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死後離婚をしても遺族年金はもらえる!遺族年金を受給する際の流れを詳しく解説

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「死後離婚」とは、亡くなった配偶者の親や兄弟姉妹との姻族関係を終わらせる制度です。

配偶者の死後、配偶者の姻族と関わりたくないとの思いから死後離婚を検討しているものの、「遺族年金がもらえなくなると困るから迷っている」というケースもあるでしょう。

結論から申しますと、死後離婚をしても遺族年金は受け取れます。死後離婚では、「離婚」といっても、配偶者との婚姻関係は続くためです。

もっとも、死後離婚をしたかどうかに関係なく、支給を止められることもあるため注意しましょう。

本記事では、死後離婚をした方が遺族年金を請求する場合の流れを解説します。

支給を止められるケースについても解説しているため、ぜひ最後までチェックしてください。

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死後離婚をしても遺族年金は受給できる!

死後離婚をしても、遺族年金は受け取れます。

なぜなら、死後離婚によって終わるのは「配偶者の姻族との姻族関係」であり、配偶者との婚姻関係は継続するためです。

配偶者が亡くなった時点で離婚していなければ、そのあとは死後離婚をしようが相続権も受給権も失わず、一度受け取ったものを返却する必要もありません。

死後「離婚」と聞くと、亡き配偶者と離婚する手続きであるように思えるかもしれませんが、そもそも結婚や離婚は夫婦が生きている間に限ってできる行為です。

「亡くなった相手とは離婚できない」ことを覚えておきましょう。

以下は、死後離婚をおこなう方法や必要書類です。

手続き方法

「姻族関係終了届」を本籍地または住所地の市町村役場に提出する

必要書類

本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)

印鑑

戸籍謄本(住所地で手続きする場合)

期限

なし

姻族関係終了届は、市区町村役場の窓口に備え付けられているほか、ホームページから様式をダウンロードできる市区町村もあります。

戸籍謄本に関しては、住所地で手続きするなら用意する必要がありますが、本籍地の市区町村役場であれば不要です。

また、死後離婚を行うにあたって期限はとくになく、配偶者の死後であればいつでも手続きできます。

なお、戸籍には姻族関係終了の事実が記載されますが、配偶者の姻族に同意を得る必要はなく、死後離婚をしたことは姻族に通知されません

手続きについてわからないことがあるときは、市区町村役場の窓口に問い合わせましょう。

死後離婚をおこなうメリット・デメリットは、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせてチェックしてください。

死後離婚をしても受給できる遺族年金の違い|遺族基礎年金と遺族厚生年金

死後離婚をしても受け取れる遺族年金は以下の2つです。

項目

遺族基礎年金

遺族厚生年金

故人が加入していた年金の種類

国民年金

厚生年金

子どもの有無と

支給の関係

子どもがいないと受け取れない

子どもがいなくても受け取れる

年金額

一律

現役時代の収入による

上記のような違いはありますが、「遺族が生活に困らないようにする」という目的は同じです。

ケースによっては、両方受け取れる場合もあります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

遺族基礎年金|国民年金に加入中の被保険者の配偶者や子どもが受け取れる年金のこと

遺族基礎年金の要件や受給できる方、年金額は以下のとおりです。

要件

1.国民年金加入中に亡くなった

2.60歳〜64歳で国民年金の加入歴があり、日本国内に住所があった

3.老齢基礎年金を受け取っていた

4.老齢基礎年金を受給する資格があった

1〜4のいずれかに該当+以下の要件をクリアする必要あり

【1・2の要件】

亡くなる前日の時点で、保険料の免除期間+納付済期間が加入期間の2/3以上

【3・4の要件】

保険料の納付済期間+免除期間+合算対象期間が25年以上

受給できる方

故人と生計をともにしていた以下の遺族

・子どものいる配偶者

・子ども

※前年の年収850万円未満または所得655万5,000円未満の収入要件あり

年金額

(令和6年4月以降)

【配偶者が受け取る場合】

・誕生日が昭和31年4月2日以降:81万6,000円+子の加算額

・誕生日が昭和31年4月1日以前:81万3,700円+子の加算額

【子どもが受け取る場合】

(81万6,000円+2人目以降の子の加算額)÷子どもの数

【子の加算額】

・1人目・2人目:1人につき23万4,800円

・3人目以降:1人につき7万8,300円

重要なのは子どもの有無です。子どもがいなければ対象になりません。

「子ども」とは、以下のうちいずれかに該当する方を指します。

  • 18歳を迎えた年度の3月31日まで
  • 障害等級1級〜2級の20歳未満

また、年金額は「誰が年金を受け取るか」や「子どもが何人いるか」によって異なります。

以下で、具体的な例を見てみましょう。

誕生日が昭和31年4月2日以降で子どもが2人いる配偶者が受け取るケース

81万6,000円+23万4,800円×2人=128万5,600円

子ども3人が受け取るケース

(81万6,000円+23万4,800円+7万8,300円)÷3人=1人あたり37万6,366円

詳しい年金額の計算方法などは、「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html)を確認してください。

