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公開日:2020.10.26  更新日:2023.3.27

健康寿命を伸ばす食事について跡見学園女子大学の石渡教授に取材しました!(前半)

跡見学園女子大学マネジメント学部生活環境マネジメント学科の石渡尚子先生にインタビューをさせていただきました。

本取材のテーマは「健康寿命を伸ばすための食事」。石渡先生の研究されている大豆の効果に始まり、共食の思わぬ効果やクオリティ・オブ・デスなど幅広く、そして興味深いお話をたくさん伺いました。

前半では主に石渡先生の研究内容や取り組みについて、後半は健康な食習慣やクオリティ・オブ・デスについてのお話です。

今日から始められる健康な食事についても聞いてきましたので、少しでも健康や食事が気になっている方は是非ご覧ください。

石渡尚子先生と研究内容のご紹介

(インタビュアー:ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部 酒井)

酒井:本日はどうぞよろしくお願いいたします。

石渡:よろしくお願いします。

酒井:大豆をキーワードに健康的で環境にやさしい、豊かな食事について研究されているとのことですが、そもそもなぜ大豆に着目されたのでしょうか?

石渡:実ははじめから大豆の研究していたわけではなく、以前は別の研究をやっていました。母の病気をきっかけに研究テーマを変えたのです。母は治療のためにホルモン剤を服用していました。けれども、ホルモン剤を長期間使用すると乳がんや卵巣がんのリスクが高まる可能性があるので、それを使わずにどうやったら症状を緩和できるか、代わりになるものを探していました。調べていく中で、大豆の中に女性ホルモンのような作用を持つ物質があるという研究報告を見つけ、そこから20年くらい大豆の研究をしています。

酒井:そうだったんですね。ちなみに、「大豆先生」とも呼ばれているそうですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

石渡:取材を受けた時、とある雑誌の編集長が「大豆先生」って名前を付けたんですよ。それ以来、いろいろなところでペンネームとして大豆先生を使っています。多分、被る人はいないかな?

酒井:私も探してみたんですけど、確かに他にはいなかったですね(笑)。

石渡:商標登録しようかしら(笑)。

現代の人が美味しいものとか栄養あるものを食べようとすると、お肉とかお魚とか卵とか、動物性のタンパク質を選びがちじゃないですか。でも動物性のタンパク質をたくさん摂ると、一緒に動物性の脂肪もついてくるんです。まったく脂肪がついてないお肉とかお魚ってないので。そうなると、コレステロール値が高い人はタンパク質を何から摂取するかという問題になりますよね。植物性タンパク質の代表格である大豆にも油は含まれていますが、コレステロールは0なんです。

酒井:それはどういうことですか?

石渡:コレステロールは動物性の脂に含まれているんですよ。大豆は植物性の油ですから。

大豆は種子の2割ぐらいが油です。日常使っている調理用のサラダ油は大豆油と菜種油(キャノーラ油)を混合して作られています。世界中で、大豆油は広く調理に使われているんですよ。

酒井:なるほど。調理油の基本は大豆なんですね。

石渡:そうなんです。だから海外では大豆って食べるものでなくて、油を絞る作物なんです。残りの搾りかすは家畜のエサにしています。アジア人だけなんです。大豆を食べるのは。でも、大豆を食べている日本人は長寿で、がんになりにくく、肌が綺麗で、小さな体なのに骨折は少ないし。欧米人から見れば「なんで日本人は牛や豚のエサを食べてるのにあんな元気なんだ?」と調べたら、どうもその大豆の中のさまざまな成分、特にイソフラボンが役に立ってるらしいということで、海外から研究が始まりました。

欧米の女性は日本人女性に比べ、更年期障害など中高年以降の悩みが多いことから、当初、大豆イソフラボンの研究は日本よりも海外の方が進んでいました。女性ホルモンの分泌が急激に減ると更年期障害が出てきます。もともと欧米人女性はたくさん女性ホルモンを作るといわれていますが、その分、閉経によるホルモン量の落差が大きくなるので症状が重くなる。日本人女性の更年期症状は「火照る」とか「軽いめまい」程度ですけど、欧米人は動けなくなるぐらい酷い症状が1日に何回も起こる女性も多いそうです。

