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相続した不動産の登記申請手続|相続登記をしなかった場合のデメリット
2019年08月14日

相続した不動産の登記申請手続|相続登記をしなかった場合のデメリット

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不動産の相続登記は、遺産分割の条件が決まった後に相続人がするべき手続きであり、不動産登記の申請をしないままにすると不動産の売却ができなかったり、別の相続人に相続登記をされて不動産を奪われたりするなどのトラブルが考えられます。

 

不動産の相続登記における期限は設けられていませんが、手続きを後回しにすると相続人にとって不利益を被る可能性もあるため、遺産分割が確定する前に登記申請の手続き方法をあらかじめ確認しておくべきでしょう。

 

今回は不動産の相続登記をしなかった場合のデメリットと併せて、相続登記の正しい手順について解説していきます。相続登記の際には相続税対策について考えるのが賢いやり方になるでしょう。

不動産の相続登記をしなかった場合のデメリット

相続登記をするタイミングや方法について説明する前に、まずは相続登記をしなかった場合のデメリットを取り上げて必要性について確認していきましょう。

 

相続登記は簡単に言うと不動産の名義(所有者の名前)を変更することになりますが、名義を被相続人のままにしてしまうと以下のようなトラブルが発生します。

 

相続人が亡くなった場合の権利関係が複雑になる

相続登記をしなかった場合におけるトラブルの事例で最も多いのが、相続登記をしないまま被相続人が死亡してしまうことで、次の相続に関する権利関係が複雑化することです。

 

名義を書き換えるまでの不動産は相続人全員で共有されていることになりますが、時間の経過と共に次の相続人が増えてしまい、遺産分割協議が上手く進まない可能性があると思われます。

 

不動産の売却や担保提供ができない

仮に遺産分割協議を経て不動産の所有者になったとしても、名義は被相続人のままであると、相続した不動産の売却ができなくなってしまいます。同様に借金をするための担保提供も認められていません。

 

現金による分割ができないため、各相続人への換価分割の分配が難しくなってしまいます。
※換価分割とは、土地や不動産などの遺産を換金してから相続人へ分配されることです。

 

不動産の修繕や建て替え判断が個人の判断では難しくなる

上記でも説明した通り、名義変更をする前の不動産は相続人全員が共有している扱いになるため、不動産の修繕や建て替えなどの費用が発生した場合の取り決めが難しくなります。相続人全員の了承を得て不動産の維持に関する出費の判断をする必要があるでしょう。

 

別の者に相続登記されてしまい勝手に売却されるトラブルになる

相続登記については相続人であれば申請が可能になるため、別の相続人である兄弟や親などが先に相続登記をして持ち逃げしてしまうケースも考えられます。

 

遺産分割協議で約束した分配方法を守らず、勝手に相続財産を奪って借金の担保にしたり売却して現金に換えるなどのトラブルも実際に起こっています。信用のできる家族だからそんな心配はないと思っていても、多額の相続財産によって家族関係が悪化する可能性もあるため、相続登記の手続きは早めに行った方が良いでしょう。

 

遺産相続における全体の流れと相続登記のタイミング

相続登記をするタイミングについては遺産分割協議において遺産分割の条件が確定した後になりますが、相続登記に至るまでの遺産相続全体の流れについて説明していきます。

 

相続登記に至るまでの手順

相続登記に至るまでの遺産相続の流れは以下図の通りです。相続財産の対象になる不動産物件のほか、相続人に該当する人物を特定する必要があります。
参考:「不動産を相続する際の手順

 

 

遺産分割協議では遺言書や法定相続分(法律上で規定された相続財産の配分)を参考に、遺産分割の条件を相続人全員で話し合うことになります。また、不動産などの相続財産では評価額を確定させることも重要になるでしょう。

 

【関連記事】

▶「土地の評価額を決める5つの項目

▶「不動産鑑定の3つの方法と鑑定の流れ | 鑑定士の行う鑑定法の種類とは

 

遺産分割が確定した後に相続登記をする

確定した遺産分割の内容については書面(遺産分割協議書)で記録されますが、この段階では上記で説明した通り、名義上では特定の相続人が所有者になっておらず相続人全員の共有扱いになっています。

 

法務局へ提出する書類は?』でも別途説明しますが、遺産分割が確定した後に必要書類を法務局へ提出して不動産登記の申請をするべきでしょう。

 

