相続問題や債務整理を多く扱ってきた健午法律事務所の清水(しみず)弁護士は
サラリーマンを経て司法書士、そして弁護士になったというかなり異色な経歴の持ち主であります。
どのようなお悩みもご相談者様のことを第一に考えて優しく受け止め、そしてご相談者様のその後の人生まで考える清水弁護士の信条や取り組みについてお話を伺いました!
弁護士としての活動
――現在はどういった案件を担当されているのですか?
民事事件と刑事事件どちらもご相談を頂きますが、民事事件が大部分を占めますね。民事事件の中でも特に相続や債務整理分野のご相談を多く頂いております。
これまで過去に対応した方が人づてに刑事事件のご依頼をして頂いたこともありました。
――それは嬉しいことですよね。先生のご対応に満足して、それで知人の方にも薦めたということですから。
そうですね。ご相談者様のお話に傾聴する姿勢が良いと感じていただけたのだと思います。
刑事事件は多くは取り扱っておりませんが、そのような形でご対応させていただいたこともありますね。
――刑事事件をそこまで多く取り扱わない理由などはございますか?
刑事事件は常に時間に追われながら各手続きに対応しなければならない非常に忙しい分野だというのがあります。
時間的負担でいえば特に勾留中に接見に行く必要があり、スケジュールの中に民事事件もありますので、そのため忙し過ぎて対応することができない部分もあります。しかし、ご依頼をお受けした事件であれば誠心誠意対応させていただきます。
――確かに、刑事事件の負担は大きい言えるかもしれませんね。
そうですね。しかし、明確な対応方針については持っております。
第一に私が重要であると考えているのは依頼者様が自分が犯した過ちを振り返り、その理由を徹底的に考えてもらうことですね。
弁護士に依頼をし、罪の減刑を真っ先に考えるよりもご自身の内面と向き合った方が、かえって事件をより鮮明に捉えることが出来ますし、罪が最終的に軽くなることにも繋がります。
ただし、私の目的はご自身が内面と向き合って自然に感じる反省であって反省を強制するようなことはしません。
ご自身の過ちを振り返って頂きたいので、減刑だけのために動いたりするのは違うという認識をしております。
再犯の可能性は50%という統計もありますし、再犯をどう防止するのかをテーマとして、徹底的に振り返ってもらうようにしています。
目の前の事件だけを見るのではなく、その人の今後先の人生のことまで考える必要があるのではないかと思います。
この考えは刑事事件も民事事件についても同じですね。
――刑事事件に限らず、民事事件についても依頼者の中長期的な人生の幸福を望んでいるのですね。
そうですね。民事事件ではよく「相手からいくらお金を取れるか」や「裁判で勝てるのか」などと考える方が多く見られます。
また「1円でも多く取るのが良い弁護士」というイメージがある方もいられると思います。
しかしそういった弁護士はあくまで短期的で目先の勝利や幸福を得られることに過ぎません。
相手と争う姿勢は、裁判では有効な方法ではありますが、それだけでは恐らくご依頼者様の人生が前向きに変わることはないでしょう。
――それでは、清水弁護士はどのように対応しているのでしょうか?
まず最初ご依頼を頂いた際、私は争うか争わないかという2つの選択肢を依頼者様に提示しています。
もし争うのであれば、相手からお金を得ることができるかもしれませんが、その後わだかまりなどが残る可能性もありますし、幸せになれるとは限りません。
一方で、相手との折り合いを上手くつけたり、裁判で獲得した金額が少なくなったとしても和解をしたり、そもそも損害賠償請求そのものをしないという選択肢もあるでしょう。
これは争ってはいけないとか、相手を許すという事では全くなく、自分自身が前向きに生きていくために「争いを選ばない」という選択をするということです。
そうすれば、裁判で長年争っていたことが半年以内で終わったりして、すぐに頭を切り替えて人生を歩んでいけることもあるわけです。
心も軽やかで精神的に負荷がない状態で生きていくことで、結果として、その後良い人に出会えたり、良い仕事が見つかったりすることもありますので、もちろん必要に応じて裁判で争うこともありますが、相手からより多くのお金を取ることばかり考えたりする必要はないと思います。
結局、困っているからこそ法律相談に来られるわけで、相手からお金を取ってくることで解決とするのか、それとも自分自身が前向きに歩いていけるようになることで解決とするのか、というところだと思います。
「お金を取ることはできますが、それによって前向きに歩いていくことはできるのか?」という考え方もありますので、ご依頼にあたっては2つの選択肢を提示するようにしています。
――本当におっしゃる通りだなと感じました。結局は幸せな人生を送るのが最優先事項で、その為の裁判であったりしますからね。法的に勝ち負けを決めただけではお互いにわだかまりが残ることになりますよね。
