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財産放棄と相続放棄の違いは相続権の有無|遺産放棄の手続きガイド
2017年11月28日

財産放棄と相続放棄の違いは相続権の有無|遺産放棄の手続きガイド

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「遺産・相続放棄の違いを知りたい」

「借金を相続したくないから財産放棄をしたい」

 

遺産を相続するならプラスだけもらって負債は絶対に背負いたくないないですよね。借金を背負いそうなら相続放棄をしてください。財産を選んで相続したいなら遺産放棄をしましょう。

 

ここでは、2つの財産放棄の違い手続き方法などをお伝えし、遺産相続で損をしない手助けができれば幸いです。

 

 

  目次
財産放棄における2つの放棄とは
遺産放棄
相続放棄
財産放棄による遺産相続上のトラブルや効果
遺産放棄の場合は手続きが必要ない分ラク
遺産放棄だと債権回収に対して強い態度がとれない
相続放棄を行えば名義変更が簡単になる
財産放棄の手続きとしてできる3つの方法
遺産分割協議によって財産を放棄する
相続放棄の手続きによる放棄
相続欠格(相続人廃除)による手続き
まとめ|財産放棄によるトラブルを回避するには専門家に相談

財産放棄における2つの放棄とは

財産の放棄を行う際、遺産放棄と相続放棄という基本的に2つの方法を選択し、手続きをしていくことになりますが、実は遺産放棄と相続放棄は法的な意味も手続きも全く違う手順を踏むことになり、その効果も違ってきますので、まずはそのあたりの関係性をお話ししていきます。

遺産放棄

遺産相続が発生した場合、遺言書などがないのであれば、基本的には相続人全員で「遺産分割協議」を行いながら、各相続人の相続分を決めていくことになりますが、原則的には「法定相続分」に則って、「相続順位」を参照しながら決めていくことのが基本です。

表:法定相続分と相続の順番

相続順位

法定相続人

 配偶者相続人

法定相続分

第一順位

直系卑属(子・孫)

配偶者

配偶者:1/2 子:1/2

第二順位

直系尊属(父母・祖父母)

配偶者

配偶者:2/3 直系尊属:1/3

第三順位

兄弟姉妹

配偶者

配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4

参考:遺産相続の優先順位一覧|法定相続人の遺産割合と範囲を図解で解説
 

相続順位についての補足ですが、配偶者は常に相続人となるため、配偶者+相続順位の一番高い人(グループ)がその相続においての法定相続人として扱われることになります。

 

 

遺産放棄の判断のタイミングとしては、遺産分割協議中に「私は遺産を受け取りません。放棄します。」や「この遺産については私の取り分も○○に譲ってください」などの発言をした相続人について、財産放棄をしたとみなしていくのが良いかと思います。
このように、遺産分割協議で特定の相続人に財産を譲る行為を財産放棄と呼んでいいでしょう。
 

相続権そのものを放棄した訳ではない

この場合、遺産分割協議の中で決まったこととはいえ、法律上は相続権を放棄したことにはなりません。
つまり、財産放棄を発言した相続人は、「この遺産はいらないけど、こっちの遺産は欲しい」という希望を言うことができますし、もし借金があった場合でもその借金だけはいらないと言うことは認められません。
 
他の相続人が「あなたも借金返済に協力しなさい」と言われれば、少しでも財産を取得する以上、それを拒否することは基本的にできないと思っておいた方が良いです。

相続放棄

一方、相続放棄とは、裁判所を介して所定の手続きを行うことで、法的にも正式に財産を放棄することを言います。相続放棄を行うには必ず裁判所を通す必要がありますし、相続権を放棄することで借金など、マイナス財産の相続からも逃れることができます。(民法第939条)
 
相続放棄を行うことで、その相続人は最初から相続権を持たなかった方という扱いになりますので、法定相続人として残された人たちで、遺産分割を進めていくことになります。
 
基本的には相続人の数が減ることになりますので、遺産相続もスムーズに進むというメリットはあります。
参考:相続放棄はどんな時にすればいいの?行う・やらない場合の判断基準
 

逆に相続人が増えてトラブルになるケースもある

例えば、被相続人の子供と配偶者が相続人としていたケースで、子供全員が相続放棄をした場合などは要注意です。
配偶者は必ず相続人になりますので関係はありませんが、子供全員が相続放棄をした結果、次の相続順位の「直系卑属(被相続人の親)」や、それらの人がいなければさらに次の「被相続人の兄弟」に、順々に相続権が回ることになります。
 