相続登記の期限はない

なお、冒頭でも説明したように相続登記の手続きには期限がありません。ですので、何年経過しても相続登記を行うことはできます。

 

しかし、『不動産の相続登記をしなかった場合のデメリット』による不利益のほか、被相続人が死亡してから時間が長く空くと相続登記における必要書類(被相続人の住民票の除票や戸籍謄本など)が役所より入手しにくくなるため、やはり早めに手続きをした方が良いといえます。

 

不動産の相続時に課税される相続税の計算方法

不動産の相続時において懸念事項になる相続税の計算方法について、参考までに取り上げていきます。なお、相続税の計算基準に関しては『相続税を簡単に計算する方法』でも解説しているので、併せてご確認いただければと思います。

 

基礎控除額を超える場合に限り相続税が課税される

不動産を相続した場合には必ず相続税が課税される訳ではなく、以下で定められている基礎控除額による差し引きで課税対象になる遺産総額が決定されます。

 

相続遺産の合計額 - 基礎控除額(3,000万円 + 相続人の数 × 600万円)

= 課税遺産総額

 

したがって、相続財産の合計額より基礎控除額の方が大きい場合、相続税を負担しなくてもよいことになります。実際でも、相続税が発生するケースは全体の8%程度だとされているため、相続財産が多額にならない限り相続税を負担する可能性はあまり高くないでしょう。

参考:「国税庁 平成27年分の相続税の申告状況について

 

もしご自身で相続税がかかるかどうかの判断が難しい場合は専門家に相談することをお勧めします→【あなたにぴったりの相続専門家診断】
 

 

相続税の算出例|相続人ごとに相続税が課される

以下では基礎控除額より相続財産の合計額が大きいケースとして、6,000万円の課税遺産を相続する場合にかかる相続税の例について取り上げました。各相続人に配分される相続財産額によって税率や控除額が変わりますが、詳しくは『相続税の税率』をご参考ください。

 

また、相続人については配偶者(妻)と子供2人という設定にしましたが、法定相続分を基に決定される遺産分割の割合は以下図の通りになります。

 

《図:法定相続分を基に決められる遺産分割の割合》

参考:「相続ナビ 法定相続分の割合

 

課税遺産総額:6,000万円の場合

法定相続分に応じた取得額

税率と控除額

相続税額
総額:750万円

妻(配偶者)

3,000万円

15%
(50万控除)

400万円

長女

1,500万円

15%
(50万控除)

175万円

次女

1,500万円

15%
(50万控除)

175万円

 

 

上記の例では総額で800万円の相続税が課されることになりますが、配偶者控除や土地に関する特例などを利用すれば節税することも可能です。詳しくは『相続税対策』にて説明されています。

 

不動産を相続した場合にかかる税金は相続税以外にある

また、不動産を相続した場合に発生する税金について、以下表でまとめました。ケースに応じて相続税以外の税金も課せられるので注意しましょう。

 

不動産取得税

原則として発生しない税金ですが、相続人以外が不動産を取得した場合において固定資産評価額の3%が課せられます。
参考:「固定資産税評価額の算出方法

固定資産税

不動産を相続した翌年より、毎年固定資産税を支払う必要があります。

所得税

相続した不動産を売却した場合、または不動産が賃貸物件であった場合において、所得が発生するため所得税を支払う必要があります。

 

法務局へ提出する書類は?

遺産分割と納税する相続税額が確定した上で不動産登記の申請をする必要がありますが、一通り必要な書類と特に重要になる『登記申請書』の書き方について確認していきましょう。

 

必要書類を法務局へ提出する

不動産登記申請で必要になる書類は以下表の通りです。相続人を特定するために集めた戸籍謄本類のほか、遺産分割の内容を証明した遺産分割協議書などの書類も提出する必要があります。

 

《登記申請書以外で必要になる不動産登記申請の書類》

不動産の登記事項証明書

法務局より取得可能

被相続人の住民票の除票

市区町村役所より取得|被相続人を特定するために必要

被相続人の戸籍謄本類

市区町村役所より取得|相続人を特定するために必要

遺産分割協議書・印鑑証明書

相続人全員が遺産分割に同意したことを証明するために必要

委任状

代理人が申請する場合に必要

収入印紙

登録免許税を納付するために必要

 

書類の提出先については法務局のホームページにある『管轄のご案内』より確認できますが、登記・供託オンライン申請システムによるオンライン申請も可能も可能です。自分によってやりやすい方法で申請するのが良いでしょう。
参考:「登記・供託オンライン申請システム