酒井:そんなに違うんですね。

石渡:そう。そこからさらに「大豆は更年期症状の軽減以外にも役に立つの?」と考えたとき、「動物性タンパク質に偏りがちの日常の食事に植物性タンパク質の大豆を加えると、アミノ酸もバランスいいのでは?」ということで、最近、大豆を原料としたベジミートが流行っていますよね。そうは言っても、海外で大豆製品はそれほどメジャーな食品ではありません。欧米ではようやく豆乳やお豆腐がスーパーに並ぶようになってきたところです。

酒井:確かに自分も大豆はそんなに多くは食べないですね。(20代男性)

石渡:ましてやその年齢の男性なら、夏にお酒を飲む時におつまみの枝豆を食べるぐらいでは?冷奴と枝豆みたいな。

酒井:本当にそれぐらいですね(笑)。ちょっとつまむぐらいで。

石渡:でもそれはすごくいいので、食べるなら最初に大豆を食べてください。私は「大豆ファースト」と呼んでいるんだけど。食事の最初に大豆を食べると、含まれている食物繊維とかタンパク質のおかげでお腹も満たされるんですよ。ドカ食いも防げて、なおかつ胃も守られて悪酔いもしないし、おススメです。

酒井:そういうパワーがあるんですね!飲み会で使える豆知識ですね(笑)。

健康寿命と食の関係性

酒井:健康寿命と食はどのように関係していますか?

石渡:自分の口を使って食べることって、最期まで大事なんです。実は、私は祖父母を自分の家でほぼ看取ってるんですね。

大学院生の頃だったけれど、母と2人で、そこまで自宅で介護するのは難しいというぐらいギリギリまで家で看ました。飲み物を飲ませているときにむせたので、肺炎を起こしてはいけないとすぐ救急車を呼んで病院に。その時、先生に聞いたら「点滴やってるから栄養面は大丈夫だよ」とおっしゃるけれど、点滴だけではそれまでの状態を維持することはできなくて。要するに「点滴のボトルの中にはすべての栄養成分が入ってる」わけではなく、最低限必要なもののみ入っているということなんです。

酒井:え?そうなんですか?

石渡:なぜかというと、食品の中にはまだ私達、現代の人が見いだせていない健康に役立つ成分がたくさんあるはずなんです。点滴ではそれが摂れません。さらに、食べ物を自分の口で噛んで、それを嚥下して消化・吸収してという、この一連の栄養過程を自力でできるかどうかがその人の余命に大きく関わっています。

最後は、たとえプリンとかヨーグルトみたいなものになったとしても、口の中に入れて味や匂いを感じて噛んで飲み込めているうちは、細いながらも命は繋がっていくことを介護をとおして感じました。

酒井:そんなに重要なんですね!

石渡:口から食べることの重要性はいろいろ言われているけれど、祖父母の入院先で何人もそういう人を見てきました。口から食べられなくなると、体力だけでなく、生きる気力みたいなものも落ちていって、死期が迫ると顔の肉が落ちてきて皆さん似た表情になる。点滴で十分栄養を補給しているはずなのに。

酒井:そんなことがあるんですか…。

石渡:老人病院に入院している人を長く観察しているとよくわかります。だから、私のゼミではできるだけ自分の口から食べてもらうことを考えながら、地域の高齢者の食生活を改善するプロジェクトに取り組んでいます。

石渡ゼミの活動内容

酒井:石渡先生のゼミでは具体的にどのような活動をされていますか?

石渡:地域の独居の高齢者に対して、自治体や社会福祉協議会の力を借りながら「学生と一緒にお食事会しませんか?」とお声がけしています。最初は門前払いを食らって、学生が泣いて帰ってくることもありましたが、そこを諦めずに。

酒井:門前払いされることもあるんですか?