そうですね。決して、全員がお金のために争っているわけではないですし、「納得できない」「分かってもらえない」というところで争うケースもあるわけです。
相手からお金を取ったところでそのような想いは消えませんし、一生心の中に消えないものを抱きながら生きていくことになってしまうんですよね。
それでは幸せにはなれないだろうなと思います。法律を前向きに生きていくためのツールとして使っていただければと思います。
あくまでも、幸せに前向きに生きていくために必要な場合だけ、裁判などで争おうというのが私の考えです。
弁護士としての心がけ
――そんな清水弁護士が法律相談の際に心がけていることについてお聞かせください。
出来る限り、ご相談者様の気持ちや背景などを理解するように努めています。
そうすることで、ご相談者様の言い分なども納得することができますし、実際に相談だけで満足して「心が軽やかになった」という方などもいらっしゃいます。
そして、ご相談者様の要望を尊重して、こちらの判断で勝手に変えることはしないように気を付けています。
法的なアプローチばかり考えて、ご相談者様のお気持ちを無視することは本当の満足につながらないと思うからです。
これまでご相談いただいた方のなかには、ご相談からしばらく経ってからも私のことを覚えていただいており、連絡を頂いたりすることもありました。
――清水先生とお話ししていると、本当に相手の目線に立ってメリット・デメリットを交えて、はっきり事実を伝えてくださっているなと感じます。
確かに、そういうところはあるかもしれません。
私の場合、最初はあまり弁護士という枠にとらわれず、「お話しをお聞きするので、前向きに生きてみませんか?」というようなカウンセラーに近い印象を与えるかもしれません。
ただ、「お話を聞くだけでなく、具体的な解決策も提示できる」という点は、カウンセラーにはない弁護士ならではの特徴としてありますが。
また、弁護士というと「トラブルを解決してくれる人」というイメージが強いかもしれません。
しかし、そうではなくて「トラブルについてよく知っており、今後の方向性を示せる人」という方が、本来あるべき姿として近いと思います。
ーー先生はまさしく弁護士の理想の姿を体現していますね。
相続問題に関する取り組み
――弁護士以外にもさまざまな資格をお持ちなんですよね。
事務所HPに記載されている通り、司法書士・民事信託士・宅地建物取引主任者・行政書士など、さまざまな資格を取得しています。特に司法書士や民事信託士などは、相続の際に役に立つ資格です。
――清水先生は、相続のなかでも生前対策に注力しているということを伺いましたが、なにかきっかけはあるのでしょうか。
過去に「相手の方が自分よりも相続分が多い」と主張するような相続争いのご依頼を頂くことがありました。
しかし、裁判を起こしお金を獲得して「相手をやっつけてやった」と思ってもすっきりしていない依頼者様がいらっしゃるのを目の当たりにし、それでいいのかなという疑問を抱えていたんです。
また、ほかにも裁判に持ち込むことなく解決した事例などもあって、大きな争いにならずに終結できた案件の方が、最終的にご相談者様が笑顔になっていただいているなという印象が強かったのです。
そのようなことがあって、そもそも相続トラブルが起こらないようにサポートしていけば、結果的にご相談者様が人生を前向きに歩いていくことにもつながるのではないかと思うようになり、生前対策に注力するようになりました。
――なるほど、大きな案件になる前の段階で消すことが出来る小さな火種は消しておこうということですね。場合によっては、トラブルが起こってからでは遅いということなどもあるかもしれませんね。
生前対策というのは、あらかじめ遺言や信託などに取り組んでおけば、相続人の方はそれに従って行動するだけなので、そもそも争いにならずに済むわけです。相続が原因で兄弟姉妹が疎遠になったりすることもなくなるわけです。
過去には、生前対策を検討されていた方が対策したほうがいいけれどまだ大丈夫と考えているうちに認知症になってしまって、相続対策ができなくなってしまったということもありました。
そうなってしまうと、トラブルの可能性を秘めつつ、相続の際にトラブルが起こるかどうか分からないという状態になってしまうわけです。
なので、まだ元気なうちに生前対策をやっておいた方が良いと考えています。
生前対策をしておけば、相続トラブルが起こる可能性を極力減らすことができますし、そうであれば家族関係が崩れることもありませんので、平和に済ませられるのではないでしょうか。
また、亡くなってからも自らの財産について影響力を残すことができるというのも相続対策のメリットといえるかと思います。
――それでは、生前対策として具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。