遺族厚生年金|厚生年金に加入していた被保険者の遺族が受け取れる年金のこと

遺族厚生年金の要件や受給できる方、年金額は以下のとおりです。

要件

1.厚生年金加入中に亡くなった

2.厚生年金加入中に初診を受けた病気・けがで初診後5年の間に亡くなった

3.1級〜2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた

4.老齢厚生年金を受け取っていた

5.老齢厚生年金を受給する資格があった

1〜5のいずれかに該当+以下の要件をクリアする必要あり

【1・2の要件】

亡くなる前日の時点で、保険料の免除期間+納付済期間が加入期間の2/3以上

【4・5の要件】

保険料の納付済期間+免除期間+合算対象期間が25年以上

受給できる方

故人と生計をともにしていた遺族のうち、優先順位が高い方

・子どものいる配偶者

・子ども

・子どものいない配偶者

・父母

・孫

・祖父母

年金額

(令和6年4月以降)

老齢厚生年金の「報酬比例部分」の3/4

遺族基礎年金との大きな違いは、子どもがいない人でも受け取れる可能性がある点です。

ただし、受給権があるのはもっとも優先順位が高い方であり、それより下位の方は受け取れません。

ここでの子ども・孫とは、以下のいずれかに該当する方です。

  • 18歳を迎えた年度の3月31日まで
  • 障害等級1級〜2級の20歳未満

遺族の年齢に条件が設けられている点にも注意が必要です。

たとえば、子どものいない夫や父母、祖父母は55歳になっていなければ対象にならず、60歳以降でないともらえません。

また、30歳未満の妻で子どもがいない場合は5年間しか受け取れないため、永久にもらえるわけではないことを知っておきましょう。

なお、年金額は、現役時代の収入で決まります。

計算方法が複雑であるため、詳細は「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)|日本年金機構」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html)を確認してください。

支給額の計算方法は以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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死後離婚をした方が遺族年金を請求する際の大まかな流れ|3ステップ

死後離婚した方が遺族年金を請求する流れは以下のとおりです。

  1. 年金請求書などの必要書類を準備する
  2. 役所や年金事務所に請求書などを提出する
  3. 偶数月の15日に指定した口座に年金が振り込まれる

それぞれのステップについて、以下で順番に解説します。

1.年金請求書などの必要書類を準備する

まずは、以下の必要書類を準備します。

必要書類やそれぞれの入手先は以下のとおりです。

必要書類

備考

年金請求書

市区町村役場や年金事務所の窓口で取得または日本年金機構のホームページからダウンロード可能

年金手帳

そのほか、基礎年金番号がわかるもの

提出できないときは理由書が必要

戸籍謄本

故人の続柄と請求者の氏名・生年月日がわかるもの

受給権発生日以降で発行から6ヵ月以内のもの

世帯全員の住民票(謄本)

受給権発生日以降で発行から6ヵ月以内のもの

マイナンバーを年金請求書に記載すれば省略可

故人の住民票除票

世帯全員の住民票に記載されている場合は不要

請求者の収入がわかるもの

・所得証明書

・課税(非課税)証明書

・源泉徴収票 など

マイナンバーを年金請求書に記載すれば省略可

子どもの収入がわかるもの

高校生未満であれば不要

高校生なら以下のうちいずれかのコピーが必要

・在学証明書

・学生証

マイナンバーを年金請求書に記載すれば省略可

死亡の事実や原因・死亡年月日がわかるもの

死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書

請求者名義の銀行口座がわかるもの

通帳またはキャッシュカード

年金請求書に金融機関・ゆうちょ銀行の証明を受けた場合は不要

印鑑

認印でも可

年金請求書は、上記のリンクからダウンロードできます。

死因が交通事故や他人からの暴力などを指す「第三者行為」に該当するときは、さらに「第三者行為事故状況届」「交通事故証明」といった書類も求められます。

また、すでにほかの公的年金を受給している場合は「年金証書」、亡くなった配偶者が国民年金に加入していない期間があるなら以下の書類も必要です。

  • 配偶者が国民年金以外に加入していた期間がある:加入を証明できるもの
  • 配偶者が国民年金以外の年金を受給できた期間がある:受給権があったことを証明できるもの
  • 本人が国民年金以外の遺族年金を受給できた期間がある:受給権があったことを証明できるもの
  • 海外に在住していた期間がある:海外に在住していたことを証明できるもの