石渡:そうなんです。基本的に自分のペースで暮らしているところに介入されたくないし、新しい人間関係に抵抗を感じる方も多いようです。でも2回3回訪問すると、「上がってお茶飲んできなさい」と心を開いてくださることも。さらに一度参加していただくと「来年も声かけてくれるんだろうな?」とか「順番待ちしてる」とかおっしゃる方もいて。

実はこの取り組みは、農林水産省の平成30年度の食育活動表彰を受賞してるんです。栄養士養成課程の学生ではない普通の大学生の活動が国から認められたことで、ゼミ生はやりがいと責任を感じながら活動しています。

酒井:それまでは、そういった活動がありそうでなかったんですかね?

石渡:全国で「高齢者と若い人が一緒に食事をする」という活動はたくさんあるんです。でも、私たちは「一緒に考えて、一緒に作って、一緒に食べる」という「食べる」ための一連の行為をすべて学生と高齢者が共にするというのをやりたかったんです。

酒井:作るところからなんですね。

石渡:そうです。参加高齢者の好きな食べものを聞きながら「じゃあこれに何を合わせたら栄養バランスの良いメニューになるかな」と考えて。さらに、それを実際に一緒に作れるかな?という視点から学生たちが何回も試作を繰り返し、これで安全に美味しく作れそうだとなったら高齢者の人にお声をかけて。当日は、高齢者に必要な栄養素が摂れる一汁三菜のメニューを一緒に作って、それを一緒に食べて、約90分間。食後は、脳を活性化するゲームとか、足の筋肉をつけるような運動や体操をやったりとかして、とにかく参加者に「楽しいからまた参加したい」と思ってもらえるような仕掛けをいろいろと考えました。

酒井:そこまでするんですね!

石渡:そこまでやります。半日がかりで。「参加者の健康余命を延ばす」ことがこのプロジェクトの一大目的なんですよ。そうなると、食べることだけじゃなくて、筋肉を落とさない・噛む力を落とさない・外に出る回数や社会活動を増やすということも含めて企画を考えなければなりません。

酒井:ちなみに参加した方に対して「家でこういうことやってください」みたいなレクチャーもあるんでしょうか?

石渡:当然あります。レクチャーだけじゃなくて「10品目チェック」っていう栄養バランスのチェックシートなどにも取り組んでもらっています。酒井君は見たことある?

酒井:ないですね…。

石渡:お肉・お魚・卵・牛乳・大豆製品が上の段に、下の段には海藻・芋・果物・緑黄色野菜・油などが書いてあるんだけど、上の5品目は要するに「タンパク質を多く含む食品」ね。毎日ちょっとずつでいいから、できるだけ1日にこの5品目を食べて丸をつけて欲しいわけです。そうするとタンパク質がバランスよく摂れます。

下の段には摂取したタンパク質を体の中で使うために必要なビタミン・ミネラルを含む食品が並んでるから、それも含めて1日8品目以上丸がつくような食事を心がけてもらうよう、参加者にお願いしています。この10品目チェックを週に2日くらいつけてお食事会に持ってきてもらい、日常の食事内容を把握してた上で、メニューを考えていました。

さらに私たちの食事会は1回で終わりじゃないんです。毎月なんです。実はここもポイントで、次のお食事会までの1か月間、参加高齢者は待ち遠しく思っているわけです。女子学生と食事をしたりおしゃべりしたりするのが楽しみだから、風邪ひかないように、転んで怪我しないように、ちょっとでもオシャレに見えるようにって涙ぐましい努力を続けて、参加してくださるの。

今までおしゃれなんか関心のなかった人が赤いベレー帽かぶってきたり、自慢のお土産を作って持ってきたり。元パン屋さんだった男性は、パンを持ってくると学生たちにキャーキャー喜ばれるから毎回パンを焼いてきてくださったり、折り紙の先生は、壮大な折り紙細工を作ってきて、学生から「これ1ヶ月で一人で作ったの!?」と羨望の眼差しで見られて。

酒井:気合がすごいですね(笑)

石渡:そう。その1ヶ月間のワクワクが彼らにそういうことをさせるんですよ。実はこれがこのプロジェクトの真の目的。秋~冬の間、毎月お食事会を続けていくと、より元気になるための行動がだんだん増えてくる。これが習慣になれば参加者は自ら健康余命を伸ばす行動を日常的に取れるようになるわけです。

