身近な方が亡くなって相続手続きをしようとしても、法要や遺品整理のほか、仕事や家事など毎日のことで時間を取られ、なかなか手をつけられないものです。
「それでも何とか進めなければ」と、相続手続きの代行を検討中の方もいるでしょう。
相続手続きの代行は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士などの専門家に依頼できます。
それぞれ対応できる業務内容が違うため、相続内容や抱えているトラブルなどに応じて選びましょう。
本記事では、相続発生後におこなうべき手続きや代行を依頼すべきケース、依頼先や業務内容の違い、それぞれに依頼した場合にかかる費用などについて解説します。
相続手続きの代行を検討しているあなたへ
忙しくて自分では相続手続きをする時間がなくて困っていませんか?
結論から言うと、相続手続きは弁護士、司法書士、税理士、行政書士などに依頼することができます。
相続人同士のトラブルが予想される場合、弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に相談することで以下のようなメリットを得ることができます。
- 相続の際に必要な手続きや手順がわかる
- 相続で必要な書類がわかる
- 依頼すれば、ほかの相続人との交渉を一任できる
- 依頼すれば、調停・訴訟など裁判所での手続きを一任できる
当サイトでは、相続手続きの代行をはじめとする相続問題を得意とする弁護士を地域別で検索することができます。
無料相談はもちろん、電話で相談が可能な弁護士も多数掲載していますので、まずはお気軽にご相談ください。
相続で必要な手続き
相続が発生すると、以下の手続きをおこなう必要があります。
-
遺言書の有無の確認
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
-
単純承認・相続放棄・限定承認などの相続方法の選択
- 遺産分割協議
-
遺産分割協議書の作成
- 相続税の申告
- 相続登記の手続き
- 預金の相続手続き、相続財産の処分など
ケースによっては必要ない手続きもありますが、概して手間がかかるでしょう。
なかには期限が設けられている手続きもあるため、注意が必要です。
たとえば、相続方法の選択は「相続が開始したことを知ったときから3ヵ月以内」、相続税の申告は「被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内」におこなわなければなりません。
手間や時間がかかる手続きも多くあり、たとえば相続人調査では被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本類や、相続人全員の戸籍謄本類などを集めなくてはなりません。
相続財産調査では、不動産や株式などの評価の難しい財産が含まれている場合は特に手間がかかるでしょう。
全ての相続手続きを自分でおこなうには相当な労力を要するうえ、正確性も必要になるため、専門家の力を借りることをおすすめします。
相続手続きの代行を依頼すべきケース
特に以下のようなケースでは、積極的に遺産相続の手続きを代行してもらうことをおすすめします。
- 忙しくて相続手続きをする時間がない
- 自分で正しくおこなえる自信がない
- 相続人の数が多い
- 不動産や株式など、評価の難しい財産が遺産に含まれている
- 相続人調査や相続財産調査のやり方がよくわからない
- 親族同士の折り合いが悪く、あまり関わりたくない
- 遺産分割協議がなかなかまとまらず揉めそう、すでに揉めている
- 相続税の計算方法がよくわからない
- 遺産のなかに不動産が含まれており、相続登記をしなければならない
- 生前贈与や寄与分を考慮する必要があり、遺産分割方法がわからない
上記以外のケースでも、自分でおこなうのが難しければ早めに代行を依頼したほうがよいでしょう。
相続手続きのなかには期限があるものもあり、できるだけ早く取りかかるのが賢明だからです。
依頼するタイミングが遅れて思わぬ不利益を被らないためにも、早めに検討を始めましょう。
相続手続き代行の依頼先一覧
遺産相続の手続きを代行してくれる専門家は以下のとおりです。
それぞれ対応できることが違うので、自分が代行を依頼したい手続きの内容に合わせて選びましょう。
相続手続き代行の依頼先とできることの違い
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弁護士
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司法書士
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税理士
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行政書士
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金融機関での相続手続き
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〇
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〇
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△
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〇
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相続人同士での紛争解決
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〇
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×
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×
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×
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遺産分割協議書の作成
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〇
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〇
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△
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〇
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遺言書の作成
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〇
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〇
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〇
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〇
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相続放棄
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〇
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〇
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×
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×
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相続人調査・相続財産調査
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〇
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〇
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〇
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〇
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不動産の名義変更(相続登記)
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×
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〇
