750条)
- 成年擬制(未成年者が結婚によって成人として扱われる制度|民法753条)
- 準正(非嫡出子が父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する制度|民法789条)
- 配偶者の相続権(民法890条※ただし958条の3)
法律上の婚姻関係とは異なり、内縁関係のもとでパートナーをいくら支えていても、法定相続権が発生するわけではありません。
しかし「生前贈与」や「遺言書作成」を活用することによって、お互いに財産を承継することは可能です。
また、特別縁故者としての権利を主張できる状況が整っていれば、その立場で一定の財産を承継することも可能ではあります。
しかし、内縁関係になっている者に確実に財産を残したいと考えるのであれば、判断能力が衰える前に財産移転の方法や内容を決定し、それを実現できるための適切な方法によって万全の準備をおこなう必要があるでしょう。