人間って、1日だけバランスよく食べても次の日にはまた元に戻っちゃうでしょう?でもそのバランスの良い食事がルーティンになれば、そうしないとなんか気持ち悪い。さらに10品目チェックをつけて「なんかいつもこことここが丸つかなくて気持ち悪いな」となると、今まで食べなかったような食品を食べるようになるでしょう。そうなれば目論見どおりです(笑)

酒井:自分でも気付きだすわけですね。

石渡:そうなると、天寿を全うするという死に方に近づくことができるんじゃないかなと思っています。病気で命を落とすのではなく、生物として枯れるように死を迎える。年齢とともに徐々に食欲が衰えて、筋肉が減ってきて、動けなくなってきて枯れていくっていうのかな。

超高齢社会では、できるだけゆっくり枯れていくことが必要ですよね。そのために、やっぱり食習慣は大事です。だから、それをわかってもらうため、学生と一緒に食育活動を続けています。

ゼミ活動での取り組みを広めることの難しさ

酒井:こんな素晴らしい取り組みがあるとは全然知らなかったです。

石渡:だからもっとね、こういう取り組みが広がればいいと思うんですが、実はこれをやるための準備が本当に大変で…。

私達のこのモデルがうまくいったので、専門家の先生たちが高齢者を対象に同じような食事会をやろうとしたらうまくいかない。それは当たり前です。参加者に喜んでもらえる楽しいお食事会を実施するためには、たくさんの目に見えない準備が必要なんです。安全で楽しく調理をしてもらうためには、メニューだけでなく、どういう調理方法なら高齢者でも手軽にできるのか、またひとり暮らしなら、余った食材を無駄にしないメニューも一緒に考えないと、ご自宅で作ってもらえない。

あとは学生たちのスキルもそう。高齢者と一緒に調理と言いながら、実際はできるだけ高齢者に作ってほしいわけだから、学生自身がその指導をできるくらい調理に慣れていることも重要です。なおかつ、高齢者にとって調理は衛生面でも安全面でもリスクが高いので、お食事会のどの工程にどんなリスクが潜んでいるかを見出すため、何回も試作会を繰り返します。同じ施設を借りて同じ道具を使って、高齢者役と指導役の学生が一緒に調理するシミュレーションを行い、観察係の学生が「あそこで滑って転びそうだ」とか「ここで火傷しそうだ」というリスクをすべて洗い出してリスクマネジメントをしているのです。

酒井:そこまで緻密じゃないと失敗するんですね…!

石渡:だから準備に約半年かかります。4~8月までは準備期間だから、お食事会は9月からしかできないんです。高齢者からは「春からやってよ」と言われますが、そんなに簡単なものじゃないと。そもそも、調理の苦手な学生も多いので、彼女達が自信をもって調理できるようになるまでにすごく時間がかかるんです。普段お家でやっていると違うんですけどね・・・

酒井:そもそもそこから始めないといけないんですね(笑)。

石渡:そう。「ナスの皮むいて」って言ったら、ナスのヘタを持ってまな板に立ててストンと切る人とかいるから。「それナスなくなっちゃうよ」みたいな(笑)。

いろいろな人が私たちのお食事会を真似しようとしたけど、「学生さんがやっているようなお食事会は難しいですね」ってなって。せっかく、高齢者に適したお食事会モデルができても、これだけの時間とマンパワーを注ぐことは、なかなかできないようですね。

酒井:ちなみに他の学校でもできるように勉強会などはされてるんですか?