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×
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×
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相続税の申告
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×
|
×
|
〇
|
×
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弁護士|全て任せたい方・相続人同士でのトラブルが予想される方
弁護士なら、相続登記や相続税の申告以外のあらゆる手続きを任せられます。
自分で対応することがほとんどなくなるため、相続手続きを専門家に一任したいという方におすすめです。
なかには、司法書士や税理士などが在籍・提携していたりする法律事務所もあるので、相続登記や相続税の申告の必要があっても心配はいらないでしょう。
また、相続人同士でトラブルが起こった場合、ほかの相続人との交渉や、調停・訴訟などの裁判所での手続きの代行は弁護士しかできません。
「遺産分割協議で揉めている」「遺言書があったものの有効性が疑わしい」というような場合は、早期解決のためにも早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
司法書士|遺産に不動産が含まれる方
遺産のなかに不動産がある場合は、相続するとしても売却するとしても相続登記が必要です。
登記手続きは自分でおこなうこともできますが、申請書の作成や登録免許税の計算など、慣れていないと難しいことも多く、手間がかかります。
また、提出書類にミスがあると法務局で訂正しなければなりません。
そのため、遺産に不動産が含まれる場合は司法書士に依頼するのが無難です。
税理士|遺産が多くて相続税がかかる方
多額の遺産があって相続税がかかる可能性が高い方は、税理士に相談するのがよいでしょう。
税理士であれば、相続税の申告はもちろん、少しでも節税できるようアドバイスしてくれます。
遺言書作成や遺産分割協議についても相談できるので、相続税を納める必要がありそうな場合は早めに相談するとよいでしょう。
また、相続税には基礎控除という制度があり、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算できます。
自分の場合は相続税がかかるかどうか、一度計算してから相談しに行くことをおすすめします。
行政書士|書類作成のみサポートしてもらいたい方
「相続手続きはある程度自分でできるので、少々複雑な書類作成のみサポートしてほしい」という方は、行政書士に依頼するのがよいでしょう。
遺産分割協議書や遺言書などの書類作成のほかにも、相続人調査・相続財産調査・金融機関での相続手続きなども代行してもらえます。
銀行|慣れ親しんだ担当者にお願いしたい方
銀行や信託銀行でも、遺産相続の手続きを代行してくれます。
普段から付き合いのある担当者がいるなら、安心して任せられるでしょう。
ただし、全ての相続手続きを任せられるものの、銀行から各専門家に依頼して手続きが進行するため、専門家に直接依頼するよりも費用は高くなる傾向にあります。
相続手続き代行にかかる費用
遺産相続の手続きを代行してもらう際、費用はいくらかかるのか気になっている方も多いでしょう。
ここでは、相続手続き代行にかかる費用について依頼内容ごとに解説します。
ただし、あくまでも以下で解説する金額は目安であり、実際に依頼する場合は見積もりを出してもらって費用総額を確認しておきましょう。
相続トラブルの解決を弁護士に依頼した場合
相続トラブルの解決は弁護士にしかできません。
弁護士に依頼すると、着手金や報酬金などの弁護士費用が発生します。
着手金や報酬金の金額は「(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準」をもとに、依頼者が得られる経済的利益の額に応じて決めているところも多く、その場合は以下のように計算します。
着手金
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- 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:経済的利益の8%
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:5%+9万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:3%+69万円
- 3億円を超える場合:2%+369万円
- ※着手金の最低額は10万円
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報酬金
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- 事件の経済的利益の額が300万円以下の場合:経済的利益の16%
- 300万円を超え3,000万円以下の場合:10%+18万円
- 3,000万円を超え3億円以下の場合:6%+138万円
- 3億円を超える場合:4%+738万円
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着手金については、事件の段階が変わるごとに発生します。
たとえば、交渉段階から弁護士に依頼したものの、解決せずに調停に移行した場合、依頼時に加えて調停への移行段階でもう一度着手金が請求されます。
調停でも解決せずに審判や裁判になれば、さらにもう一度着手金が請求されるでしょう。
できるだけ費用を抑えるためにも、問題がこじれる前に弁護士に相談することをおすすめします。
遺言書の作成・検認を依頼する場合
遺言書の作成は弁護士・司法書士・行政書士に、検認手続きは弁護士と司法書士に依頼できます。
それぞれの費用相場は以下のとおりです。
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弁護士
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司法書士
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行政書士
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費用相場
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10万円~20万円程度
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7万円~15万円程度
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7万円~15万円程度
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なお、自筆証書遺言を作成するか公正証書遺言を作成するかによっても費用は異なります。
自筆証書遺言とは「遺言者が自分で作成する遺言書」のこと、公正証書遺言とは「公証役場で公証人に作成してもらう遺言書」のことです。
公正証書遺言のほうが自筆証書遺言よりも確実な形で遺言を残すことができますが、作成には手間がかかるため費用は高くなる傾向にあります。
【遺言書の検認手続きにかかる費用の目安】
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弁護士
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司法書士
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費用相場
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10万円~15万円程度
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5万円~8万円程度
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遺言書の検認手続きとは、遺言者が自分で自筆証書遺言を保管していた場合に必要な手続きです。
家庭裁判所が遺言書の有効性を確認し、相続人に対して遺言書の存在と内容を知らせます。
申立書などの必要書類を作成・準備したのち、家庭裁判所に提出して手続きを進めます。
遺産分割協議書の作成を依頼する場合
遺産分割協議書の作成は、弁護士・司法書士・行政書士に依頼できます。
それぞれの費用相場は以下のとおりです。
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弁護士
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司法書士