図:子が複数いた場合の相続分
 

 
通常はこのような遺産分割割合になりますが、子供がいるにもかかわらず、その子供が相続放棄をすると、妻1人に相続させる算段で財産放棄をしたのに、被相続人の兄弟などが相続人になってしまう、下記の図のようになっていきます。
 

 
こういったケースを避けるには、相続放棄を行わずに協議によって進めていくのが良いかと思います。

相続放棄は相続開始前には行えない

民法上、相続は「相続開始後に一定の手続きをした場合に効力を生ずるもの」とされているため、被相続人が亡くなる前に相続放棄を行うことはできず、たとえ生前に約束したからといって財産放棄の効力が生じることはありませんので、覚えておきましょう。
 

財産放棄による遺産相続上のトラブルや効果

遺産放棄と相続放棄に関する関係や違いについてはお分かりいただけたかと思いますが、両者の違いを明確に把握しておかないと、思わぬトラブルに発展する可能性もありますので、この違いについてはしっかりと把握しておきましょう。
 
次に、相続放棄と財産放棄による効果などを確認していきます。
 

遺産放棄の場合は手続きが必要ない分ラク

財産放棄を行う上で、特別な権利関係が発生しないのであれば手続きなどは必要ありませんので、遺産分割協議で主張していくだけで問題ありません。詳しい手続きの流れは、後述の「遺産分割協議によって財産を放棄する」で解説していきます。
 

遺産放棄だと債権回収に対して強い態度がとれない

相続放棄を行なって、債権や負債の相続していないことを法的に主張できれば何の問題にはなりませんが、遺産放棄を主張していただけですと、債権回収会社などに対して強い態度を取っても勝てませんので、ここの間違いは致命的になりますから、注意が必要です。
 

相続放棄を行えば名義変更が簡単になる

遺産相続が発生したあと、被相続人の預金名義も相続対象になりますが、仮に「あなたに全ての遺産を渡しますよ」という同意を相続人からもらっていたとしても、口座の名義変更をするためには、他の相続人たち全員から印鑑証明書を預かる必要があります。この時に相続放棄をしていれば、最初から相続人ではないので印鑑証明などをもらう必要もないので便利です。
 
他にもいくつか気をつけなくてはいけないこともありますが、詳しい内容は下記の記事を参考にしていただくのが良いかと思います。
 
相続放棄をした場合に代襲相続はできない|再代襲相続の条件

財産放棄の手続きとしてできる3つの方法

では、財産放棄を行うための手続きについてみていきましょう。
 

遺産分割協議によって財産を放棄する

単純に財産をいらないとだけ主張するのであれば、遺産分割協議の場で、相続人全員に対して財産はいりませんと主張するだけで完了です。口約束でも構いませんが、遺産分割協議を行なった際は遺産分割協議書の作成がされると思いますので、協議書に放棄した旨の記載を入れてもらうようにしましょう。
 
遺産分割協議書の詳しい書き方は「【決定版】遺産分割協議書のひな型|無効にされない書き方と注意点」を参考にしていただければと思います。
 

相続放棄の手続きによる放棄

相続放棄の手続きは、必ず家庭裁判所の許可を得る必要がありますので、所定の手続きを踏む必要があります。
 

相続放棄に必要な書類

申述書の書き方に関しては「相続放棄の申述書|申述書の書き方と手続きに必要な書類」をご覧ください。

  • 被相続人の住民票除票(または戸籍附票)

  • 申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本

 
下記の方が相続放棄をする場合は、上記の書類に加えてさらに少用意すべき書類があります。
 

  • 配偶者が相続放棄する時の必要書類

    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

  • 子または孫が相続放棄する時の必要書類

    • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本

    • 被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本

  • 被相続人の親(または祖父母)が相続放棄する時の必要書類

    • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

    • 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

    • 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本

  • 兄弟姉妹(または甥・姪)が相続放棄する時の必要書類

    • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

    • 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本

    • 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本

    • 兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍謄本

 

相続放棄の申述先

相続放棄申述書を提出する裁判所は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所になります。
▶︎管轄裁判所を調べたい場合
 

相続放棄の費用

申述書を提出する際は費用がかかります。

  • 収入印紙:800円

  • 連絡用の郵便切手(申述先の家庭裁判所に要確認)