石渡:一応ノウハウは学生たちが全部マニュアル化して残してくれているので、それをお渡ししています。お食事会に高齢者研究をしている研究者や管理栄養士さん、給食会社の専門家などが、代わる代わる見学に来ていました。自分のところでもこのモデルに取り組んでみようと思っていらしたようです。

酒井:本当にビジネスチャンスのある取り組みなんですね。

石渡:実際、見学して帰る頃には「プロじゃない学生にこんなに緻密にやられちゃったら、私達ちょっとお手上げかも」っていう(笑)。

習慣ってなかなか変えられないでしょう。自分でも「悪い癖を直すぞ」と思っても全然直らないように、食事だってこれまでの食べ方を変えるのはすごく大変。それでも、参加してくださる方々に少しでも良い食習慣を身に着けてもらえるよう、学生たちは手を変え品を変え一生懸命にプログラム内容を考えます。

残念ながら、男性の食習慣はあまり変わらないのですが、女性はすごく変わります。男性の場合は「俺の食事は完璧だ」と信じてらっしゃる方が多くて。実際に食べてるものを聞くと、毎日同じメニューで10品目どころか5品目ぐらいしか食べていないんですが。

酒井:うちの祖父もそんな感じですね。いつも同じものしか食べてないですね(笑)

石渡:やっぱり?そうですよね。「俺は朝食に牛乳飲んで、卵も食べてる。それを365日毎日食べてるから大丈夫」っておっしゃるから、あらら・・・と。これでは他の食品に含まれる栄養成分が摂れません。

そう伝えてもなかなか聞いていただけない。一方、女性はアドバイスを素直に自分の食生活に取り入れてくださって、「学生さんのおかげで今まで食べなかったものも食べるようになったのよ」とか。この食に対する柔軟性も女性の方が長生きする理由かもしれませんね。

酒井:そういうところもやっぱり関係してるんですね。

石渡:関係してると思います。

高齢者の終活

酒井:学生と高齢者の食事会を定期的にされていますが、終活のお話を聞くことはありますか?

石渡:私から参加者に「エンディングノート書いていますか?」「終活について考えていますか?」とはさすがに聞けないですね…。

酒井:確かにそうですよね…。

石渡:元気な高齢者は健康に自信があるから、ほとんどその準備はしていないようで。「いかに健康状態を保って生きるか」という、クオリティ・オブ・ライフを軸に考えていらっしゃるんですね。でも、私ぐらい(50代半ば)になったらそろそろクオリティ・オブ・デスも考えなきゃいけないと思っています。どうやって自分らしい死を迎えるか、みたいな。

こういう準備をしておかないと、最後にジタバタしちゃうと思うんですね。「自分はこれだけのことができた」とか、「自分なりに納得できる生き方だった」とか、そう思って最期を迎えられたら一番幸せ。まぁなかなかそんな風に達観はできないと思うけれど、少しでもそこに近づくように今から準備できるといいですね。

私の義理の父は83歳で亡くなったんですけど、「スマートに生きてスマートに死にたい」って言っていました。そしたら本当に最後までスマートで。転移もあるがんで、最終的に根本的治療はせずに緩和ケアに入りましたが、痛みはコントロールできているから、最期までにいろいろ準備できるじゃないですか。そうしたら「病室にアルバムを全部持ってこい」と。

「こんなにあってもお前たちが困るだろう」と、自分のお気に入りの写真だけ集めて1冊のアルバムにしてくれました。また、会いたい人に代わる代わる病室に来ていただいてお話をして。あと食べたいものリストも渡されました。「尚子さんこれ買ってきて」と言われて、毎週のようにいろいろなお店の美味しいものを買いに行きましたね。亡くなる4日前に、好物のすき焼きを食べ、3日前に天丼を少し口にして、安らかに永眠しました。

酒井:なかなか重たいものを食べていたんですね(笑)。

石渡:お義父さんそういうの大好きだったんです(笑)。最期まで、自分の口から食べたいものを食べ、美味しそうな笑顔で。今でも「本当にスマートだなぁ。カッコいいなぁ」って思います。

酒井:そこまでの話は聞いたことないですね…。

石渡:だから「私もああいう風に最期を迎えたい」と思うんです。

酒井:頭はずっとお元気だったんですね。

石渡:終りの方は薬の影響で寝ていることが多かったけれど、私たちが病室に行けばちゃんと目を覚まして、「忙しいのにありがとう」とお礼を言ってくれました。義父のおかげで、クオリティ・オブ・デスの大切さを身にしみて感じることができました。

(後半はこちら)

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ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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