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行政書士
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費用相場
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10万円程度
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5万円~10万円程度
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3万円~5万円程度
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なお、これらはあくまでも書面を作成してもらう際にかかる費用です。
弁護士に遺産分割協議を依頼して代理で交渉してもらう場合はさらに費用がかかりますし、司法書士に不動産の登記手続きまで依頼した場合もさらに費用がかかります。
相続放棄の手続きを依頼する場合
相続放棄は弁護士と司法書士に依頼できます。
それぞれに依頼した場合の費用相場は以下のとおりです。
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弁護士
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司法書士
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費用相場
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3万円~10万円程度
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2万円~5万円程度
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相続放棄の許可を得るためには、申し立て後に裁判所から送られてくる照会書への回答内容が重要です。
よくわからないまま適当に回答してしまうと、許可されない可能性があります。
弁護士であれば照会書への回答も代理でしてくれて、相続放棄できる可能性が高まります。
一方、司法書士に依頼しても代理権がないため、照会書への回答までは対応してもらえません。
回答内容についてのアドバイスはもらえますが、自分で記載して返送することになります。
相続人調査・相続財産調査を依頼する場合
相続人調査や相続財産調査はどの専門家にも依頼できます。
それぞれの費用相場は以下のとおりです。
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弁護士
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司法書士
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税理士
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行政書士
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相続人調査の費用相場
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5万円~10万円程度
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3万円~7万円程度
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3万円~5万円程度
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3万円~5万円程度
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相続財産調査の費用相場
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20万円~30万円程度
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10万円~20万円程度
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5万円~10万円程度
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3万円~5万円程度
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不動産の名義変更を依頼する場合
不動産の名義変更は司法書士にしか依頼できません。
依頼する場合の費用相場は6万円〜12万円程度です。
不動産以外の相続財産の名義変更を依頼する場合
預金・株式・自動車などの不動産以外の財産の名義変更手続きなら、弁護士・司法書士・行政書士に依頼できます。
それぞれに依頼した場合の費用相場は以下のとおりです。
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弁護士
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司法書士
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行政書士
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費用相場
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5万円~10万円程度
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3万円~10万円程度
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3万円~7万円程度
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相続税の申告を依頼する場合
相続税の申告手続きは税理士にしか依頼できません。
依頼費用は相続財産の総額によって異なります。
旧税理士報酬規程を目安としているところも多く、その場合の基本報酬額は以下のとおりです。
相続財産の総額
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基本報酬額
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~5,000万円
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25万円~50万円
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5,000万円~7,000万円
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25万円~70万円
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7,000万円~1億円
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35万円~100万円
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1億円~3億円
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50万円~300万円
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3億円~5億円
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150万円~500万円
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5億円~
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個別相談
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事務所によっては、相続財産の内容や相続人の数に応じて、基本報酬額だけでなく加算報酬がかかることもあります。
さいごに|相続手続きを全て任せるなら弁護士に相談を
相続手続きの代行を考えており、専門家に全て任せたいなら弁護士がおすすめです。
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司法書士や税理士と連携しているところも多いので、相続財産に不動産が含まれている場合や相続税の申告が必要な場合でも、スムーズに対応してもらえるでしょう。
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