よくあるケースですが、ただ遺言書に「誰に○○を分け与える」と書くだけでは不十分です。
基本的に平等に財産を分け与えることは特に相続財産が不動産である場合などは難しいと思いますし、平等に分けることができない何らかの理由があるはずです。
それが子供に伝わっていないから揉めるわけで、そのあたりも含めて遺言書に詳しく書くことが必要です。
そして、「私はこのような想いで遺言書を書いた」ということを、亡くなる前から相続人に伝えておけば、亡くなってからもトラブルが起こることはないのではないかと思います。
こうした対策が大きく広がることで、社会全体が明るくなることにもつながると思っています。
――やはり人の想いを伝えるのに必要なのは丁寧に説明する事なのですね。もちろん亡くなった方としても、争ってほしいと思って財産を残しているわけではないですからね。
しかも、一度トラブルになってイライラした気持ちになってしまうと、また新たなトラブルを起こすことにもなるので、何回も何回も同じようなトラブルが続いてしまうこともあるでしょう。
「引き寄せ」などと言うこともありますが、やはりネガティブな気持ちになるとネガティブなことが起こってしまうんですよね。
家族間の絆が相続問題によって、はたまた相続に伴った別の要因で壊れることは何としても防いでおきたいですよね。
――財産をめぐって親族同士で争いになってしまうというのは、辛いものがありますね。
なかには、「自分が亡くなった後は勝手にやってもらって構わない」という方もいらっしゃいますが、その通り雑に放置してしまうと、いざという時にやはり揉めますよね。
これまでトラブルになったことがなくても、相続をきっかけに昔話を持ち出してきたりして揉めることもあります。
だからこそ生前対策が必要で、特に相続する財産がそれほど多くない方ほど対策はした方が良いですね。以外にも何億円以上もの財産がある場合は、特に対策などが無くても争いにならないケースが多いのかもしれません。
例えば、財産が多ければ、「自分のところに1億円入ってくるなら良いか」となることも珍しくありません。しかし、財産が少なければ、1円単位で分けようとしてトラブルになる可能性が高いです。
日本では莫大な財産を残すようなケースばかりではないかと思いますので、生前対策が必要な人は多いと思います。
弁護士としての歩み
――話が変わって、清水先生はかつて会社員経験があるということですが、どのような経緯で弁護士を志したのでしょうか。
小学校の時の先生が「これからはコンピューターにできない仕事をやった方が良いんじゃないか」ということを言っていて、それで弁護士を勧められたことがありました。もしかすると、その記憶がずっと残っていたのかもしれません。
それで大学は法学部を選択するのですが、そこまで本腰を入れて弁護士を目指していたわけではなく、卒業後はインターネット関連や不動産関連の会社など、さまざまな会社で働いていました。
そのような状況のなか、ふと「このままで良いのか」と感じて、何か手に職をつけたいと思い、旧司法試験に向けて勉強するようになりました。
しかし、そこでは受からなかったので、司法書士に切り替えて受験した結果、合格することができました。
司法書士になってからは、事務所を開設し登記の仕事などをして順調に進んでいたのですが、ちょうど開設した年に司法試験予備試験が始まったんですよね。
司法書士になってからも、どこか自分のなかに弁護士に対する想いが残っていたようで、「とりあえず受けるだけ受けてみよう」と思い受験した結果、合格することができ、現在に至ります。
当時は、司法書士事務所もやりながらの受験だったので、お風呂の時間や休日など、ひたすら勉強に時間を費やしていたことを覚えています。
――司法書士としても働きながら司法試験の勉強をすることは考えるだけでも壮絶ですね。しかしそういった異色の経歴、特に会社員経験などは活きる場面もあるのではないでしょうか。
弁護士は、「仕事で困っている」や「給料が低い」など、社会で生きている方の相談を受けるわけですよね。
ご相談者様のお話を聞いて理解したりする際に、これまでの会社員経験が活きているところはあると思います。
――なるほど、相手視点に立って物事を考える経験は貴重なものですね。最後になりますが、これまでご相談者様から頂いた言葉などで、印象に残っているものをお聞かせください。
訴訟を選ぶか選ばないかの選択肢を提示した結果、訴訟を選ばないという選択をされた方から、のちのち「あのとき訴訟しないという選択肢を選んで良かった」と言っていただいたことを覚えています。
ほかにも、「相談したことで心の重荷が取れました」「負担が軽くなりました」という声を頂いたことなどもありました。弁護士は業務内容が膨大で、休みもなかなか取ることが出来ないですが、
そういった依頼者様からの感謝の言葉でやっててよかったなとやりがいを感じますし、とても励まされますね。