参考:相続放棄の費用まとめ|自分で手続きした場合と専門家に依頼をした時
 

相続放棄の申述期間

申述書は民法により自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に提出しましょう。
 

相続放棄を行う人

原則的には本人が行いましょう。もし相続人が未成年である場合は、その親などの法定代理人によって申し立てることになります。
 

申立後に照会書が届く

申立てから約10日後に相続放棄に関する照会書が送付されます。
 

許可が下りれば相続放棄申述受理通知書が届く

その後、さらに10日間ほどが経過すると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が送付され、正式に認められたことになります。
 
詳しい手続きの手順は「相続放棄の手続きってどうやるの?自分で行う時の完全無欠の手引き」をご覧ください。
 

相続欠格(相続人廃除)による手続き

相続欠格(そうぞくけっかく)とは、特定の相続人が民法891条の相続欠格事由に当てはまる場合に相続権を失わせる制度のことです。遺言書では「◯◯には財産を渡さない」と明記したとしても、最低限の遺産分配義務である遺留分が残る事になりますので、完全に相続権を奪ったことにはありません。
※遺留分に関しては「遺留分の全て」をご覧ください。
 
相続欠格ができる条件としては下記の要件が必要になり、勝手に相続権を奪うことはできませんが、下記の要件があれば法定相続人から外すことができます。
 

  1. 故意に被相続人又は同順位以上の相続人を死亡、または死亡させようとした場合

  2. 被相続人が殺害されたのを知って告発や告訴を行わなかった場合

  3. 詐欺・脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更を妨げた場合

  4. 詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更・妨害させた場合

参考:相続欠格|相続権を剥奪する相続欠格と相続人廃除の全て

 
ただ、この要件に当てはまる方はそうそういないでしょうから、そこで登場するのが相続廃除の制度です。
 

  • 被相続人を虐待した

  • 被相続人に対して、極度の屈辱を与えた

  • 被相続人の財産を不当に処分した

  • ギャンブルなどを繰り返し、被相続人に多額の借金を支払わせた

  • 浪費・遊興・犯罪・反社会団体への加入・異性問題を繰り返すなどの親不孝行為

  • 重大な犯罪を起こし、有罪判決を受けた(一般的には、5年以上の懲役判決)

  • 愛人と同棲するなどの不貞行為をする配偶者

  • 財産目当ての婚姻関係

  • 財産目当ての養子縁組

 
詳しい手続きなどは「相続欠格|相続権を剥奪する相続欠格と相続人廃除の全て」を参考にしてください。

まとめ|財産放棄によるトラブルを回避するには専門家に相談

いかがでしたでしょうか。財産放棄(遺産放棄)と相続放棄の違いや手続きについて解説してきましたが、両者は似て非なるものと言うことはお分かりいただけたかと思います。
 
相続放棄に関して専門的な法律行為ですので、できれば安易に利用せず、専門家などに相談しながら進めていただくことをおすすめしています。相続放棄は最初から相続人ではないという証明をする行為ですので、もし財産が大きかった場合、相続税などの基礎控除(3000万円 + 相続人の数 × 600万円 )にも関わってきます。
参考:相続税を簡単に計算する方法と控除を利用した節税方法まとめ

相続人がひとり減るだけで600万円もの差が出てきてしまいますので、財産放棄は慎重に行わないといけません。家庭の事情はひとりひとり違うものですから、遺産相続が得意な弁護士などに相談し、最適な方法を選択していくことをおすすめします。

現在の遺産相続の割合や分割協議に不満がある、納得がいかないという方は相続が得意な弁護士への相談をオススメします

もし、あなたが下記のようなお悩みがあれば、弁護士への相談を強くオススメします。

・もっと遺産を貰って当然だと思う
・遺産の分け方を兄弟で争っている
・遺言書の内容が真実か確かめたい
・自分勝手な相続人が居て困っている
・侵害された遺留分を取り返したい



大きな金額が動く遺産相続では、今まで仲の良かった兄弟でも争いに発展することが多くあります。仲が良くなければ尚更争いが起こる可能性は高いでしょう。

当事者同士が感情的になってしまうと解決は絶望的です。まずは弁護士に相談して解決の糸口を見つけましょう。

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相護士ナビ編集部

本記事は相続弁護士ナビを運営する株式会社アシロの編集部が企画・執筆を行いました。 ※相続弁護士ナビに掲載される記事は弁護士が執筆したものではありません。 ※本記事の目的及び執筆体制についてはコラム記事ガイドラインをご覧ください。
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