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生前贈与で不動産を贈与する際に贈与税を抑える為の手順

司法書士法人スターディオ
保坂真世(司法書士)
監修記事
Seizenzouyo hudousan
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資産価値の高い不動産を所有している場合、その財産を子どもなどに受け継ぐ方法のひとつとして生前贈与があります。

不動産の所有者が生きている間に、特定の人物に対してその不動産を譲渡することでどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

不動産の生前贈与について知ることは、自身の財産の処理方法について考えるきっかけとなります。

今回の記事では、不動産の生前贈与をした場合の効果や、その方法について見ていきましょう。

※贈与された不動産の売却を検討している方は、姉妹サイト「いえぽーと」の以下記事も参考にしてください。

*本記事の専門家による監修日は2023年6月29日です。

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不動産の生前贈与のメリットとデメリット

不動産の生前贈与とは、生前に所有している家や土地を誰か特定の人に譲ることです。

これらの所有物は、生前贈与しなくとも死亡後には相続されることになります。

そこで、生前贈与と相続時の名義変更のどちらを選択するかは、あなたの意向や不動産や土地の相続財産の価値によって異なるでしょう。

生前贈与をしたからといって必ず得をするとも言い切れないため、どちらを選択するのか慎重に判断しましょう。

不動産や土地を生前贈与した場合の主なメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

  • 贈与する相手を決められる
  • 贈与により財産を減らし、相続税を減らすことができる
  • 比較的短期間に贈与が可能

デメリット

  • 不動産と土地の市場価値によって高額な贈与税が課せられる
  • 不動産取得税などの費用がかかる

不動産の生前贈与は相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度の仕組み

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から、18歳(令和4年3月31日以前の贈与については20歳)以上の子ども(推定相続人)や孫に対する贈与のうち、2,500万円までを非課税とする制度です。

この制度では、贈与する対象物が現金や不動産などどのようなものでも可能です。

しかし、2,500万円を越える贈与金額に対しては、一律20%の贈与税が課せられてしまうため注意が必要です。

例)相続時精算課税制度として、3,500万円を贈与した場合に支払う贈与税
  • (3,500万円 – 2,500万円) × 20% = 200万円
    贈与税:200万円

さらに、相続時精算課税制度を利用すると、生前贈与を受ける際に選択できるもう一方の納税方法である暦年課税が利用できなくなってしまうため、注意が必要です。

不動産の生前贈与には相続時精算課税制度がおすすめ

不動産を贈与する場合、不動産の評価額は暦年課税でカバーできる非課税枠110万円を越えるケースが多いため、相続時精算課税制度の利用がおすすめです。

不動産を贈与する場合の財産評価は、対象となる不動産を贈与する時点に下されます。

そのため、贈与したあとに不動産の価値が上がったとしても問題ありません。

つまり、今後価値が上がることが予想される財産については、生前贈与をおこなうことが得策です。

アパートやマンションなどの不動産の贈与では、対象となる建物の評価額が固定資産税の評価額となります。

この評価額は時価(実勢価格)より低く、貸家の場合は「評価額ー(対象建物の評価額×借家権割合(全国一律30%)×賃貸割合)」で計算されるため、時価よりもかなり低い評価額での贈与が可能です。

これは現金で同額の生前贈与をした場合と比較しても贈与税を抑えることができるため、現金を収益が生まれる不動産へと代えてから生前贈与をおこなう人も少なくありません。

収益を生む不動産は相続税対策にも有効です。

もしこのような不動産を贈与せずに相続することになった場合、毎月得られる収益はそのまま相続財産の増大へとつながり、多額の相続税を支払う必要が出てきます。

しかし、生前贈与では不動産で得た収入がそのまま贈与を受けた人の収入となるため、相続税を支払うための準備資金として活用できる可能性が生まれます。

不動産を生前贈与する方法

不動産の生前贈与は書類を作成し、申請すればおこなわれます。

しかし、書類作成量が多く内容が難しい点もあるため、初めてで自信がない場合は行政書士や司法書士などに依頼するといいでしょう。

申請に必要となる書類

申請には以下の書類を全て揃えましょう。

  • 生前贈与の対象となる不動産の権利証(登記識別情報)
  • 贈与する者の印鑑登録証明書(発行から3ヵ月以内)
  • 贈与を受ける者の住民票
  • 登記原因証明情報(贈与契約書)
  • 固定資産評価証明書
  • 生前贈与の対象となる不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)