 

物件調査時に不動産の登記事項証明書を取得する必要がある

上記の表でも記載されている『登記事項証明書』に関しては、相続財産の対象について確認する物件調査時で取得する書類になります。登記簿謄本とも呼ばれますが、不動産の地番や地積、所有者や担保に関する情報について書かれています。

 

登記事項証明書も法務局(登記所)の窓口で発行してもらえるほか、インターネット上の登記情報提供サービスを利用して取得することも可能です。
参考:「登記情報提供サービス

 

登記申請書の記載内容

以下図で登記申請書の記載例を提示しましたが、申請書の書式については法務局のホームページにある『不動産登記の申請書様式について』で、目的に応じた登記申請書のフォーマットがダウンロードできますのでご確認ください。

 

参考:「法務局 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)

 

相続登記でかかる費用|登録免許税は固定資産税評価額に応じる

相続登記でかかる費用ですが、基本的には上記で説明した登記事項証明書や戸籍謄本類などの書類発行費と、不動産登記の申請で発生する税金(登録免許税)があります。それぞれの目安と算出基準は以下の通りです。

 

  • 提出書類の取得費用|目安として数千円程度
  • 登録免許税|不動産物件の固定資産評価額×0.4%

 

登録免許税の算出基準は明確になっており、例として5,000万円の不動産物件について相続登記する場合の登録免許税は

 

5,000万円 × 0.004(0.4%) = 20万円

 

であるため、20万円分の収入印紙を提出書類に添付する必要があるでしょう。

 

不動産の相続登記をする前に相続税対策をするのがオススメ

不動産登記の申請手順や方法について一通り解説しましたが、相続人にとって懸念すべき点は相続税対策になるでしょう。相続財産が高額になるほど負担する相続税も高くなってしまうため、相続登記をする前に可能な相続税対策についておさえておきましょう。

 

 

生前贈与や不動産の特例を利用して相続税を減らせる

不動産の相続において相続税を減らす方法としては、主に以下の3つが考えられます。

 

生前贈与|相続財産額を減らせるメリットがある

生前贈与を行うことで相続財産額を減らせるため、相続税の節税につながります。また、贈与時に発生する贈与税についても、相続時精算課税制度や夫婦間贈与の特例などを利用することで一部の贈与財産が非課税扱いになります。

 

【関連記事】

▶「生前贈与の税金|贈与税と節税対策について知っておくべきこと

▶「相続時精算課税制度を活用して贈与税対策をする手引き

 

不動産評価額を下げる

相続税の課税対象になる不動産評価額を下げることも節税対策になります。具体的な制度としては、小規模宅地の特例により土地の一部において評価額を50%~80%下げたり、広大地評価の特例を利用して500平方メートル以上の土地において評価額を40%~65%下げたりすることが場合によって可能です。

 

【関連記事】

▶「相続した土地にかかる相続税と節税について知っておくべき事

 

配偶者控除

また、配偶者控除を利用すれば配偶者に相続した分について最低でも1億6,000万円の相続税控除が認められます。

 

非常に有効な制度ですが一つ注意点として、配偶者控除を利用して取得した相続財産を子供に相続する2次相続の問題で、結局は抱えた財産を子供に相続する際に相続税が発生してしまいます。したがって、配偶者控除を利用する場合は2回目以降の相続計画も考慮した方が良いでしょう。

 

【関連記事】

▶「相続税の配偶者控除とは|配偶者の相続税を軽減する方法

 

申請方法で分からないことがあれば相続の専門家に相談すること

上記で説明した相続税対策についてはどんな状況でも適用される訳でないため、自分が相続した不動産に適合するかどうか確認した方が良いでしょう。場合によっては数百万円単位で節税できることもあるので、適当に手続きを進めるのは好ましくありません。

 

確実に申請手続きを住めるためにも、不動産登記の申請方法を含めて相続税対策について分からないことがあれば、専門家である税理士や不動産コンサルタントに相談してみてはいかがでしょうか。もし費用について心配な場合は【税理士に依頼した場合の費用相場】の記事も参考にしてみてください。

参考:あなたにぴったりの相続専門家診断フォーム

まとめ

相続した不動産の登記申請手続きを確実に行うことで、遺産相続に関するトラブルを防げるでしょう。申請期限が無くても早めに相続登記を済ませて、安心して相続財産を取得するようにしましょう。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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