2.役所や年金事務所に請求書などを提出する

書類が整ったら、市区町村役場や年金事務所に提出します。

提出先は、遺族基礎年金と遺族厚生年金どちらを請求するかによって以下のように異なります。

遺族基礎年金

故人の住所地を管轄する市区町村役場

※国民年金の第3号被保険者期間中に亡くなったときは、年金事務所または年金相談センター

遺族厚生年金

年金事務所または年金相談センター

なお、「第3号被保険者」とは、会社員や公務員といった第2号被保険者に扶養される20歳〜59歳の配偶者のことをいいます。

詳しくは、「国民年金の第3号被保険者制度のご説明|日本年金機構」で確認してください。

自分がどの保険者にあてはまるかわからない場合は、年金事務所や年金センターに電話で問い合わせるのもよいでしょう。

3.偶数月の15日に指定した口座に年金が振り込まれる

手続きが完了したら、指定した口座に年金が振り込まれます。

振込日は「偶数月の15日」です。

たとえば、4月に2月・3月分が、6月に4月・5月分が振り込まれるというように、受取月の前2ヵ月分がまとめて振り込まれます

ただし、請求後すぐには振り込まれないので注意しましょう。

請求から振込までの流れは以下のとおりです。

  1. 年金請求
  2. 1ヵ月〜2ヵ月程度で「年金証書」「年金決定通知書」が送付される
  3. 追って「年金振込通知書」と「年金支払通知書」が送付される
  4. 2から1ヵ月〜2ヵ月程度で初回の振込

年金振込通知書・年金支払通知書は、受給が開始してからも毎年6月ごろに届きます。

なお、受取月は偶数月と決まっていますが、はじめて受給するときや、さかのぼって過去の分も受給する場合は奇数月になることもあります。

いつ振り込まれるかわからない場合は、年金事務所に問い合わせてみましょう。

死後離婚に関係なく遺族年金が受給できなくなるケースに注意しよう

死後離婚をする・しないにかかわらず、遺族年金が受給できなくなる場合もあります

遺族年金が受給できなくなるケースには、たとえば以下のようなものがあります。

  1. 十分な収入がある場合
  2. 遺族が再婚した場合

上記に該当し、途中で遺族年金の受給権がなくなったときは、「遺族年金失権届」を年金事務所または年金相談センターに提出しなければなりません。

遺族基礎年金と遺族厚生年金のどちらを受け取っていたかによって、届け出の期日が以下のように異なるので注意しましょう。

年金の種類

届出の期限

遺族基礎年金

受給権がなくなった日から14日以内

遺族厚生年金

受給権がなくなった日から10日以内

遺族年金失権届の様式は、「遺族年金を受けている方が結婚や養子縁組などをしたとき|日本年金機構」からダウンロードできます。

遺族年金が受給できなくなった場合は、期限内に届け出るようにしましょう。

1.十分な収入がある場合

遺族年金を受給している遺族が十分な収入を得られるようになった場合は、遺族基礎年金・遺族厚生年金を受給できなくなる可能性があります。

遺族年金を受給できなくなるのは、前年の収入または所得が以下に該当するケースです。

  • 年収が850万円以上
  • 年間の所得が655万5,000円以上

これまで受給していた方でも、上記のいずれかに該当すると受給対象から外れます。

受給対象から外れた場合、遺族年金を受給できなくなることを念頭に置いておきましょう。

2.遺族が再婚した場合

遺族年金を受給している配偶者が再婚したときは、遺族基礎年金・遺族厚生年金を受給できなくなります

再婚によって受給権が消滅するためです。

この「再婚」には、内縁関係も含み、「法律婚をしなければ受給権は消滅しない」というわけではない点に注意しましょう。

なお、内縁関係とは、当事者間に、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在することをいい、個別の事案で判断されることとなります。

ただし、再婚をしたとしても自分の子どもが以下の要件を全て満たす場合は、子どもが代わって受給できます。

遺族基礎年金

・18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級〜2級

・婚姻していない

・親と生計をともにしていない

遺族厚生年金

・18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害等級1級〜2級

・婚姻していない

子どもが遺族年金を受け取る際は、遺族基礎年金と遺族厚生年金で要件が異なる点にも注意が必要です。

子どもが親と生計をともにしていると遺族基礎年金を受給できませんが、遺族厚生年金は生計をともにしているかどうかは関係ありません。

なお、親の再婚にともない、子どもが親の再婚相手と養子縁組した場合でも、子どもは受給権を失うことはないので安心してください。

さいごに|死後離婚をしても遺族年金を受給することはできる!

死後離婚をした場合でも、遺族年金を受給できます。

死後離婚によって終了するのは、亡くなった配偶者の姻族との「姻族関係」であり、亡くなった配偶者との婚姻関係は継続するためです。

ただし受給が開始しても、状況の変化によっては支給が停止することもあります。

受給していた方が十分な収入を得られるようになったり再婚したりしたときには受給権がなくなり、遺族年金を受け取れなくなる場合もあります。

また、収入が増えたことや再婚によって受給権がなくなったときは、不正受給とならぬよう、速やかに手続きをおこないましょう

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この記事の監修者
虎ノ門法律経済事務所(西宮支店)
亀井 瑞邑 (兵庫県弁護士会)
企業法務・一般民事・刑事など多岐に渡る業務を経験。相続分野では相続トラブルの解決を得意とし、円満な解決へと導いてきた実績があります。皆様の今後の人生が少しでも前向きになるよう、全力でサポートします。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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