相続放棄の期限は「相続開始から3ヵ月」と定められています(民法第915条1項)。
3ヵ月の期間は、相続放棄の熟慮期間とも呼ばれ、期間中に遺産を相続するのか放棄するのかを決める必要があります。
被相続人が多額の借金を抱えていた場合などは速やかに相続放棄を済ませる必要がありますが、なかには相続放棄の熟慮期間について知らずに3ヵ月を過ぎてしまった人や、期限が間近に迫っている人などもいるでしょう。
場合によっては、相続開始から3ヵ月を過ぎても相続放棄が認められたり、期間の延長が認められたりすることもあるので、この記事で正しい知識を身につけて適切に対応しましょう。
本記事では、相続放棄の期限の数え方や、期限を過ぎた場合の対応、期限が迫っている場合の対応などを解説します。
相続放棄の期限が迫っている方へ
相続放棄を検討していても、期日までに手続きできるか不安に思っていませんか?
結論からいうと、相続放棄で悩んでいるなら弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットを得ることができます。
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この記事に記載の情報は2023年10月18日時点のものです
相続放棄の期限は3ヵ月!いつからカウントする?
相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3ヵ月以内です。
3ヵ月の期間は「熟慮期間」と呼ばれ、この間に単純承認・限定承認・相続放棄の3つの相続方法の中から、自分の相続をどうするのか選択する必要があります。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
引用元:民法第915条1項
なお、「被相続人が借金を抱えていたことを知らず、相続放棄の期限を過ぎてから借金の存在が発覚した」というようなケースでは起算点が変わる場合もあります。
相続放棄の期限を過ぎた場合はどうなる?
ここでは、相続放棄の期限を過ぎた場合にどのようなことが起こるのかを解説します。
原則として相続しなければならない
相続放棄の熟慮期間である3ヵ月を過ぎた場合は、プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する「単純承認」に移行するのが原則です。
相続方法については、マイナスにならない範囲内で財産を相続する「限定承認」という方法もありますが、相続放棄の期限を過ぎてしまうと限定承認を選択することもできません。
「知らなかった」という言い分は認められない
相続人には相続放棄する権利がありますが、それを行使しなかった場合は全て自己責任という扱いになるのが原則です。
したがって、「相続放棄に期限があることを知らなかった」などの言い分は通用しません。
なお、なんらかの事情を抱えていて期限を過ぎてしまった場合は、弁護士に相談することで有効なアドバイスをもらえることもあります。
相続放棄の期限が迫っているなら期間伸長手続きを検討
相続放棄の期限が迫っている場合や、やむを得ない事情によって期限内の手続きがが難しい場合などは、家庭裁判所に「相続放棄の期間伸長」を申し立てましょう。
家庭裁判所にて申し立てが認められた場合は、相続放棄の熟慮期間が1ヵ月~3ヵ月程度延長されます。
ここからは、相続放棄の期間伸長の手続きについて解説します。
相続放棄の期間伸長の申し立てに必要な書類
相続放棄の期間伸長を申し立てる際は、以下の書類が必要です。
相続放棄の期間伸長申し立てに必要な書類
- 申立書(書式)(記入例)
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 利害関係人が申し立てる場合は、利害関係を証明する資料(親族の場合は戸籍謄本など)
- 相続放棄の期間伸長を求める相続人の戸籍謄本 など
なお、被相続人との関係性によっては上記以外の書類が必要になる場合もあります。
必要書類について、詳しくは以下の記事で解説しています。
相続放棄の期間伸長の申し立てにかかる費用
相続放棄の期間伸長を申し立てる際は、以下の費用がかかります。
相続放棄の期間伸長申し立て費用
- 相続人1人につき収入印紙800円分・連絡用の郵便切手代
ただし、具体的な金額は裁判所によっても異なるため、詳しくは「各地の裁判所一覧」から申し立て先に確認してください。
相続放棄をするにはいつまでに書類を提出すればよい?
相続放棄については、期限の3ヵ月以内に書類の提出を済ませれば問題ありません。
たとえば、期限間近に書類を提出し、裁判所が処理に2ヵ月かかったとしても相続放棄は成立します。
期限を過ぎても相続放棄できるケース【判例あり】
ここでは、期限を過ぎても相続放棄が認められるケースについて解説します。
期限を過ぎてから借金の存在が発覚した場合
相続放棄の期限後に借金の存在が発覚した場合は、相続開始から3ヵ月を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。
たとえば、「被相続人には連帯保証債務があったものの、相続人は相続財産が全くないと信じていた」というケースでは、被相続人の財産調査が難しい状況であったことなども考慮されて、相談放棄の期限について「相続人が相続財産の存在を認識した時点」からカウントするべきという判決が下されています。
熟慮期間は、原則として、相続人が前記の各事実を知つた時から起算すべきものであるが、相続人が、右各事実を知つた場合であつても、右各事実を知つた時から三か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があつて、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知つた時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。
引用元:最高裁第二小法廷判決 昭和59年4月27日(Westlaw Japan 文献番号 1984WLJPCA04270006)
再転相続が発生した場合
再転相続とは、被相続人が死亡して、相続人であるAが相続や相続放棄などの手続きを進める前にAも死亡してしまった場合に起こる相続のことです。
このような場合は、Aの相続人であるBが権利を引き継ぐことになり、相続放棄の期限は「相続人Bに対する相続が開始したことを知った日」からカウントすることになります。
第九百十六条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。
引用元:民法第916条
なお、再転相続では相続関係によって権利などが複雑になることもあり、自力での対応が難しい場合は弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄以外に注意すべき期限
相続手続きの中には、相続放棄のように期限が定められているものもあります。
対応し忘れている手続きがないか確認しておきましょう。
主な催事
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主な相続手続き
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期限
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被相続人の死亡
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死亡届の提出
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7日以内
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葬儀の手配など
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火葬などの手続き
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お通夜
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親戚などへの連絡
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葬式
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四十九日
形見分け
香典返し
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3ヵ月以内
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百日祭
墓参り
一周忌など
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所得税の準確定申告
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4ヵ月以内
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10ヵ月以内
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遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の期限
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1年以内
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配偶者控除の手続き
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3年以内
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名義変更(相続登記)
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期限なし
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まとめ|相続放棄の悩みは早めに弁護士へ相談を
相続放棄の手続きは期3ヵ月以内に済ませなければならず、対応が遅れてしまうと強制的に単純承認へ移行することになります。
もし期限内に手続きを済ませるのが難しい場合は、期間伸長の申し立てをすることで、1ヵ月~3ヵ月程度延長してもらえることもあります。
自分で手続きを進められるか不安な人や、そもそも相続放棄するべきかどうか迷っている人などは、弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士であれば、状況に応じた的確なアドバイスが望めるほか、相続放棄の手続きを代行してもらうこともできます。