申請書を作成する

不動産の生前贈与に必要な申請書は提出先である法務局に用意されているわけでなく、書式は特に指定されていません。

申請書には必要な情報が記載されていればどのような形式でも問題ありません。

しかし、法務局のホームページには申請書の雛型が用意されています。

それらの未記入部分に必要事項を記入する形で申請書を用意しましょう。

付属書類を作成する

作成する付属書類は以下の3つです。

印紙台紙

A4サイズの白紙用紙に、登録免許税分の収入印紙を貼り付けて、登記申請書の次のページに綴じ込みましょう。

委任状

もし代理人に登記申請を委任しているのであれば、添付しましょう。

登記原因証明情報

登記原因証明情報とは、登記の原因となった事実や法律行為を証明する情報を示します。

これにより、生前贈与によって不動産の所有者が移される真実性を保証することになります。

必要書類を法務局へ提出する

①〜③の手順で作成した以下の書類を、不動産の所在地を管轄する法務局へ提出しましょう。

提出後1〜2週間で新しい登記識別情報が発行され、これを受け取ることで不動産の生前贈与手続きが終了します。

不動産の生前贈与でかかる費用

不動産の生前贈与には一定の費用がかかってしまいます。

贈与税は相続時精算課税制度などで非課税とできますが、不動産の名義変更に関わる費用の「登録免許税」と「不動産取得税」が必要となるのです。

登録免許税について

登録免許税は、不動産の生前贈与をおこなうために法務局へ必要書類を提出する際に、収入印紙で納めます。

登録免許税の価格は、固定資産税評価額の2%とされています。

ここでいう固定資産税評価額とは、生前贈与する不動産や土地の評価額です。

登録免許税は、贈与をする人と受ける人のどちらが支払っても問題がありません。

不動産取得税について

生前贈与によって不動産を取得した場合、不動産取得税と呼ばれる都道府県税の支払いを求められます。

これは不動産の取得者が不動産の住所地である都道府県に、不動産取得時に一度だけ納めなければならない税金です。

不動産の登記情報を変更してから、約半年後に納税通知書が郵送されてきます。

納税する金額は固定資産税評価額(該当不動産の評価額)の4%が原則です。

ただし、不動産取得時期により、土地及び住宅の取得の場合は3%に軽減されます。

軽減措置

基本的に、登録免許税と不動産取得税に対して軽減措置はありません。

不動産取得税については、以下のようなケースでは軽減される制度があります。

軽減してもらうには申請が必要です。

  • 住宅取得
  • 住宅用地取得

納付時期

各都道府県により異なりますが、土地や建物の取得時から60日以内に、不動産取得申告書の提出が義務付けられているケースが多いです。

この申告書を提出すると都道府県から納付書が送付されてくるので、通知書に記載されている納期限までに支払います。

かかる費用の計算例

固定資産税評価額3,500万円の貸家を生前贈与対象とし、90歳の父親から60歳の娘に相続時精算課税制度を利用し生前贈与がおこなわれた場合の計算は以下のようにおこないます。

  • 贈与税
    3500万円-(3500万円×30%×100%)-2500万円×20%=0円 贈与税:0円
  • 登録免許税
    3,500万円 × 2% = 70万円
  • 不動産取得税
    3,500万円 × 4% = 140万円
  • 合計納税額
    0円 + 70万円 + 140万円 = 210万円

生前贈与で不動産を贈与させる際の注意点

長期間の暦年贈与には危険もある

暦年課税を利用する場合、1年ごとに110万円の基礎控除が認められているため、できるだけ長い期間贈与をおこなったほうが税の負担は少なくなります

たとえば2,000万円の贈与なら、100万円を20年贈与すれば、基礎控除の範囲内となるため贈与税はゼロになります。

ただし、毎年契約を交わすなどしていない場合、「定期贈与」とみなされ贈与の合計額に対して一括して贈与税が課されるリスクがあります。

途中で贈与者が死亡した場合は、その後の遺産は相続税の課税対象となりますし、相続発生前3年以内(令和6年1月1日以後の贈与については7年以内)の贈与についても、相続税の課税対象となってしまいますので注意しましょう。

生前贈与したつもりに注意!

贈与とは、贈る側と受け取る側の合意があって初めて成立するものです。

たとえば、子どもや孫の口座に毎年内緒で基礎控除額以下の100万円を振り込んでいていても、贈与と認められないケースはよくあります。

子どもや孫が祖父母からもらったという認識がなく、通帳も印鑑も親や祖父母が管理していた場合、通帳に使った形跡が見られない場合は贈与が成立しない可能性もあります。 

まとめ

不動産の生前贈与をするには手続きが少々難しいように感じたかもしれません。

しかし、生前贈与の対象となる不動産が収益を生むアパートなどであれば、相続税対策にも有効です。

生前贈与と相続のどちらのメリットが大きいのか、冷静に判断することをおすすめします。

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この記事の監修者
司法書士法人スターディオ
保坂真世(司法書士)
司法書士法人スターディオ代表。個人向けに終活サポート・相続手続・障がい者の法的支援、法人向けに企業の法務手続等幅広く取り扱っております。特に相続案件は年間100件以上受任しています。
ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)編集部
編集部

本記事はベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)を運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※ベンナビ相続(旧:相続弁護士ナビ)に掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。

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